「無痛分娩への費用助成」は少子化対策になるのか? #専門家のまとめ
出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」。
つい先日、東京都が都内在住の妊婦を対象に、無痛分娩の費用を助成する方針であることが報道されました。分娩に伴う自己負担が減るというのは素晴らしいことで、こうした助成によって、金銭的理由で無痛分娩を諦めざるを得ない人が減ってくれればと期待されます。また、分娩の痛みを減らすことはそれ自体に大きな意義があります。
東京都の施策は少子化対策につなげる狙いもあるとのことですが、無痛分娩への公的費用補助は少子化対策につながるのでしょうか。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
無痛分娩は日本でも全分娩の1割を超えるくらいになっていますが、世界的に見るとまだ低い実施率と言えます。
まず、無痛分娩には分娩時の痛みや心身の負担を軽減するという最大のメリットがあります。ただ、注意点もあります。分娩時合併症(器械分娩の必要性や出血量の増加など)のリスクや、麻酔自体に伴う合併症(血圧低下、硬膜穿刺後頭痛、局所麻酔薬中毒など)などです。これらを把握しておくことは大切です。そして、急変時にも24時間対応可能な医療機関側の体制整備が確保されることも重要です。
無痛分娩への助成が少子化対策に有効かについては、疑問が残ります。現在の日本における低い出生率の原因として、「無痛分娩に必要な費用を工面できない」というのは決して主なものではないと考えられるためです。海外でも、無痛分娩実施率が高いにもかかわらず出生率が低い国はあります。
とはいえ、冒頭で述べたように「分娩に伴う負担を減らす施策」は意義あるものです。ただ、無痛分娩希望者の増加が予想されますので、併せて(むしろ先行して)医療体制の確保を進めていただきたいところです。都心部以外では医療機関の集約化も必要になるでしょう。