直近では前年度比マイナス1.4%…新聞業の売上高動向をさぐる(2024年公開版)
紙媒体としての新聞のすう勢が話題に上る昨今だが、実際問題として新聞業の売上はどのような状況なのだろうか。日本新聞協会の公開データから確認する。
日本新聞協会が公開しているのは、新聞業全体(日本新聞協会が把握している範囲)の売上高、およびその部門別額。区切り期間で不具合が生じない範囲となる2002年度以降の動向をまとめたのが次のグラフ。
2004~2005年度に総売上高で一時盛り上がりを見せているが(2011年度もわずかだが増加はしている)、それを除けば総じて減少傾向にある。特に赤茶色部分「広告収入」の減り方が急激なものであるのが分かる。
青色部分の販売収入(要は新聞そのものを販売したことによる売上)は大した減り方ではないが、やはり減少を続けている(ただし2022年度では前年度比で大きな減少が見て取れる。これについては資料に「2022年度調査から「収益認識に関する会計基準」を集計に反映するようにした。変更に伴い、22年度と21年度の単純比較はできない」とあり、単に集計上の問題であり、突然販売収入が急落したわけではないのが分かる)。大手5紙が概して少しずつだが確実に売上を落としているの(日本ABC協会発表の主要新聞社の販売動向より確認。グラフ化は略)と合わせて考えると、感覚的には一致する。
直近の2023年度は前年度比で販売収入、広告収入、そして総売上が減少。その他収入は増加を示している。今件元資料では単純に「その他」のみの表記だが、具体的には情報処理サービスやイベント業務、不動産賃貸業務などを指すと経済産業省の「特定サービス産業実態調査」などの資料にある。要は新聞業においては副業的な立ち位置。しかし金額の観点ではすでに広告収入を超えているのが現状である。
これらの数字を元に、変化が分かりやすいように「前年度比」を算出したのが次のグラフ。2005年度以降、特に2007年度以降にわたり「広告収入」の減少ぶりが著しいことが再確認できる。ひとえに金融危機、そしてリーマンショックの影響によるところが大きい。またこの減少ぶりは、同時期に発生・進行している、広告発注側による「新聞の広告媒体としての価値観の見直し」も一因にあると見られる。
2023年度の販売収入は前年度比でマイナス1.4%、広告収入はマイナス6.1%。販売収入≒部数は減少したが、広告収入は大規模な減少となっている。広告が急速にひかえられるようになっているのかもしれない。
今世紀に入ってから、特に2005年前後からの広告費の急激な減少は明らかで、これが新聞業界全体の頭痛のタネとなっている。これはインターネットなど媒体としてのライバルの増加による競争激化に伴う単価引き下げ、発行部数低下に伴う媒体力の低下、そして内容そのものの品質の問題など、想定できる要因は複数考えられる。しかも、どの項目も多かれ少なかれ的外れではなさそう。
そして一方、鉄壁的存在ともいえた「販売収入」、つまり新聞そのものの売上も、毎年確実に減少している。前年度比を計算できる2003年度以降では、販売収入が前年度比プラスとなったことは一度もない。特に2022年度の前年度比で1割以上の減少は、値が確認できる2003年度以降において初めての話である。2023年度の減少がマイナス1.4%にとどまったのは、2022年度の大幅減少の反動が影響しているのだろう。
「販売収入」も「広告収入」も多分に販売部数と深い関係がある。売上の増加には部数拡大が不可欠ではあるのだが、現状ではそれも難しそうだ。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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