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川上泰徳

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中東ジャーナリスト

報告

見解シリア反体制勢力は2012年に反体制各派が結集した「シリア国民連合」が国際的に認知され、国連の支援も受けてきた。今回、元アルカイダ系の「シャーム解放委員会」(HTS)が首都を陥落させ、単独で暫定内閣をつくり、「国民連合」は無視され、国際社会の接触やメディアにも出てこない。これは奇妙なことである。シリアはイスラム教スンニ派、ドルーズ派、アラウィ派、キリスト教、クルド人など多民族・宗教・宗派国家であるが、HTSはスンニ派のサラフィーと呼ばれる厳格な人々の組織であり、HTSだけで新生シリアをつくるのは無理がある。その意味では、いま進んでいるのは、HTSがアサド一族を排除して旧体制を乗っ取る<アサドなきアサド体制>であり、このままでは<イスラム独裁>にもなりかねない。「国民連合」外しは穏健派のムスリム同胞団が力を持ち、それがトルコが支える構図を、米国とイスラエルが嫌っているためという見方もできる。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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