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川上泰徳

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中東ジャーナリスト

報告

見解イスラエル国民は自国の首相や元国防相が戦争犯罪や人道に反する罪で国際司法裁判所(ICC)から逮捕状を出されても自国の「犯罪」に気が付かないだろう。私が夏にイスラエルのメディア関係者やメディア監視NGOに話を聞いた時、主要テレビや新聞ではイスラエル軍のガザ攻撃による、ガザ市民の悲劇は報じられないと話していた。今回に限らず、イスラエルメディアにパレスチナ人が出るのは「テロリスト」としてだけで、自国のパレスチナ占領やガザを封鎖で、多くのパレスチナ人が苦しんでいる事実は出てこない。だから、ハマスの10月7日の越境攻撃があっても、パレスチナ人による一方的なテロで、自分たちは一方的な被害者だと考える。ガザで4万3千人が死に、そのうち子供が1万7千人という数字を突き付けられても、国民は政府がいう「対テロ戦争」を信じ、自国の「犯罪」には目を向けない。国全体が欺瞞の中で生きているという救いのない状況にある。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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