企業が払う新聞広告費と広告費相場の変化をさぐる(2024年公開版)
新聞を金銭面で支える大きな役割を果たす広告。その新聞の広告費や概算的な相場の変化について、日本新聞協会の公開資料から確認する。
次に示すのは、日本新聞協会の公開資料から確認した「新聞広告量」と「新聞総段数」、そしてそこから試算できる「記事総段数」。なお「段」とは新聞の文字列を構成する横線の段組みを指す。左端から右端までの1ライン分で「1段」として構成単位をカウントする。
次に新聞の広告費を抽出し、これをグラフ化して精査する。これは「企業や団体など『新聞に広告を出したい』と考えている側(クライアント)が、広告出稿のために支出する広告費」を意味する。
この値がそのまま「新聞業界の売上」となるわけではないので注意を要する。なぜなら広告を出稿する企業と新聞社が直接やりとりすることは滅多になく、大抵は複数の広告代理店が仲介を行い、仲介手数料などが差し引かれるからである。
ITバブル崩壊時の2002年に大きな減少が起きている。そしてその後の景気回復でも広告費総額は下がったまま。新聞への出稿効果に疑問符が浮かべられるようになり、費用対効果の算出の上で、選択肢から除外される、あるいは優先順位が落とされた事例が増えてきたことになる。そしこの現象は、4マス系の広告費、とりわけ紙媒体にも当てはまる。
2007年の金融危機以降、再び急激に減少の傾向を示している。予算は限られるが、出稿効果の減退はできるだけ抑えたい。ならば効率のよい媒体を選ぶのは道理であり、優先順位の低い選択肢は切られてしまうことになる。
2023年においては、前年からわずかながら新聞広告費は減少を示している。2020年がコロナ禍で大きく減少したのが底で、その翌年は前年比で増加したものの、その翌年は再び前年比で減少、直近の2023年でもその動きは続いており、1998年以降における最小値の3512億円を示す形となった。
「企業の新聞向け広告費」と「実際に掲載される広告の段数」が公開値によって確認されたので、両方の数字から「1段あたりの概算広告費」が計算できることになる。直上で解説した通り仲介手数料の問題もあり、そのままイコールの値と断じることはできない。複数段・1面丸ごとの場合は別料金となり(昨今では新聞広告の掲載希望が少ないため、需給関係から「まとめ買い」として値引きされる)、場所によっても多様な料金体系が設けられている。
今件はあくまでも「企業側が支払う金額として」「全部平均でならした場合の」概算値、指標の推移として見てほしい。
ITバブル期の絶好期にあたる2000年に、前年比で少々単価が上がっている。しかしそれ以外は一様に漸減していた。そして広告掲載率や広告掲載費の減り方と同様に、「ITバブル崩壊時に大きく減少」「金融不況時も大きく減少」の傾向が確認できる。
概算値ではあるものの、1998年と比べ直近の2023年では新聞広告の平均単価は4割ほどにまで減少していることになる。そして2023年では前年比で広告量は減少し、広告単価はほとんど変わらず、結果として広告料総額は減少。中長期的には広告出稿の減少を押しとどめるために単価を下げているものの、「量」の回復には至らず、好ましくない状態は継続中。直近年の動向は現状の傾向から脱却するのには程遠い動きには違いない。1段あたり概算広告費に限れば、2020年に底を打ったように見えるが、単に2020年がコロナ禍で通常以上の大幅な下げ方をしたので、その調整が生じているだけの可能性もある。実際、2021年以降はほぼ8.7万円で横ばいを続けている。
単価の減少はほぼ継続傾向であることから、それだけ新聞そのものの媒体力・広告力が減少していると、少なくとも広告出稿側が見なし続けているのは否定できない。今後新聞各社は企業側の広告費をさらに底上げさせるだけでなく、「より価値あるもの」と認識され、単価を引き上げても広告を出したいと企業・広告主側が判断するよう、媒体力を高めていく努力が求められよう。
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