近所で気になるアブナイ空き家、どうしてほしい?どうしたい?!
過疎化や高齢化、都市部への人口集中に伴い、また高度経済成長期に建てられた居住用建築物の老朽化も要因として、空き家の増加が社会問題化している。現在日本全土で多数(直近データでは820万戸)存在する空き家のうち、有効利用が容易な物件は50万戸足らずでしかないとの推計も算出されている。
周辺住民はどのような対応を望んでいるのだろうか。内閣府が2015年11月に発表した住生活に関する世論調査から、実情を確認していく。
老朽化による破損・倒壊や火災リスク、さらには防犯の観点などにより、その空き家だけでなく外部周辺に悪影響を及ぼしている空き家があると仮定した場合、(地域の価値を損なわないようにとの前提で)その空き家へどのような対応をするのが望ましいかを聞いた結果が次のグラフ。全体では半数が「持ち主責任で除却(建造物などの有形固定資産を取り壊して廃棄すること)」との意見を持つ形となった。行政による関与を伴った上での除却は4割。
自己責任論の意見が多数派だが、実際には持ち主が事実上存在しない状態、持ち主も除却したいが資金繰りができない・むしろ空き家のままの方が節約できる場合もあり、持ち主責任では状況の改善が望めない場合も多い。それを認識した上での「行政が関わって」の回答なのだろう。他方「そのまま放置」との意見は少数でしかない。
性別に見ると女性の方が自己責任論の主張度合いが大きい。また男性はほぼ一定だが、女性は歳を経るほど自己責任による除却を求める声が大きくなる。20代では男女とも他年齢階層と比べ「そのまま放置」の意見が多めで、特に男性20代では12.0%が放置で構わないと主張しているのも注目に値する。
これを居住者=回答者の場所的観点から仕切り直したのが次のグラフ。
大よそ人口密集地帯ほど行政関与による処置を望み、地方ほど持ち主責任による除却を願っている。行政への仕事への期待の大小、空き家問題の実態として回答者の周辺で起きている事柄に関し、持ち主が関与できるようなものか否かなど、それぞれの事情が数字的な差異として表れていると見て良い。例えば東京都区部ではむしろ行政による除却を望む声の方が多いが、これは見方を変えれば持ち主責任による空き家問題の解決が難しいケースが増えていると読むことができる。
地域別では東北地方で行政関与による除却を望む声が大きい。これは震災に絡んだ空き家(直接の破損や周辺環境の悪化に伴い住居を退去した事例や、避難から長期間戻らずに放置された状態のものなど多様なケースが想定される)に関して、権利問題から持ち主責任に期待できる空き家が少ないことの表れと読める。逆に東海地域では持ち主責任での除却を望む声が6割近くに達しており、持ち主がはっきりした形での空き家が多いことがうかがえる。
あくまでも今件調査項目は住民の要望、意見であり、法的問題の根拠とはまた別のもの。とはいえ、「悪影響を及ぼす空き家を放置して構わない」とする意見はごく少数でしかないこと、持ち主の責任による問題解決が望ましいが、行政による関与を望む声も大きい実情などは、認識すべき動きだろう。
■関連記事:
住宅の空き家率は13.5%で過去最高に(2014年)(最新)
空き家問題最大の「その他の空き家」動向は…「その他の住宅」の都道府県別空き家動向をグラフ化してみる(2014年)(最新)