絵本作家として受賞多数。「まさか」の末にたどり着いたピン芸人・ひろたあきらの境地
絵本作家として「MOE絵本屋さん大賞2019」新人賞などを受賞してきたピン芸人のひろたあきらさん(32)。2月22日には3冊目の絵本「にゃおにゃおにゃお」を出しました。芸人と絵本。二刀流に至る中でたどり着いた境地とは。
3回のコンビ解散
もともとコンビで芸人をやっていたんですけど、今から5年ほど前に解散してピン芸人として再出発することにしたんです。
ピンネタで何をやるのか。それを考えた時に、もともと専門学校で絵を描いていたので絵を使ったフリップネタをやろうと。ネタの参考にと本屋さんに行って絵本を見たんです。
行ってみて驚きました。絵本って、こんなに面白いんだと。そこから1年間で絵本を200冊は買うくらいハマっていきまして。
そこからSNSでも絵本についての発信をするようになって、またそこをきっかけに絵本のトークライブや本屋さんでの読み聞かせ会のお話をいただくようになっていったんです。
さらに、そこから「だったら自分の絵本で読み聞かせができたら」と思うようになって描いたのが1冊目の絵本「むれ」だったんです。
「むれ」が「MOE絵本屋さん大賞2019」新人賞をいただいて、そこからもっと絵本の活動が増えていった。そして、今回3冊目の絵本を出させてもらった。まさか、まさかですけど、これが今までの主な道のりなんです(笑)。
これまで3つコンビを組んで、全て解散となりました。相方がいきなり行方不明になったり、3カ月で解散になったり。これはこれでまさかでしたけど、なかなかうまくいかないものだなとも思ってきました。
「目標は『チュートリアル』」からの絵本
もともと、小学生の頃からお笑いが好きで、特に影響を受けたのが「チュートリアル」のお二人の漫才だったんです。
なので、高校時代にはコンビを組んでお笑いをやっていたりもしたんですけど、そこから経て経て、仕事の内容的にはほぼ10割絵本という状況になっています。
お笑いを始めた頃の自分が今の自分を見たら「え?」となるでしょうけど(笑)、絵本もやってみたら面白いし、事実として自分は絵本が好きだし、今の状態というのも自分が望んだ結果として得られているものなんですよね。
一つやってみて思ったのは、絵本はお笑いとすごく似ているなと。あらゆる形があって、自由度が高いんです。
フリとオチが完璧のよくできたストーリーもありますし、ただただ美しいものもありますし、ワケの分からないようなものもあります。
同じ漫才でもあらゆる漫才があるように、全てのパターンがあり得るというか。なので、ネタを作っている時と絵本を描いている時の感覚は変わらないんです。
芸人をやってきたから絵本の面白さが分かったのかもしれないし、芸人だからこそ描ける絵本もあるのかもしれないし、どこに何がつながって、何がどこにつながっていくのか。本当にそれって、分からないものだなと思います。
しかも、僕の場合は相方がいなくなったり、たまたま絵本が好きになったら周りの方がいろいろなことを言ってきてくださったり、思いもよらぬ要素で、思いもよらぬ道を進むことになっているなと。まさか、まさかで。
だから、今後を考えた時に、例えば5年後に自分が何をしているのか。これもまた分からないなと思っています。
もしまた漫才がどうしてもやりたくなって良い相方に出会えたらやっているかもしれませんし、引き続き絵本を描いているかもしれませんし、これは本当に分からないなと。
たまたま誘われて観に行ったライブでドラムがカッコイイと思って、フェスでドラムを叩いてるかもしれませんし(笑)。本当に、人生どうなるか分からない。だからこそ、面白い。そう思うんです。
(撮影・中西正男)
■ひろたあきら
1989年5月8日生まれ。愛知県出身。吉本興業所属。高校時代からお笑いを始め、名古屋吉本で芸人としての一歩を踏み出す。2015年に上京。コンビ解散を3回経験した後に18年からはピン芸人として活動を始める。絵本作家としても活動し、19年に刊行した処女作「むれ」(KADOKAWA)は12刷63,000部と好調に版を重ねている。「第12回MOE絵本屋さん大賞2019」新人賞、「第7回積文館グループ絵本大賞」、「第3回 未来屋えほん大賞」など多くの絵本賞を受賞。2月22日に3冊目の絵本「にゃおにゃおにゃお」を出した。