Yahoo!ニュース

今年の漢字は「爆」!? BTS、TWICE、SEVENTEEN 年末授賞式に映る2019年K-POP

桑畑優香ライター・翻訳家
9冠に輝いたBTS

2019年のK-POPの私的キーワードは、「爆」。

シンプルだけど過激に見えるこの一文字には、いろいろな意味が含まれる。その中で今年のK-POPと重なるのは、「爆裂」と言う言葉。Googleによると、「爆発の作用で物体が片々に裂けて飛び散ること」。そう、2019年はこれまでのブームの影響が多方面で現出した年といえるだろう。

それを映し出す鏡のひとつが、毎年年末に開催される韓国における一年の総まとめ的イベント「Mnet Asian Music Awards(MAMA)」だ。MAMAでの映像を軸に、2019年のK-POPを振り返ってみよう。

名実ともにワールド・スターに君臨したBTS

CJ ENMが主催する、アジア最大級の音楽授賞式であるMAMA。12月4日、愛知県のナゴヤドームを訪れると、会場からは韓国語、英語、中国語、タイ語など様々な言葉が聞こえてきた。「国境を超えるK-POP」を耳で、肌で実感した瞬間。今年、その爆発的な人気の中心にいたのは、もちろんBTSである。

 

MAMAでは、「今年の歌手賞」「今年の歌賞」「今年のアルバム賞」「Worldwide Icon of the Year」など4つの大賞を総なめにしたほか、本賞である「Worldwide Fan's Choice賞」、「男性グループ賞」、「男性グループベストダンスパフォーマンス賞」、「Qoo10 Favorite Male Artist賞」「BEST MUSIC VIDEO」を受賞し9冠に輝いた。

今年10月には、14か月にわたる「LOVE YOURSELF」ワールドツアーのフィナーレをソウルで迎えたBTS。ツアーは、全世界23都市で62公演を行ない、のべ206万人を動員。(ファンクラブでもライブビューイングさえ入手困難なプラチナチケットに…涙)。大みそかには、ニューヨークのタイムズスクエアで行われるカウントダウンライブに出演するなど、2019年は名実ともにワールド・スターに君臨した年だった。

ステージでは、「Map of the Soul: Journey to Myself」と冠したメドレーを披露。2013年にリリースした懐かしいシングル「N.O」と「We are Bulletproof Pt.2」から、2019年のBTSを象徴する大ヒット曲「Boy With Luv」、「Dionysus」など、約30分にわたるパフォーマンスで魅了した。

会場全体を圧倒しながらも、受賞スピーチでRMが語ったのは「僕たちができることは、あまり多くありません。一生懸命に歌を作り、練習し、踊る。この時代を一緒に生きる皆さんの力になれるよう、僕たちにできることを、今いる場所から、輝けるように頑張ります」という、シンプルな一言。努力に裏打ちされた、控えめな姿勢が愛されるゆえんなのだろう。

TWICEの幅広い人気はもはや伝説の域に!?

今年も爆走を続けるガールグループの代表格といえば、TWICEだ。MAMAでは大トリをつとめたBTSの直前に登場し、「Feel Special」のリミックスバージョンと「FANCY」のメドレーを華やかに。

2019年には、韓国でデビューしたガールズグループとして日本で初のドームツアーを実施。「#Dreamday」全5公演のチケットは、一般発売を含めて1分で即日完売する伝説を作ったTWICE。NHK紅白歌合戦には3年連続出場という実績が証明するように、いまや幅広い層に知られ愛されるグループとして定着している。

大躍進のSEVENTEENが向かう夢の大舞台

ステージに登場するや、割れんばかりの大歓声。「Worldwide Fans’ Choice10」と「Breakthrough Achievement」の各賞に輝いたのは、SEVENTEENだ。

2016年夏に初めて中野サンプラザで日本初ライブを行ったときには、1.2万席に対して35万の応募が集まり、その後、アリーナクラスでのチケット即完が続いていた彼らが2020年に向かうのは、東京ドームを含むドームツアー。まさに「Breakthrough=大躍進」という賞の名がふさわしい。

(同じく「Worldwide Fans’ Choice10」を受賞したGOT7(上)、MONSTA X(中央)。そしてグループ中心のK-POP界でソロで気炎を吐くチョンハ。層の厚さを立証する力量あふれるパワフルなステージ)

K-POP界の期待の起爆剤も

2017年頃から進撃を続け成熟の域に達したK-POPは今年、新たな波を生んだ。象徴ともいえるのが、大物ルーキーたちの登場だ。2019年は、有力芸能事務所から期待の新人グループが続々とデビューした年でもあった。

MAMAでは、ATEEZやAB6IX、Cherry Bullet、EVERGLOWなど多くのグループがしのぎを削る中、「男性新人賞」と「女性新人賞」を TOMORROW X TOGETHERとITZYが受賞。TOMORROW X TOGETHERはBTSを生んだBigHitが満を持して送り出した2つめのグループ。結成時にTWICEの妹分として注目されたITZYは、JYPエンターテインメントが手掛けている。

(ヒット曲をメドレー形式で披露したTOMORROW X TOGETHER(上)とITZY)

「MUSIC MAKES ONE」につなげる思い

また、進化と変化を続けるK-POPの新たな形を提示するのが、WayV(威神V)だろう。SMエンターテインメントが放つNCTのサブユニット。メンバーはすべて中国、香港、マカオ、台湾など中華圏出身で、いわば中国人による中国語のK-POP。政治的な事情などで韓国人アーティストの中国本土での活動が厳しい状況にある中、国境を超えるエンターテインメントの新たな形としても脚光を浴びている。

振り返れば、日本と韓国の政治的関係もニュースなどで「史上最悪」という枕詞がつくことが多かった2019年。そんな中日本で開催されたMAMAのステージで、司会のパク・ボゴムがステージで明かしたイベントのテーマは、「境界を超えて音楽が創る新しい次元」だった。

「Music makes one」。MAMAのステージを間近で見ながら、その言葉の意味とこの地で開催された意義をかみしめた。ナゴヤドームで、国境を超えたファンが音楽で一つになる熱狂を肌で感じ、来る年に思いをつなげながら。

主な受賞

【今年の歌手賞】 BTS

【今年の歌賞】 BTS

【今年のアルバム賞】 BTS

【Worldwide Icon of the Year】BTS

【Worldwide Fans‘ Choice TOP10】 BTS、GOT7、SEVENTEEN、TOMORROW X TOGETHER TWICE、ATEEZ、MONSTA X、BLACKPINK、EXO、X1

【男性新人賞】 TOMORROW X TOGETHER

【女性新人賞】 ITZY

【男性グループ賞】 BTS

【女性グループ賞】 TWICE

【男性歌手賞】 ベクヒョン(EXO)

【女性歌手賞】 チョンハ

【ソロベストダンスパフォーマンス】 チョンハ 「Gotta Go」

【男性グループベストダンスパフォーマンス】 BTS 「Boy With Luv(Feat.Halsey)」

【女性グループベストダンスパフォーマンス】 TWICE 「FANCY」

【ソロベストボーカルパフォーマンス】 テヨン 「Four Seasons」

【グループベストボーカルパフォーマンス】 赤頬思春期

【ベストバンドパフォーマンス】 JANNABI

【ベスト・ヒップホップ・アンド・アーバン・ミュージック】 Heize

【ベストコラボレーション】 イ・ソラ 「Song Request (feat.SUGA of BTS)」

【ベスト OST 】 GUMMY 「Remember Me (ドラマ『ホテルデルーナ(原題)』OST)」

【Qoo10 Favorite Male Artist】BTS

【ベストミュージックビデオ】 BTS 「Boy With Luv(Feat.Halsey)」

■オフィシャル写真クレジット

「2019 Mnet Asian Music Awards (MAMA)」(c) CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved

ライター・翻訳家

94年『101回目のプロポーズ』韓国版を見て似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画レビューやインタビューを「現代ビジネス」「AERA」「ユリイカ」「Rolling Stone Japan」などに寄稿。共著『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書『韓国映画100選』(クオン)『BTSを読む』(柏書房)『BTSとARMY』(イースト・プレス)『BEYOND THE STORY:10-YEAR RECORD OF BTS』(新潮社)他。yukuwahata@gmail.com

桑畑優香の最近の記事