【阪神入団へ】ロハスJr.ってどんな人?「スイッチヒッターでホームラン王」「代役からリーグMVPに」
阪神タイガースの2021年新外国人選手として入団確実と報じられるメル・ロハス・ジュニア。ドミニカ共和国出身、30歳の外野手は昨年のKBO(韓国プロ野球)のMVPだ。本塁打、打点の打撃2冠を獲得し、2013年設立の新進球団KTウィズを史上初のプレーオフ進出の熱狂に導いた。
(2018の試合後にヒーローインタビューを受けるロハス。KTウィズ公式アカウント)
韓国プロ野球史上初のスイッチヒッターのホームラン王でもある。また韓国ではタイトル表彰のある長打率、得点を含め「今季4冠」とも評される。一般的に「打高投低」ともいわれる2020年シーズンの成績は以下の通りだ。
142試合出場 安打192 本塁打47 打点135 得点116 打率.349 長打率.680 OPS 1.097 (太字が1位)
韓国での人気ぶりはすさまじく、来季の去就が大きく報じられていた12月7日、KT球団のホームタウン水原市のヨム・テヨン市長がロハス自身のSNSのコメント欄にこんな書き込みをし、それがまた報じられるほどだった。
「水原(スーウォン)KTのロハス選手。水原市長のヨム・テヨンです。まだ心の決定を下していないのなら2021シーズンも水原市民と共にしていただくのはダメですか? ロハス選手も一緒にチャンピオントロフィーを掲げる場面を夢見ましょう」
また、韓国ではファンが球場で掲げた「ノ・ハクス(ロハスと音が似ていながら、韓国人っぽい名前)」というプラカードが話題になり、その名でも愛された。
いったい彼はどんな人物なのか。韓国メディアの報道や評価を基に紹介する。
(2018年7月18日 サヨナラ場外ホームラン時の様子 KTウィズ公式アカウント)
打撃の傾向は? 2020年データから
「メジャー経験のない、スイッチの中距離打者が、韓国でパワーも身につけて開眼」
「左右打席での特徴が大きく変わらない」
2017年から2020年までプレーした韓国でのメディアの評価は、およそそういったところだ。
2020シーズンは、7月までじつに「7冠」を狙えるという状況にあった。
この際に「スポーツ京郷」がロハスの詳細な打撃データを紹介した。球団の母体企業であり、「韓国版DOCOMO」といえる通信会社「KT」が発表したデータに解析を加えたものだ。「躊躇ないスイングとあふれるパワーにより、盗塁を除いた攻撃部門の全部門で自身の名前をリスト上位に置いている」としたなかで、こういった点が指摘された。
「(タイトル獲得に)最も危険なのが出塁率だ。ランキング上位を争うにしては三振が極度に多いからだ」
この時点でリーグ6位の58三振を喫していた。いっぽうでこういった評価も。
「ただし、バットに当たれば強い打球を飛ばせるため、ヒットの確率を高めている。高打率により三振数をカバーし出塁率を高めるスタイル」
同紙はこう続けた。
「KTのデータによると、ロハスのコンタクト能力(ボールに当てる能力)はリーグ平均以下だが、『正確に強く当てる比率』はリーグ最高位。バットの芯に当てて強い打球を生み出す比率においては、リーグ平均21.8%のなか、本人は41%の1位だ。当たりにくくはあるが、当たれば強い打球を生み出せるのだ」
また、このKTのデータでは「ストライクゾーン高めにのみ強さを見せていたが、2020年シーズンは左打席での低いコースにも強さを見せている」とした。
一般的に「打高投低」と言われる韓国での結果。日本ではどう出るだろうか。
当初はまったく期待されなかった存在
韓国から日本へ。環境の変化への対応では本人のキャラクターも重要になるだろう。
韓国メディア「東亜日報」は彼の韓国での足跡を「代役からMVPへ」と記している。
2017年シーズンに韓国に渡ってきた際には確かに「代役」という立ち位置だった。2013年設立の新進球団KTウィズが、もともとこの年に獲得していた左打者ジョニー・モネールがまったく活躍せず。メジャー経験ありの触れ込みだったものの、序盤28試合で打率.165とさっぱりだった。シーズン途中にして解雇となった。
代役としてやってきたのが「安い条件(40万ドル)で渡韓可能なマイナーリーガー」がロハスだった。
「最初の期待値はまったく高くなかったんですよ。2010年にパイレーツに3巡目で指名(全体の84位)されましたが、メジャー経験はなし。3Aや母国のドミニカ共和国リーグが主戦場でした。2017年、母国代表としてWBCに出場しますが、この際は唯一のアメリカ球団在籍選手ながら…バックアッパーだったという情報でしたから」(韓国の一般紙スポーツ部のベテラン記者)
唯一目を引いたのは、彼の父メル・ロハスの存在だった。かつてモントリオール・エクスポズなどで中継ぎ投手として活躍した。韓国行きも父の「別の角度から野球を学んでみたら」という助言が背中を押したという。
韓国での成功の秘訣は、彼が「ハングリー」だったという点だと見られている。
2017年6月上旬の韓国デビュー直後は不振だったが、6月末にコーチの助言を素直に受け入れ、スイングスピードを修正。すると6月30日の試合でいきなり3安打。
その後シーズンを通じて83試合の出場ながら101安打、ホームラン18本、打率3割1厘を記録した。
より環境に慣れ、かつ「まるで別人」と言われるほどのウェートトレーニングの成果が出た2018年には144試合で打率.305で43本塁打の活躍。5月29日には左右両打席からサイクルヒットを記録した。
(2018年5月29日 サイクルヒット時。KTウィズ公式アカウント)
翌2019年は成績がやや下降した。打率は.322とアップしたものの本塁打が24本と減少。また体の重たさからセンターの守備面での課題も指摘された。
迎えた2020年はウェートを落として臨んだ成果もあり、上記の通り「脱KBO級」と言われる結果を残した。
新進球団が育てた「ローカルスター」として移籍が惜しまれている。地元ファンからは「入団時の評価を考えると、活躍はまるでロトくじに当たったようなもの」と言われていた。丁寧なファンサービスや、ベンチのホワイトボードにふざけながらハングル文字を書いてみせる姿なども愛される要因だった。
変化への対応能力とキャラクター。この点は日本でもプラスとなるだろうか。
(2020年6月11日 ”おふざけ”でベンチ横のホワイトボードにチームメイトの名前をハングルで書く様子。名前の横に”バカ”と……異文化への関心は高いか)
(2020年7月13日 KBOの6月MVPに選ばれて※英語、韓国語のみ)
(了)