母子6人殺害放火事件の犯罪心理学
お母さんと5人の子供が殺された事件。なぜ、こんな事件が起きるのでしょうか。
■父親に一家殺害、放火容疑
■「愛」が動機の殺人について
人は自分の利益のために犯罪を犯しますが、時に愛による犯罪を実行します。
たとえば、自分や家族の将来を悲観した母親が自殺を考えた時に、子供を残すのは不憫だと感じ、子供を殺して自分も死のうとする親子無理心中などは、「愛他的殺人」と呼ばれています。日本ではかなり同情的に見られますが、アメリカでは何の罪もない子供を計画的に殺害した第1級殺人と見られます。
「愛」が動機とはいえ、ストーカー殺人などかなり歪んだ身勝手な「愛」がもとになった殺人もあります。
加害者は交際中(婚姻中)から、「自分では愛していると思っており、プレゼントなど愛の行為を懸命にするとしても、その見返りとして愛されることを切望します。親切そうに見えても、実は自分の利益のために相手に完璧を求め、相手を支配しコントロールしようとしているのです」(「ストーカー予防のため心理学:「愛」が動機の犯罪をどう防ぐか」Yahoo!ニュース個人有料:碓井真史)。
彼らは、相手が自分を愛してくれないとなると、裏切られたと感じ、自分の人生はおしまいだと思い込んで、殺害を考え始めます。
もちろん、本当の愛は、このように相手から何かを奪う愛ではなく、相手に捧げる愛なのですが、彼らは強い「見捨てられ不安」を持っているために、失恋や別れを受け入れることができないのです。
■家族殺しの犯罪心理
一般に、恋人や家族(元恋人や元家族)など身近な人を殺害する動機としては、次のようなものがあります。
- 「行き過ぎた愛」による一家無理心中
- 新しい相手との結婚を望み今の妻を殺すなどの「邪魔者殺し」
- DV被害者が思い余ってDV加害者を殺すなどの「暴君殺し」
- ストーカー殺人など別れを受け入れられず相手に裏切られたと感じる「身勝手で歪んだ愛」による殺人。
■大量殺人の犯罪心理
ほとんどの殺人犯は一人しか殺しませんが、何人もの人を一度に殺すのを、大量殺人と呼んでいます。
大量殺人の中には、通り魔事件のように、自分の人生を終わりにしようと思い、死ぬ前に世間を驚かせたい、自分の力を示したいと思って行う事件もあります。
また、たとえば父親への殺意を持っていたはずなのに、結果的には母も祖母も家族皆殺しといったケースもあります。この場合は、加害者から見れば、優しい母も祖母も、結局は父親側の人間だと感じて、殺害にいたることがあります。
さらに、一人を殺害し、その様子を見た時に、異常な興奮状態となり、次々と殺害する「血の酩酊」と呼ばれる事例もあります。
■家族殺害と放火
一般に、他人の殺人よりも、家族などの殺人の場合は、遺体に毛布をかぶせたり、捨てると言うよりも静かに遺体を置いてあるように見えるケースも多くあります。
一方、一般に殺害後の放火の多くは証拠隠滅が目的であり、ご遺体(生きている時のその人)への愛を感じにくい犯行とも言うこともできるでしょう。
■殺害される子供たち
大人たちは、様々な理由で殺人を犯します。そこに、子供が巻き込まれることは本当に悲しい事件だと思います。子供たちは、見ず知らずの不審者に殺されるよりも、親たちに殺されています。
子殺しの犯人の多くは、逃亡計画をあまり考えません。自分の利益のために計算して、捕まらないように行われる犯罪とは、異なっています。そのため、重い刑罰の存在だけでは、なかなか防犯につながりません。
加害者への制裁は言うまでもなく必要ですが、防犯を考えるためには、大きな事件が起こる前の家族支援が求められるでしょう。