藤井竜王連覇か、広瀬八段4期ぶり復位か――第35期竜王戦七番勝負展望
藤井聡太竜王(20)に広瀬章人八段(35)が挑戦する第35期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)は10月7、8日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で第1局が行われる。
藤井竜王(王位・叡王・王将・棋聖)にとっては連覇がかかる防衛戦。広瀬八段にとっては第31期に羽生善治竜王(当時)からタイトル奪取して以来の復位と九段昇段(竜王通算2期で九段)なるかの七番勝負だ。
データを基に勝敗と展開を予想してみた。
<竜王戦七番勝負日程>
第1局 10月7、8日 東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」
第2局 10月20、21日 京都府京都市「総本山仁和寺」
第3局 10月28、29日 静岡県富士宮市「割烹旅館 たちばな」
第4局 11月8、9日 京都府福知山市「福知山城天守閣」
第5局 11月25、26日 福岡県福津市「宮地嶽神社貴賓室」
第6局 12月2、3日 鹿児島県指宿市「指宿白水館」
第7局 12月14、15日 山梨県甲府市「常磐ホテル」
藤井竜王は変わらず絶好調
<藤井竜王の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)
7月8日 棋王戦コナミグループ杯本戦
対中川大輔八段 ○
7月13、14日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第2局
対豊島将之九段 ○
7月17日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局
対永瀬拓矢王座 ○
7月20、21日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第3局
対豊島九段 ○
8月10日 順位戦A級
対菅井竜也八段 ●
8月24、25日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第4局
対豊島九段 ○
9月1日 棋王戦コナミグループ杯本戦
対久保利明九段 ○
9月5、6日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第5局
対豊島九段 ○
9月12日 順位戦A級
対糸谷哲郎八段 ○
9月23日 将棋日本シリーズ2回戦
対羽生善治九段 ○
<広瀬八段の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)
7月18日 NHK杯
対杉本和陽五段 ○
7月22日 順位戦A級
対佐藤康光九段 ○
7月27日 ALSOK杯王将戦2次予選
対本田奎五段 ●
8月5日 竜王戦決勝トーナメント
対佐藤天彦九段 ○
8月9日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局
対山崎隆之八段 ○
8月17日 棋王戦コナミグループ杯本戦
対菅井竜也八段 ○
8月23日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局
対山崎八段 ○
8月31日 順位戦A級
対佐藤天彦九段 ●
9月14日 棋王戦コナミグループ杯本戦
対羽生善治九段 ●
9月22日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選
対高橋道雄九段 ○
藤井竜王の直近10局は9勝1敗と相変わらずの「高値安定」で、これだけ勝っていてもあたりまえに感じるくらいの強さを発揮している。ちなみに昨年豊島将之竜王(当時)に挑戦したときも七番勝負直前は9勝1敗で、この時は開幕から4連勝でタイトルを奪取した。
強豪ぞろいの決勝トーナメントを勝ち上がり挑戦者に名乗りを上げた広瀬八段も直近7勝3敗と好調であることは間違いないが、調子の比較では一歩譲るといっていいだろう。
また過去の直接対決は藤井竜王が5勝1敗と勝ち越しており、持ち時間の長い(8時間)2日制タイトル戦(竜王戦、王位戦、王将戦)では通算20勝2敗と驚異的な数字を残している。
相性と調子、その他さまざまなデータを総合し七番勝負は藤井竜王断然優位とみて間違いない。
戦型は相掛かりと角換わり中心か
戦型は近年トップ棋士の間で定番となった相掛かりと角換わりのローテーションになる可能性が高いと見る。過去の2人の対戦でも相掛かり3局、角換わり2局、矢倉1局のデータが残っている。
ただし現在居飛車党の広瀬八段は低段時代から2010年に23歳で初タイトルの王位を獲得したころまでは振り飛車穴熊を得意とし、各棋戦で上位進出の原動力になった。
七番勝負は長丁場なので精神的な駆け引きも重要になってくるし、相居飛車の後手番は主導権をとられやすいため、研究を外す意味での「変化球」として1局くらい後手番で広瀬八段の振り飛車穴熊が出現する可能性もわずかながらあると予想しておく。
藤井竜王が今回防衛すれば、現在勝ち残っている棋王戦と合わせ年度内の「最年少六冠」達成だけでなく、来年度に名人と王座を奪取しての「八冠王」も視野に入ってくる。