見解アサド前大統領が「テロとの戦い継続」の声明がロシアから発せられ、もし、本物だとすれば、今回の体制崩壊とともに影響力を排除されたロシアがアサド前大統領をつかって新体制の妨害に出る続く可能性を示している。「シャーム解放委員会」(HTS)主導の暫定政権がアサド氏が属すアラウィ派を排除した新軍隊の創設や警察、治安部隊、情報機関を管轄する内務省からも同派を排除する布告を出したことで、人口の10%強を占めるアラウィ派が丸ごと権力から排除される。同派の頼る先はアサド前大統領やロシアやイランしかないことになり、そのような分裂状況を受けて前大統領の声明とも読める。アラウィ派がすべて前体制の「犯罪」に加担していたわけではなく、同派を丸ごと排除すれば「集団懲罰」となる。新体制はアラウィ派の中で旧体制の犯罪に加担した人間を法の下で裁く手続きを経て、同派を新体制に包含しなければ、今後の不安定要因となるだろう。
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コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com
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