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民主党は改憲論を捨てたのか。

西田亮介社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授
(写真:ロイター/アフロ)

自民、改憲議論再開狙う…民主は応じる気配なし(読売新聞)- Yahoo!ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150923-00050033-yom-pol

安保法案が成立し、自民党は秋の臨時国会から改憲論を再燃させようとしているようだ。来年には参院選を控えている。票に繋がりにくい安保や憲法問題は選挙の前には扱わないのがセオリーとされる。自民党は正面から議論しようということなのだろうか。我々は政治的な話題と論点、経緯を忘れやすい。改憲にせよ、護憲にせよ、まず国会で議論をして、選挙の前にきちんと論点を出しきっておこうという姿勢については評価すべきではないか。

安保法制もそうだったが、重要政策がマニフェストの目立たないところにこっそり記述されているようでは、あとになってから正統性の是非をめぐる論争になってややこしい。国会で議論を交わし、選挙で国民に是非を問うのが王道だ。

ところが、冒頭の読売新聞の記事によれば、野党第一党の民主党はこれに応じないという。

野党第1党の民主党に議論に応じる気配はない。岡田代表は関連法成立後の19日未明、国会内で記者団に「憲法違反の法律が出来てしまった。それを正すには安倍政権を倒さなければいけない」と述べ、今後も関連法の「違憲性」を追及し続ける考えを強調した。党内には「憲法を軽んじる安倍政権が続く間は改憲の議論はしない」(幹部)との声が強い。

出典:自民、改憲議論再開狙う…民主は応じる気配なし

議論を深め、論点を顕在化することが野党の重要な役割だけに、民主党の議論にも応じないという姿勢はいただけない。

そもそも現在の民主党は、護憲を主張しているのか、それとも改憲を主張しているのかさえよくわからなくなってしまっている。民主党は、かつては「創憲」という言葉を用いていたし、鳩山元総理も現役時代に憲法試案を提案している。

http://www.hatoyama.gr.jp/tentative_plan/

2013年の参院選でも、必ずしも護憲一辺倒ではなかったはずである。たとえば2013年参院選のマニフェストでは、「未来志向の憲法を構想する」という項目を設け、以下のように記している。

基本姿勢

●現行憲法の「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」という基本理念及び象徴天皇制など日本社会に定着し、国民の確信にしっかりと支えられている諸原則は、これを尊重、堅持します。

●その上で、民主党は、現行憲法の基本理念を具現化し、真の立憲主義を確立するべく、国民とともに「憲法対話」を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深め、未来志向の憲法を構想します。

2014年衆院選のマニフェストではトーンダウンしつつも、それでも、「憲法対話」を進めると記している(下記、強調部引用者による)。

憲法

●国民主権・基本的人権・平和主義を守ります。

●憲法解釈を恣意的に歪めたり、改正の中身を問うこともなく、改正手続きの要件緩和を先行させることには、立憲主義の本

旨に照らして反対です。

国民の皆さんと「憲法対話」を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深め、未来志向の憲法を構想します。

●国民投票法の改正を受け、選挙権年齢の18歳への引下げなど、必要な法制上の措置を講じます。

「憲法対話」のもっとも象徴的な機会が国会での論戦である。それを避けようとするのだとすれば、昨今の政治的風潮を読んだ戦術だとしても評価できない。民主党が批判する与党よりも、よっぽど旧態依然とした批判野党に見えてしまう。

若者の「声」に耳を傾けてみたり、共産党が提案する野党の大同団結になびいてみたりと、民主党は目先の派手な出来事に錯綜している。世論調査の結果など客観的な方法を通じてサイレントマジョリティが何を求めているのかを正確に把握し、少なくとも憲法や経済政策、外交安全保障、かつての目玉だった社会包摂などの政策について、現在の主張を具体的かつはっきりしたものにする必要があるだろう。選挙直前になってから右往左往するようでは目も当てられない。さらに傷口を広げるだけである。

さすがに、玉虫色の政策主張が形にならないことくらいは、有権者は記憶しているだろう。現在の、民主党のプリンシプルが知りたい。党内でそのコンセンサスが取れないならば、いっそ早いうちにバラバラになったほうがよいのかもしれない。

社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

博士(政策・メディア)。専門は社会学。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授、東京工業大学准教授等を経て2024年日本大学に着任。『メディアと自民党』『情報武装する政治』『コロナ危機の社会学』『ネット選挙』『無業社会』(工藤啓氏と共著)など著書多数。省庁、地方自治体、業界団体等で広報関係の有識者会議等を構成。偽情報対策や放送政策も詳しい。10年以上各種コメンテーターを務める。

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