Yahoo!ニュース

母親失格?ミルク・二人目問題…悩む母へ伝えたい「自分自身も大切に」

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
真面目な母親はミルクや離乳食にも悩む(写真:アフロ)

このたび、妊娠中の夫の無理解や仕事の悩みからうつ状態になり、産後も「飛び降りてしまいたい」と何度も思ったという女性Aさんの体験談を紹介した(11月28日、飛び降りてしまいたい…3年近く「産後うつ」に苦しんだ元正社員女性の告白)。記事はYahoo!ニュースに転載され、共感と共に、母乳かミルクか、二人目は…といった悩みのコメントも寄せられた。取材と読者の体験談を振り返り、改めて産後の母親たちに「自分自身も大事に」「あなたはあなたでいい」と寄り添う必要性を考える。→前回の体験談特集心身しんどいコロナ禍で夫の理解なく…7割の母親、産前産後に「孤独感」

 新型コロナウイルスの影響で、今年、保育園や幼稚園が休園になった期間があった。連合が10月、男女1000人を対象にしたアンケート調査によると、日中、子どもの世話をしていたのは誰かという質問に、男性は「配偶者・パートナー」が84.5%。女性は「自分」が79.1%と答え、約8割の女性が育児対応をしていたことがわかった。 

〇身内の協力があるかで負担が違う

 在宅ワークが進められた中で、この結果だ。日頃から母親の負担が大きい実情が、産後うつの記事コメントから浮かび上がる。

「赤ちゃん育てるのは本当にしんどい。はじめてなら尚更。乳幼児突然死症候群なんてものもあるし、母乳の飲みが悪いとか、体重が増えてないとか検診の度にきつく脅されて…夫は赤ちゃんの面倒なんてまるで無関心だし、24時間朝も夜もなく2、3時間ごとの授乳。寝れるときに途切れ途切れに寝て。もう限界だと思うことは確かにあった。夫や親兄弟が協力してくれる人と、一人きりの人とで、全然負担は違ってくる」

「実家やダンナに頼れず都心で産み、産後うつになりました。泣きわめく赤ちゃん、眠れない。母乳出さないといけない、体重増やさないと。沢山の初めての経験、辛かった…その娘も反抗期。また別の辛さと向き合ってます。母親になること、大変。むいてなかったのかな

「そんなことないと思いますよ。ちゃんと家庭は守ったまま、子供も育っているじゃないですか…ヒトは集団で子育てするように進化した生き物です。それを一人で抱えるのはムリゲーだと思います

〇仕事・保育園に救われた

 産後の育児がつらい時期に、「仕事や保育園に救われた」という声もあった。預けるのは親の都合と見られがちだ。筆者も5年間、保育園にお世話になり、ありがたかった。何より、娘本人が先生や友達に囲まれ、楽しい居場所であったことから、保育園の良さを実感している。

 また、乳幼児のケアにすべてを注いでいる母親自身が、仕事や社会活動で、個人として認められ、自信を持てる機会も必要だと思う。

「自分もそうだった。どんな辛い仕事も乗り越えてきたから大丈夫と思ってたけど、寝られないのは死を考えるくらい心がやられました。保健師さんも話を聞いてくれましたが、赤ちゃんの身体に虐待のあとがないか、毎回調べていました。地域のセンターに行ってみても、赤ちゃんのファッションチェックばかり。楽しくなくて行かなくなりました。結局、保育園に預けるまで心は晴れず。保育園で先生と話をしたり、職場で感謝されたり。自分が欲しかったものがやっと見つかったような感じです」

「産後うつとまではいかないかも知れないが、出産後、日中、子供と二人きりだけの生活に息がつまり、おかしくなりそうだった。児童館でママ友も出来て遊んだりしたけど、毎日、朝から晩まで遊ぶわけじゃない。早く、旦那帰ってこい!って思っていた。子供が2歳になる直前に、運良く保育園に入れることになり、出産前まで派遣で働いていた会社で、また、雇ってくれることになった。子育てと仕事の両立は体力的にしんどかったけれど、精神的にはすごく楽になった。子供と離れる時間が私には必要だったみたいで、子供のことを心の底からかわいいと思えるようになった

「私も7年経ってから産後うつだったんだって自分を認められました。それまで自分の性格が問題なんだって思ってしまって。病気だったんだと思ったら楽になりました。そして子供とべったりの専業主婦をやめて、仕事をしたら元の自分に戻ってきました!」

緊張感のある生活が続く今こそ、親子支援が求められる
緊張感のある生活が続く今こそ、親子支援が求められる提供:SENRYU/イメージマート

〇二人目はまた違う課題が

 産後の取材をすると、二人目をどうするかという悩みも、たびたびあがってくる。

「元々、不安障害持ちで妊娠出産。夫の希望があり出産しました。産後、辛かった…妊娠中は仕事をしていたため気が紛れていましたが、育休中の子供と2人の時間は泣いてばかりでした。今は子供は可愛いですし、我が子がいないなんて考えられません。ですが、当時のことは思い出しても辛いです。今、夫が2人目を欲しがっていますが、私には恐怖しかなく踏み切れません。産後うつを経験した後の妊娠出産に踏み切れた人は、何がきっかけだったのでしょうか。教えて欲しいです」

「そうなんですよね、すべてがマイナスにしか考えられなくなる...2人目は、さらに上の子がいるだけに、1人目のときとは違う悩みも出てきたり...だから、安易に他人や旦那様のもう1人欲しいとか、なんとかなるとかいう言葉に流されずに、周りに頼らずに子育てできるのか、ほんとにもう1人育てたいと思っているのかを自分自身のお気持ちでお決めになられることを、私の経験からお伝えしたいです」

1人目の時、夫は仕事で午前様、飲み会が当たり前で、幼稚園に入るまでべったり2人きり、今思えばうつ状態にあったのでしょう。2人目を出産したら1人目のときのことが思い出され…うつ病と気がつくまでは自分勝手ですが、赤ちゃんをおいて死にたいしかなかったですし、今は精神科の薬に頼りなんとか日常生活を送り、子育ては親に頼りとなさけない限りです。努力不足だとの夫の罵声に日々耐え、今私は人の親になるべき人間ではなかったのだなと痛感しています」

「人の親になるべき人間ではなかった、このような考えになってしまう気持ち、痛いほど分かります。本当にすべてがマイナスにしかとらえられないんですよね…努力不足とは何でしょう。いろいろと努力しているから悩んでいるのに。だったらどのように努力すればいいのか、教えてほしい。行動で示してほしいです。どうか無理なされませんように。気持ちが軽くなる日が一日でも多くありますように願っております」

母親は、努力しているから悩む
母親は、努力しているから悩む写真:CavanImages/イメージマート

〇ミルクもOK・完ぺきを求めないで

 真面目な母親たちが産後に悩むことに、ミルクや離乳食、おむつをいつ卒業するかなど、栄養や発達に伴う課題もある。

「我が子は混合で育てました。2ヶ月から3ヶ月頃から23時ごろにミルクを飲ませると朝4か5時ごろまで寝てくれました。ミルクでも母乳でもどちらでも大丈夫な子だったので手がかからなかったです。それでも夫と実両親以外は敵に見えました。気分も落ち込み、買い物が辛い時がありました。辛いと思ったら、手を抜いていいと思います。母乳神話や手作り離乳食とか布オムツがいいとか気にしないで、文明の力を大いに活用、配送サービス宅配なんでも活用したらいいと思います」

「レトルト離乳食も活用しました、トイトレも幼稚園入園直前でした。おむつなんていつか外れます。ママさん、完璧を求めないでいいと思います

「生後8カ月の息子がいます。混合希望でしたが、母乳が全然出なくて母乳外来に通ったりマッサージしたりしても無理で、生後2カ月から完ミになりました。私も母乳をあげれないと駄目な母親、弱い子供になるとか思ってました。追い詰められ、上手く飲んでくれない我が子にもイライラしてしまいました。結果、ミルクが一番楽です。飲んだ量もわかるし、預けられるし、パパにもお願いできるし、よく寝る…男だから出来ないのではなく、やらないから出来ないという事が大半だと思います。ママが泣き止ませたり出来るのは、女性だからではなくて、毎日毎晩、試行錯誤してきたからです」

「私も第一子のときは、母乳神話、手作り離乳食、寝不足の中、生活リズム作りのための午前中散歩、早期英語教育…など惑わされ、それがうまく出来ないときは母親失格と落ち込んでいました。出産前は虐待事件を聞くと、ひどいと思っていましたが、出産後は、一歩間違えれば私も虐待しそうで、他人事ではないと思ってきました。ミルクの方がずっとよく寝てくれるし、レトルト離乳食も栄養価をよく考えて作られている。第二子の時は頻繁に食事も宅配にして、私がぐっすり寝ることで乗り切りました。精神的にもものすごく余裕がありました。お母さんが楽しく育児している方がずっと子どもも幸せです。とにかく赤ちゃん期を母親が(母親的立場の人が)無理なく乗り切ることが一番大事!

「私もミルクでいいと思います。離乳食だってレトルトでいいと思う。頑張りすぎて身体も心も病んでしまう事の方がお母さんにも赤ちゃんにも家族にも良くないと思います。笑顔で過ごせることができるなら、色んな人やものに頼ってほしいと思う」

以前は、地域の中で気軽にできた雑談の時間も少なくなった
以前は、地域の中で気軽にできた雑談の時間も少なくなった写真:maroke/イメージマート

〇親の頑張りを肯定し、環境整備も

 子供の栄養はどうするか、おむつは何歳まで?二人目はどうしよう…こういった悩みは、常に真面目な母親たちから聞いてきた。コロナ禍で、気軽に話せる行政の場が休みだったり、人との交流を控えたり、ご近所さんとの関係も安易には結べなくなり、立ち話やふれあいの中で聞けていたこと、こぼせたグチが吐き出せなくなっている。

 やはり、まず専門家や傾聴のトレーニングを受けた人が寄り添ってほしいと思う。取材した母親も、「絶望的な気持ちになることはあっても、めげずにサポートを探してほしい」と呼びかけている。「ファミリーサポート」や「ホームスタート」、「子供食堂」など、アクセスしてみてほしい。産前産後の心も体も繊細な時期に、一番大事なのは「あなたはあなたでいい」という肯定や尊重なのだと思う。地域のサポートは、子供のケアや食事をきっかけに、親に寄り添ってくれる。

 保育園や幼稚園の力も借りて、子供が成長すれば、身の回りのことができるようになり、常に親子で一体化しているかのような心配は少し薄れる。だが、今度は学力や学校生活、友達とのこと、思春期など悩みが高度になってくる。コロナ禍で休校になり、オンライン教育が求められ、食事や居場所の問題も大きかった。

 家庭に密集したことで、虐待やDVなどの問題も増え、SNSを通して犯罪に巻き込まれたり、体験したことのない現象が起きた。大学1年生は、いまだにキャンパスライフを楽しめずに孤立感を募らせている。経済を回していくことも大事だが、弱い立場の子供のことも、置き去りにしない政策が求められる。

公開されているコメントについては、社会貢献の趣旨で、抜粋して紹介させていただきました。ありがとうございます。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

なかのかおりの最近の記事