【パリ五輪】卓球女子団体 メダル獲得の鍵となる選手起用とオーダー その悩ましい制約とは
パリ五輪卓球女子団体1回戦、日本は危なげなくポーランドを下し、幸先の良いスタートを切った。
しかし、2回戦以降を考えた場合に、気になるのは早田ひなの怪我の状況だ。
誰もが考えるのが、リザーブ選手を出して早田を休ませることはできないのかということだろう。今回リザーブとして同行しているのは木原美悠であり、格下の相手であれば十分に勝利を挙げられる。それどころか相手によっては木原の方が強い場合さえあるほどで、それだけ日本女子の層は厚い。
国際卓球連盟の規定「PARIS 2024 TABLE TENNIS SPORT SPECIFICINFORMATION」によると、選手が怪我や病気によってプレーができなくなった場合にはリザーブ選手と交代することができるが、その場合、正規の選手の出場資格は取り消されるとある。取り消された選手が再び出場資格を得られる可能性については記載がないため、そのような方法はないと考えるのが妥当であろう。
従って今回、早田を木原と交代させた場合、大会が終わるまで再交代はできないため、交代するならそのつもりで行わなければならない。当然ながらそう簡単に決断できることではない。
一方で、もしも早田を出し続ける場合には、なるべく早田に負担をかけないように試合回数を減らす工夫が必要となる。
今回の団体戦は「ABC・XYZ方式」と言い、片方のチームの選手がABC、もう一方のチームの選手がXYZとして、以下のような組み合わせで試合が行われる。
第1試合:B/C vs Y/Z(ダブルス)
第2試合:A vs X
第3試合:C vs Z
第4試合:A vs Y
第5試合:B vs X
どちらのチームがABCでどちらのチームがXYZとなるかは、事前のトスで勝った方が選び、各チームはその後でA、B、CあるいはX、Y、Zをそれぞれ誰にするのかを決める。
どの選手も第3試合までには最低1回は出て、第5試合までには2回出ることになるが、チームの勝敗が決まればそれ以後の試合は行われないから、早田の2試合目を後半におくほど試合の回数は少なくできる。
また、ダブルスは必ず交互に打たなければならないので、足にかかる負担は大きいが、腕を痛めている早田にとっては打球回数が少ない分だけ負担が軽減される。
今回のポーランド戦では日本がXYZだったが、渡辺武弘監督は、そうしたことを考慮して早田をダブルスに起用し、なおかつシングルスは後半に出る「Y」においたものと思われる。首尾よく日本は3-0で勝ったので、早田はダブルスでの0.5試合分という最少の打球回数で試合を終えたことになる。
ただ、こうした発想は当然相手チームも予想がつくので、オーダーを読まれることにつながる。それでも勝てるほど実力差がある場合はよいが、ドイツまたはインドと予想される準決勝あたりからは厳しくなるだろう。
日本チームは、早田の怪我の状況を見ながら、リザーブとの交代、オーダー構成の選択肢を総合的に判断する必要に迫られる。調整能力に定評がある渡辺監督の采配が期待されるところだ。