レノファ山口:水戸に引き分け。高井和馬は移籍後初出場、初ゴール!
明治安田J2リーグ第24節の11試合が7月21日、各地で行われレノファ山口FCは水戸ホーリーホックと勝ち点1を分け合った。順位は一つ下げて5位。ただプレーオフ圏内は維持している。
明治安田生命J2リーグ第24節◇山口2-2水戸【得点者】山口=高井和馬(前半36分)、渡辺広大(後半49分) 水戸=伊藤涼太郎(前半27分)、茂木駿佑(後半19分)【入場者数】4909人【会場】維新みらいふスタジアム
苦しめられた「追いかける展開」
レノファは今節、メンバーを大きく入れ替えた。GK吉満大介が今季初先発。東京ヴェルディから移籍してきた高井和馬が先発に名を連ねたほか、ベテランの佐藤健太郎もスタメン入り。「チーム状況が必ずしも良い状態ではない中で、勝ち点3を取らないといけないというときに、普段の練習で誰が調子がいいか、どの組み合わせが勝利の確率が高くなるか総合的に判断して、今日の先発を選んだ」。霜田正浩監督は狙いをそう説き、流れを引き戻す戦いに挑んだ。
だが、序盤からイージーミスをきっかけにカウンターを受けたり、サイドの突破からシュートに持ち込まれたりとリズムに乗れない。負傷のために水戸のFWジェフェルソン・バイアーノが早々にピッチを去るが、レノファは伊藤涼太郎と交代出場した岸本武流をつかまえきれなかった。前半27分にPKを献上し、その伊藤にゴールを許してしまう。
0-1となったあとは水戸の圧力が減り、レノファがボールをキープ。同36分、高木大輔が左からアーリークロスを送るとゴール前でオナイウ阿道が競り、そのこぼれ球を高井が押し込んだ。「阿道にボールが入ったときに、周りで狙っていろと監督にも言われていた。相手のセンターバックの反応も遅かったので、そこの隙を突いた」。オレンジのユニフォームを着ての初出場で、起用に応える鋭い一撃。試合を振り出しに戻すゴールとなった。
後半のレノファは落ち着いてボールを動かし、右サイドでは小野瀬康介の仕掛けがチャンスに繋がるようになる。ところが後半15分、最終ラインの中盤の間でボールを動かされてマークが緩くなり、茂木駿佑に勝ち越し点を奪われてしまう。ゲームの主導権を握りつつあったが、あっさりと失点して、またも追いかける試合展開となった。
レノファはこの失点前に高井に代えて大崎淳矢を投入。ゲーム体力がまだ戻っておらず、足が攣っていたという高井を下げて、フレッシュな選手で追加点を狙った。さらには清永丈瑠、岸田和人を矢継ぎ早に送り込み、試合最終盤にはセンターバックの渡辺広大を前線に残して1点差をひっくり返そうと力を割いた。
窮余の策とも言えるパワープレーだったが、攻撃的なカードを次々と切ることでスタジアムの雰囲気醸成にも成功。後半40分以降はレノファの一方的な展開になり、アディショナルタイムには小野瀬の縦パスを清永、岸田とワンタッチプレーで繋いで、最後は渡辺がヘディングシュートでゴールネットを揺らした。「リーグ戦で連敗しないことを掲げてやっていたので、その部分では(追いつけたのは)良かったが、決定機が多くあったゲームだった。修正して臨まなければいけない」。渡辺は唇をかんだが、連敗を阻止するゴールでレノファは勝ち点1を手にした。
致命的なミスは減らせたか
水戸との前回対戦では0-3で敗れており、その相手から勝ち点1を得たのは、ポジティブな見方をすれば上々の出来だ。複数得点も要素としては前向き。しかし、自分たちのミスからボールを失ったり、あと一歩寄せていれば打たれなかったようなシュートもあった。
「攻撃の1本目のパスを絶対に通せ」「自陣で取られてのカウンターは絶対に食らうな」--。今節へ向けてのトレーニングでは、練習場に霜田監督の厳しい声が響いた。言葉の意味するところは明白だ。ここ数試合、ミスからのボールロストがカウンターに繋がり、その一部は失点など致命的な症状として発出。ゲームメークの柱になっている前貴之は「縦に行くパスを通せていない」と話した。パスクオリティーの向上によるボールロストの低減が、今節の勝敗を分けるポイントの一つと言えた。
ボールロストを改善するという作業は、文字にするのは簡単でも、実際にやってのけるのは難しい。「自分たちがパスを繋いでいくサッカーを志向している以上、そのミスは絶対に付いて回る」(霜田監督)のも自明の理なのだから。
一人で全てをこなせるようなストライカーを置いていない以上、ロングボールを入れるのではなく、ショートパスやサイドチェンジを効果的に入れていくフットボールが、レノファにとっては最善策であり続ける。質の高いパスが求められるため、確かにミスは起きやすい。それもフィールドプレーヤー全体がコンパクトに前へ前へと動くため、失う位置が悪ければカウンターで背後の広いスペースを突かれるという致命傷も負ってしまう。これをいかに減らせるか。指揮官はビルドアップ段階での要求レベルを上げ、攻撃の1本目や、自陣で落ち着かせている時のミス減少を促した。
特に今節は試練の戦いになった。トップ下でボールを散らしていた池上丈二が欠場したほか、合流してからの練習期間が短かった高井が先発するなど顔ぶれが変化。パスの呼吸が合わない場面も想定されたが、霜田監督はスタイルを継続した。
果たして新しい選手たちが、どれほど戦術を理解して戦えるのか。そのチャレンジの結果は、勝ち点1を得るドローゲームに終わった。致命的なミスは減ってきているようには感じられるが、ミスから受けたカウンターもあれば、パス交換がうまくいってチャンスを拡大した場面もあった。いずれにしても、作業が道半ばだということを強く印象づける90分間だった。
霜田監督と武石康平テクニカルコーチは7月4日、記者会見を開き、ボール支配率やパス成功率などの数値を出して前半戦を総括した(5日付読売新聞)。重視する数字が示すように、ミスを恐れずに地上戦でフットボールをするのがレノファのスタイル。今日の試合が物語るように、顔ぶれが変わっても、やり方がぶれることはない。ただ、勝つには質が足りず、ミスの多寡が結果を決めてしまった。
レノファは7月25日にえがお健康スタジアム(熊本市)でロアッソ熊本と対戦。29日には再び維新みらいふスタジアムでホーム戦となり、FC町田ゼルビアを迎える。「引き分けは次の勝利への準備だという話を選手としてきた。次は何としても勝ち点3を取りたい」(霜田監督)。勝利に飢えた、質にこだわるチームの夏の陣が始まっている。