近年増加の無痛分娩、東京都が費用補助へ…妊婦の負担軽減し少子化対策につなげる狙い
東京都が新年度、都内在住の妊婦を対象に、出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)の費用を助成することが、都関係者への取材でわかった。無痛分娩の利用は近年増加しており、妊婦の心身の負担を軽減し、少子化対策につなげる狙いがある。無痛分娩の助成制度ができれば、都道府県では初めてとなる。 【図解】母親の羊水にがん細胞、初泣きで吸い込んだ子が肺がん発症
出産費用は正常分娩の場合、公的医療保険の適用外で全額自己負担となる。出産育児一時金(50万円)が支給されているが、出産費用の上昇で一時金を超えるケースが相次ぎ、政府は正常分娩の費用を保険適用とする方向で議論を重ねている。
無痛分娩は追加の費用がかかるが、出産時の痛みへの不安が強い妊婦にとって疲労やストレスが軽減されるため、産後の回復を早め、妊娠中や産後のうつを防ぐ効果が期待されている。
都関係者によると、助成対象は、都内の医療機関で無痛分娩をする都内在住の妊婦。麻酔科医や麻酔に精通した医師がおり、母体の急変時に備えて蘇生機器が整備されている医療機関での分娩を助成条件とすることを検討している。都内では無痛分娩に10万~15万円かかる医療機関が多く、助成額を数万~10万円程度とする方向で調整している。
欧米では痛みがない分、早く回復して育児に専念できるとして、無痛分娩を利用する妊婦が7~8割に上る国もある。一方、日本は「おなかを痛めることで赤ちゃんへの愛情が育まれる」との考え方が根強く、正常分娩が一般的だった。
最近は無痛分娩への理解が広がり、全国の利用者数は2018年の4万5558人から、22年の8万9044人へと5年間でほぼ倍増した。全分娩数に占める割合も22年に11・6%と初めて1割を超えた。
それでも、費用面から無痛分娩を断念する妊婦も多いとみられる。妊娠・出産情報誌「ゼクシィBaby 妊婦のための本」が22年に妊産婦約3800人に行ったアンケートでは、無痛分娩を選ぶ際にハードルとなったことについて、「費用の高さ」を挙げた人が6割と最多だった。
厚生労働省の23年の人口動態統計では、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」が東京は「0・99」となり、初めて「1」を割った。日本産婦人科医会によると、無痛分娩の助成は群馬県下仁田町を除いて例がない。結婚から育児まで切れ目のない支援を掲げる都は、女性が出産しやすい環境を整え、少子化対策を充実させたい考えだ。