アカデミー賞最有力との呼び声も 奇跡のドキュメンタリー『ノー・アザー・ランド』公開決定
「第74回 ベルリン国際映画祭」(2024年)にてプレミア上映され、観客の大喝采を浴び、最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞を受賞したドキュメンタリー映画『NO OTHER LAND』(原題)が『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の邦題で来年(2025年)2月21日より東京のTOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開される。 【動画】ドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド』特報 本作の舞台となるのは、イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区、マサーフェル・ヤッタ。現状をカメラに収め、世界に発信することで占領を停止させ、故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バゼル・エイドラと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユーバール・アブラハムの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間にわたり記録したドキュメンタリーだ。 原題の「NO OTHER LAND」は、直訳すると「他にはない土地」の意味。イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区にある故郷の村マサーフェル・ヤッタを守ろうとするバゼルら住民たちの、故郷への想いや強い覚悟をストレートに表現した力強い邦題となっている。 日本版の特報映像に映るのは、バゼルの暮らす村をイスラエル軍の無数の軍用車両が急襲する緊迫の場面や、村にある家が理不尽に破壊される様子。この地で生まれ育ったバゼルはこうした様子を撮影し続け、それをSNSに発信し、メディアに提供することで占領に抵抗していた。 そして、イスラエル軍の不当な行いに心を痛め、この村を訪れたことがきっかけでバゼルに協力するようになったジャーナリストであるユーバール。彼らは、占領という現状への抵抗を通じて親密になり、次第にこの問題についての映画を作らなければならないという決意へと変わっていったという。事態が一向に好転しない中で、バゼルは「この現実を変えたいんだ」と胸の内をユーバールに告げるのだ。 マサーフェル・ヤッタの住民たちが家や小学校、ライフラインを目の前で破壊され強制的に追放されていく、あまりに不条理な占領行為を、そこで暮らす当事者だからこそ捉えることのできた至近距離からの緊迫感みなぎる映像であぶりだしていく。 同時に、バゼルとユーバールが、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ね理解し合うことで生まれる奇跡的な友情と、ただ故郷の自由を願い強大な力に立ち向かい続ける人々の姿も映し出していく。監督は、彼ら自身を含むパレスチナ人2人・イスラエル人2人による若き映像作家兼活動家たち4人が共同で務めた。 今年2月に開催されたベルリン国際映画祭では、数多ある部門のプレミア上映のうち最も大きな盛り上がりを見せた1作となり、上映後には観客たちによるパレスチナ解放スローガンの大合唱と、割れんばかりの拍手喝采が巻き起こった。最優秀ドキュメンタリー賞&観客賞を受賞し、バゼルとユーバールがそろって登壇して連帯を呼びかけた受賞スピーチは同映画祭のハイライトとして大きな話題を集めた。 一方で、イスラエル擁護の立場を取るベルリン市長やドイツ文化省がこれを強く非難。世界中で大きな論争が続くなか、今なお監督たちは精力的に活動を続け、熱い支持を集めている。9つの観客賞をはじめ、すでに29もの賞を獲得(11月21日時点)しており、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞の受賞最有力との呼び声も高い、最注目のドキュメンタリーだ。 日本版ビジュアルは、マサーフェル・ヤッタの穏やかで美しい丘陵地を背景に、バゼルとユーバールが目をそらすことなくお互いをまっすぐ見る、印象的な様子を切り取った。「それでも僕たちはこの現実を変えたい」というキャッチコピーは、本作において特報映像にも収められたバゼルの言葉をベースにした。