新聞の広告掲載「量」と「率」動向をさぐる(2024年公開版)
新聞を金銭面で支える大きな役割を果たす広告。その広告は減少しているのか、それとも増加しているのか。日本新聞協会の公開資料から確認する。
次に示すのは、日本新聞協会の公開資料から確認した「新聞広告量」と「新聞総段数」、そしてそこから試算できる「記事総段数」。なお「段」とは言葉通り、新聞の文字列を構成する横線の段組みを指す。左端から右端までの1ライン分で「1段」として構成単位をカウントする。「記事総段数」は公開分の値を用いて概算していることから、実情とはわずかながらずれが生じている可能性がある。
かつて「総段数」は増加の一途をたどる一方で、「総広告量」は横ばい、あるいは漸減の方向にあった。明らかなトレンドの転換が見られたのは2007年以降。「記事総段数」も多少は減っているが、それ以上に大きく「総広告量」が減っている。
2007年以降は景況感の悪化に伴う新聞発行数≒購入部数の減少に歯止めをかけるため、掲載文字サイズの大型化・段数の減少化、いわゆる「視力が気になる人でも見やすくするためのリニューアル」(≒高齢層を意識)が各紙で行われている。新聞のサイズに変更は無いのだから、文字が大きくなれば当然掲載可能な文字数は減り、段数も減る。それが原因の一つと思われる。
もっとも「総広告量」の減少に関しては新聞のリニューアル関連による影響はごくわずかで、単純に「クライアント離れ」「広告出稿先としての魅力減退」が多分に影響しているものと考えられる。
最近の動向を確認すると、2011年を底値として新聞の「総広告量」は漸増、「記事総段数」はゆらぎを見せながらも漸増、そして「総段数」も増加の動きに転じていた。金融危機からリーマンショック、さらには震災や円高不況を経て、ゆるやかな景気回復基調が生じている中で、新聞にもプラスの影響が生じていたようだ。
ところが2014年を天井として、それ以降においては、「記事総段数」はほぼ同数を維持しているものの、「総広告量」は減少の動きにある。結果として「総段数」は減少の動きに。金額面ではまた別だが、直近の2023年では「記事総段数」は前年比でマイナス2.3%、「総広告量」はマイナス5.5%。ビジネスの面での不安を覚えさせる動きを示している。
総段数に占める総広告量の割合、つまり新聞における広告の入り具合・広告掲載率は直近2023年では前年から続く形で減少、その幅もマイナス0.7%ポイントに。
総段数グラフでは大きな変化がないように見えていた広告掲載率。だが比率を算出して折れ線グラフ化すると、少しずつ、しかし確実に減少していることが分かる。
2000年前後の数字を確認すると、前回の不景気(俗に言うITバブル崩壊、インターネットバブル崩壊時)にも1年で1%ポイント強の下落率(例えば2001年から2002年にかけては1.5%ポイント下げている)が見られる。ここからは「不況のたびに広告掲載率は減少」「景気が回復しても広告は回復しない」とする新聞広告事情が把握できる。
2012年以降は復調の兆しもあったが、2014年以降は再び減少。過去の動きが示している通り、景気後退期から回復期に移行しても、広告掲載率は旧に復するのではなく、下がった水準で横ばいを維持する動きに転じていると見ると、道理は通る。陳腐な表現ではあるが、「広告の新聞離れ」が起きている次第ではある。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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