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「無痛分娩への費用助成」は少子化対策になるのか? #専門家のまとめ

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」。

つい先日、東京都が都内在住の妊婦を対象に、無痛分娩の費用を助成する方針であることが報道されました。分娩に伴う自己負担が減るというのは素晴らしいことで、こうした助成によって、金銭的理由で無痛分娩を諦めざるを得ない人が減ってくれればと期待されます。また、分娩の痛みを減らすことはそれ自体に大きな意義があります。

東京都の施策は少子化対策につなげる狙いもあるとのことですが、無痛分娩への公的費用補助は少子化対策につながるのでしょうか。

ココがポイント

東京都が新年度、都内在住の妊婦を対象に、(中略)無痛分娩(ぶんべん)の費用を助成することが、都関係者への取材でわかった。
出典:読売新聞オンライン 2025/1/6(月)

小池氏は導入にあたり、麻酔科医の確保といった課題も指摘し、助成額や条件については「今後検討していく」と述べた。
出典:朝日新聞デジタル 2025/1/7(火)

無痛分娩では痛みによる体への負担やストレスが軽減されるため、産後の回復が早いと感じる人が多いというメリットがあります。
出典:マイナビ子育て 2024/12/16(月)

エキスパートの補足・見解

無痛分娩は日本でも全分娩の1割を超えるくらいになっていますが、世界的に見るとまだ低い実施率と言えます。

まず、無痛分娩には分娩時の痛みや心身の負担を軽減するという最大のメリットがあります。ただ、注意点もあります。分娩時合併症(器械分娩の必要性や出血量の増加など)のリスクや、麻酔自体に伴う合併症(血圧低下、硬膜穿刺後頭痛、局所麻酔薬中毒など)などです。これらを把握しておくことは大切です。そして、急変時にも24時間対応可能な医療機関側の体制整備が確保されることも重要です。

無痛分娩への助成が少子化対策に有効かについては、疑問が残ります。現在の日本における低い出生率の原因として、「無痛分娩に必要な費用を工面できない」というのは決して主なものではないと考えられるためです。海外でも、無痛分娩実施率が高いにもかかわらず出生率が低い国はあります。

とはいえ、冒頭で述べたように「分娩に伴う負担を減らす施策」は意義あるものです。ただ、無痛分娩希望者の増加が予想されますので、併せて(むしろ先行して)医療体制の確保を進めていただきたいところです。都心部以外では医療機関の集約化も必要になるでしょう。

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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