なぜハーランドは”227億円”でも移籍しないのか?チェルシー、シティ、レアル...ビッグクラブの算段
2021年夏の移籍市場が、幕を開けた。
この夏の「目玉」のひとりはボルシア・ドルトムントに所属するアーリング・ハーランドだろう。ハーランドは2020-21シーズン、公式戦41試合に出場して41得点を記録。圧倒的な決定力を見せ付けた。
「ハーランドは素晴らしいポテンシャルを備えている。彼には才能があり、ドルトムントで重要な存在になって、多くのゴールを決めることでそれを証明した。彼がピッチ上にいる時、ドルトムントの選手たちは快適にプレーしているように見える。彼はまだ若く、輝かしい未来が待っている」とはロベルト・レヴァンドフスキの言葉だ。
一方で、「ハーランドを獲得すれば、どのチームでも、強くなるだろう。彼のプレースタイルやウィルパワーというのは素晴らしい。彼のプレーを映像で見ると、信じられないよ。何より、ハーランドの強い意志だ。それは練習で培えるものではない」とはマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンの弁である。
「ドルトムントはオーガナイズがしっかりとしたクラブだ。この数年、エクセレントな仕事をしてきている。あと1年、ドルトムントに残るのがダメだとは思わない。それはキャリアにおける後退ではない。ただ、移籍するとなれば、新しいクラブは今後10年にわたり素晴らしいストライカーを確保したことになるだろうね」
ブンデスリーガでプレーした経験があるストライカーが、守護神が、ハーランドを称賛している。
■ビッグクラブの動き
そのハーランドに、ビッグクラブが関心を抱くのは当然かも知れない。
先日、ドイツ『ビルト』でチェルシーがハーランド獲得に本腰を入れようとしていると報じられた。チェルシーは移籍金1億7500万ユーロ(約227億円)のオファーを準備しているようで、その資金の捻出のため、チェルシーにはカラム・ホドソン=オドイ、タミー・アブラハム、ハキミ・ジャシュを売却する考えがあるという。一方で、ドイツ『スカイ・スポーツ』ではチェルシーが「ヴェルナー+金銭」でのハーランド獲得を画策していると報じられた。
チェルシーは昨夏、2億4700万ユーロ(約321億円)を投じて大型補強を敢行した。ジャシュ、ティモ・ヴェルナー、カイ・ハフェルツ、ベン・チルウェル、エドゥアルド・メンディらを獲得。だがヴェルナー(52試合12得点)が決定力不足に喘いでいたように、”得点”という意味では補強の効果は出ていなかった。
ただ、ハーランドに関心を寄せているのはチェルシーだけではない。マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリー、パリ・サンジェルマンといったクラブが虎視眈々とチャンスを狙っている。
シティはこの夏のハリー・ケイン(トッテナム)の獲得を断念。その際、ジョゼップ・グアルディオラ監督がケインを獲得するためのお金がないと話していた。一方で、このクラブには優秀なプレーヤーが揃っており、選手売却でマーケットが開いている間に資金が生まれる可能性がある。
ユナイテッドはジェイドン・サンチョの獲得を決定的にしている。彼の獲得に際して移籍金8500万ユーロを支払うことになる。また、昨季終盤にエディンソン・カバーニと契約延長を行った。だが、その際にオーレ・グンナー・スールシャール監督が「これは補強をしないという意味ではない」とコメントしていた。ラファエル・ヴァラン(レアル・マドリー)、エドゥアルド・カマヴィンガ(レンヌ)、キリアン・トリッピアー(アトレティコ・マドリー)への関心が依然として伝えられている通り、資金は不足してないようにみえる。
レアル・マドリーとパリ・サンジェルマンに関しては、鍵を握るのはキリアン・エンバペだろう。マドリーのトップターゲットはエンバペで、彼の獲得に失敗した場合、ハーランド獲りが現実味を帯びる。対して、パリSGとしては、エンバペが移籍に傾いた場合、後釜を確保するためにハーランドに触手を伸ばすことになる。
「ハーランドとエンバペ、どちらがベストかを決めるのは難しいね。だけど、彼らのような新しい世代の選手を見るのは、非常に刺激的だ」と語っているのはクリスティアーノ・ロナウドだ。
「選手によっては、1シーズン、2シーズン、良いパフォーマンスができるだろう。でも、それを数年間にわたり、継続するのは簡単ではない。そのためには、ハードワークやコミットメントが必要なんだ」
■C・ロナウドの言葉を読み解く
C・ロナウドとリオネル・メッシは、長い間、フットボールの世界を牽引してきた。この12年のバロンドール(FIFAバロンドール含む)を見れば、それは明らかだ。C・ロナウド(5回受賞)とメッシ(6回受賞)に割って入ったのは、2018年に受賞したルカ・モドリッチのみである。
そのC・ロナウドが言う”新しい世代”というのは興味深い。筆頭がハーランドとエンバペである。
確かに、ハーランドにとって、ドルトムント残留というのはステップダウンではない。新たにドルトムントのスポーツディレクターに就任するセバアスティアン・ケールによれば、「次のシーズンに向けて、我々はハーランドを含めたプランを用意している。そのことを彼と代理人は理解しているはずだ」ということだ。
それでも、今すぐ夏は終わらない。市場が閉まるまで、ドルトムントとしては落ち着かない日々が続きそうだ。