見解経済学では「課税の帰着」に関する議論があり、社会保険料でもその負担が最終的に誰に帰着するのか、様々な実証分析がされています。結論からいう限り、社会保険料の事業主負担分もその大部分が労働者に帰着しているというのが、最近の主要な結論であり、今回の事業主負担分もその大部分が労働者に帰着するのではないかと思います。なお、週20時間以上の要件が残る限り、月額賃金が概ね8.8万円以上(年収で概ね106万円以上)が基本的に厚生年金の適用対象となるため、実質的に年収「106万円の壁」が無くなるわけではないことにも留意が必要です。週20時間の要件を撤廃できない理由は、国民年金保険料(月額16980円)未満の保険料負担(=厚生年金適用)で、基礎年金のほかに報酬比例部分(厚生年金)も受給できる矛盾が発生するからで、この問題の解決には年金制度等の抜本改革が必要になります。
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コメンテータープロフィール
1974年東京生まれ。法政大学経済学部教授。97年4月大蔵省(現財務省)入省後、財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授等を経て2015年4月から現職。一橋大学博士(経済学)。専門は公共経済学。著書に『日本経済の再構築』(単著/日本経済新聞出版社)、『薬価の経済学』(共著/日本経済新聞出版社)など。