任天堂の決算を四半期グラフで見ると… 浮き上がる強みと「伸びしろ」の話
任天堂が4日、2021年度の第2四半期の連結決算を発表しました。決算を漠然と見ても、見慣れない人、数字が苦手な人には味気ないもの。そこでグラフを使って、同社の業績を直感的にイメージしてみましょう。
本来のニュースのポイントは、ニンテンドースイッチの年間出荷計画を150万台減らし、2400万台にしたこと。そして売上高や、本業のもうけを示す営業利益を見ると減収減益ですが、まあ想定内でしょう。
◇ピークは昨年度3Q 減収続くも安定
まず「第2四半期」には、二つの意味があります。純粋な四半期(7~9月、3カ月)と、中間決算(4~9月、6カ月・半期)です。当然ですが、中間決算になれば、第1四半期から積み増した数字になります。
ニュースの視点では、四半期、中間決算だろうと構いません。ですが読者側としてはその差を明確に意識したいところです。そして企業の直近の動向をつかむときは、四半期ごとの方が理解しやすいのがポイント。グラフになると一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。
下がり気味ですが、堅調なのが分かりますね。特に営業利益率は依然として30%以上をキープ。他業種では考えられない高い水準になります。そしてゲーム業界は、第3四半期(3Q、10~12月)が勝負どころです。ただし、新型コロナウイルスの「巣ごもり効果」があった昨年度の業績と比べられると分が悪いでしょう。ニンテンドースイッチのビジネスが大成功したがゆえに、頭打ちになるのは仕方ないので、今後はどこまで踏ん張れるかが基本となります。
続いて、地域別売上高の比較です。
トップは米国、続いて欧州。その次が日本。7割以上という海外比率の高さもポイントです。「日本市場に強い」と思われる任天堂も「欧米ではもっと強い」ということが実感できますね。また「その他」の地域をもっと成長させることができれば、まだ売れていたともいえそうです。
これらのグラフは、任天堂のホームページで公開されています。四半期だけでなく、直近5年間の業績も比較できます。
【参考】現金3000億円増! 恐ろしい任天堂の決算(2020年度通期決算解説)
余談ですが任天堂は、決算だけでなく、主力のゲームソフトの出荷数データも充実しており、積極的に開示しています。ただし決算の記事を書くとき、ソフトのデータを盛り込みすぎると、数字ばかりになり、比較対象もないとかえって理解しづらくなります。
◇コンテンツの強さをさらなる収益に
最後に、任天堂のカテゴリー別売上高を比率したグラフです。
「分ける意味ある?」というほど、ソフトの売上高を含んだ「ゲーム専用機」のジャンルが突出しています。そのくらい任天堂の強みがハッキリ出ています。
「ゲーム専用機」(約2885億円)の比率が、全体の売上高の9割以上を占めています。「モバイル・IP関連収入等」(123億円)もそれなりにすごいはずなのに。「その他(トランプ他)」(約8億円)はわずかですね。
一覧表にすると次のようになります。
「ゲーム機とソフトに特化している」と言えばその通りです。世界的な大ヒットゲーム(コンテンツ)を多く抱えながら、グッズや関連商品といった点では物足りなさがあるのも確かです。ただし逆に言えば「伸びしろがある」とも言えます。
東京にある任天堂の公式ショップの売り上げですが、ゲーム機やゲームソフトは「ゲーム専用機」に計上されますが、その他のキャラクター商品は「その他(トランプ他)」の扱いです。
ちなみにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)関連のビジネスは「モバイル・IP関連収入等」になりますが、「モバイル・IP関連収入等」は、(表にはありませんが)5年前と比べて倍以上に成長しています。なお有料ネットワークサービスの「ニンテンドースイッチオンライン」の収益は「ゲーム専用機」に計上されています。
“ドル箱”の「ゲーム専用機」のビジネスは現状、5~6年ごとにサイクルが来ます。そのたびに他社との大勝負になるのは、避けられないとはいえリスクです。……となれば、ゲームビジネスはそのままに、他の事業を着実に伸ばしていけるかでしょう。ゲーム以外の商品は、より多くの顧客にコンテンツに触れてもらう機会になり、本業にもプラスの効果が期待できます。
「スーパーマリオ」のアニメ映画(2022年12月公開)、USJの「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のエリア拡張(2024年)と、主力事業である「ゲーム専用機」以外の取り組みが今後も続きます。最も大事なのは本業のゲームビジネスなのは変わりませんが、注目したいところです。