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能登半島地震から1か月。断水長期化で暮らしへの影響深刻

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
(写真:ロイター/アフロ)

能登半島地震の発生から1か月が経過したが、断水の長期化が被災者の生活を苦しめている。馳浩知事は1月27日の記者会見で「8市町、約4万4000戸の断水が続いている」と語った。 とくに被害が大きかった6市町(輪島市、穴水町、能登町、珠洲市、志賀町、七尾市)の水道復旧時期は2月末から3月末になる見込み。すでに1か月、水道から水が出ない状況だが、それがまだ1、2か月間続く。

高齢者、高齢者の支援者の負担が大きい

全国の水道事業者の応援で給水活動は行われているが、自宅から給水ポイントまで車でも10分ほどかかる地区もある。そうした所では車がないとアクセスするのが難しい。

近くに給水ポイントがあっても高齢者にとって水は重い。10Lのポリタンクをいっぱいにすれば重さは約10キロ。自治体などがペットボトル水を箱(2L×6本=約12キロ)で配ることもあるが高齢者は運ぶことができない。高齢者でなくてもカートやキャリーケースが必要になる。近所の人が支援しているが「水を運ぶのに疲れた」「できれば給水車が循環してくれるとありがたい」「ボランティアさんに水を運んでもらいたい」という声を聞く。

衛生を保つための水が必要

断水というと「飲み水」のことが真っ先に思い浮かぶが、じつは衛生を保つための水が必要だ。日常生活では入浴や洗濯にそれぞれ200L、70L程度の水を使っていたが、それがなくなって1か月になる。

自衛隊の船舶に宿泊して入浴と洗濯ができるサービスがあるが、避難所にいる人が優先だ。自宅にいる人は入浴や洗濯は入浴施設やコインランドリーに頼る。近隣の自治体まで車でいかなくてはならない地区もあり、出費(施設利用料、コインランドリー代、ガソリン代)がかさんでいる。車の運転ができない高齢者は自分で行くことができず、近所の人の助けが必要だ。日常的にはウェットティッシュなどで体を拭いている。東日本大震災、熊本地震の発災時より高齢化が進んでいて、高齢者を高齢者が支援している地域もある。

仕事ができず転居を考える人

断水のために収入がなくなってしまった人も多い。製造業、飲食店、理容業などは水が使えないと仕事にならない。そうした人のなかには「転居を考えている」という人もいる。


自前の水を確保する動き

一方で、断水が長期化するなかで、自前の水を活用する人もいる。能登には酒造や醸造所が多く、普段から井戸水を使っていた。そうしたところが発災直後から井戸を開放した。地震直後は濁った井戸もあったが、時間が経つにつれてきれいになった。これは熊本地震の時と同様だ。それでも下水道が壊れていることを懸念し、沸かしてから使っている。使っていなかった井戸を整備して、再度活用できるようにする動きもある。

雨水も活用されている。雨水は降り始めこそ空気中の塵などといっしょになっているが、それが過ぎると比較的きれいで生活用水に使える。雨樋から容器で受けたり、ブルーシートやプラスチックの衣装ケースなどで集水し、掃除、トイレの流し水などに使う。こうすることで水汲みの手間が減る。

断水の影響は大きい。被害者の生活全般を苦しめている。一刻も早い復旧を祈りたい。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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