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「紀州のドン・ファン」事件、状況証拠だけでどう立証?モデルケースと裁判の行方

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:Motoo Naka/アフロ)

 資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた77歳の男性が2018年5月に和歌山県田辺市の自宅で急性覚醒剤中毒により不審な死を遂げた事件の裁判員裁判がようやく始まった。殺人と覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕・起訴されたのは、不審死の3カ月前に男性と婚姻したばかりの55歳年下の元妻だ。捜査段階で黙秘し、初公判でも「私は殺していませんし、覚醒剤を飲ませたこともありません」と述べて無罪を主張している。

 一方、検察側はこのケースと類似している和歌山白浜・水難偽装殺人事件における立証方法を参考にしているものと思われる。妻に不倫が発覚した夫が、妻との関係を清算して保険金を得るため、海中で妻を押さえ付けて溺死させたとされる事件だ。

 夫は捜査・公判を通じて黙秘を貫き、そもそも自殺や事故死ではなく他殺で間違いないのか、そうだとしても夫が犯人で間違いないのかが裁判の争点となった。これに対し、検察は事件前に夫がスマホで「溺死にみせかける」などとネット検索していたことなど様々な状況証拠を積み上げ、有罪の獲得を果たした。くしくもドン・ファン事件の初公判翌日、最高裁が夫の上告を棄却しており、懲役19年の実刑判決が確定することになる。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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