補足このオオカナダモは水生植物で、全体が常に水中にあって水底に根を張る沈水植物です。戦前の1920年代に実験植物として移入され、その後に野生化が確認されました。 沈水植物ですが、流れが緩やかな水路や池などでは水面まで繁茂し、繁殖域を広げるために容易に切断されやすい部分が腐敗するなどして水質の富栄養化の原因になる特定外来生物です。オオカナダモが繁殖する水系では水質がアルカリ性に傾くため、他の水中生物の酸素摂取の妨げになる危険性も指摘されています。また、洪水などで水系が氾濫すると切れ藻が流れ出て、他の地域にまで被害が拡大し、景観悪化、漁業や水上交通への悪影響などが広範囲で深刻化する要因になっています。 植物プランクトンが大量発生したり泥水が流れ込んで水が濁るなどすると、一般的に沈水植物は枯死して消滅すると考えられていますが、自らの切れ藻による水質悪化でも戦前から生き残ってきたタフな植物といえます。
コメンテータープロフィール
いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。