見解イスラエル軍のガザ攻撃でUNRWAの国連職員の死者が昨年10月以降計320人となったのは、ガザ人口の7割を占めるパレスチナ難民への人道支援を担うUNRWA施設を攻撃しているためである。イ軍がガザ上空からドローンやバルーンで常時情報収集していることを考えれば、意図的な攻撃と考えるしかない。イ軍はトンネルを使ってゲリラ戦を続けるハマスの軍事部門カッサーム軍団を攻撃するのではなく、UNRWAが担う食糧や医療支援インフラをつぶして、市民の人道危機を生み出すことで、民衆に圧力をかけて「占領への抵抗」を担うハマスへの支持を放棄させ、社会全体を屈服させようとしている。イ軍が「ハマスが市民を人質にとっている」と民間地域を無差別攻撃し、子供1万7千人を含む4万3千人を殺害したのも同様の戦略。すべてが国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相に逮捕状をだした容疑「意図的な民間人への攻撃の指令」とつながっている。
コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com