大雪を降らせるTモード型すじ状雲
1月上旬は各地で記録的な大雪となり、北陸では35年ぶりに平年の3倍を超える雪が降った。その原因のひとつが日本海に発生したTモード型すじ状雲だ。発達した雪雲で構成され、日本海側の広範囲に大雪を降らせる。
北陸 35年ぶりの大雪
タイトル画像は15日(金)、気象衛星ひまわり8号がとらえた積雪です。山に積もった雪だけでなく、福井平野、富山平野、越後平野など平野部に積もった雪もよくわかります。
度重なる強い寒気の影響で、1月上旬の降雪量は北陸地方で平年の351%に達し、1986年以来、35年ぶりの多さとなりました。また、西日本の日本海側は平年比443%で、こちらも1961年以降、最も多くなりました。
温暖化の進行で、雪は少なくなったといっても、短時間に激しく降る雪=どか雪は減っていません。ひとたび市街地にどか雪が降れば、市民生活に大きな影響が出ることに変わりはないようです。
日本海が作る冬景色
はじまりは先月16日の新潟・群馬の大雪です。湯沢町やみなかみ町藤原では一日で1メートルを超える雪が降りました。ニュース映像でみた雪の降り方が横ではなく、縦に、それも雪の筋がはっきりわかるように降っていたのが印象に残っています。
冬の日本海は対馬暖流の影響もあり、北陸沿岸の水温は真冬でも10度以上あります。この暖かい日本海が世界で有数の豪雪地帯を生み出しています。その証拠に、ロシア沿海州のウラジオストクの1月の平均気温は-12.3度、月降水量はわずか13.4ミリです。一方、日本海を挟んで対岸に位置する新潟市の1月の平均気温は2.4度、月降水量は186.0ミリに達し、その差は歴然です。
シベリア高気圧が蓋をして
雪が多くなるもうひとつの理由はシベリアから張り出す高気圧です。高気圧がある場所は空気が上から下に流れます(これを下降流といいます)。下降流はいわば蓋のような役割をして、日本海から立ち上る水蒸気を閉じ込め、雪雲を発達させます。
Tモード型すじ状雲
日本海に広がる雪雲はよく知られていますが、実はよくみると、形に違いがあることに気がつきます。こちらは1月8日(金)北陸周辺で雪が激しく降っていたときの雲の様子です。
北西の季節風とほぼ同じ方向に並んでいるのがLモード(Longitudinal mode)型の雲列です。一方、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の東側には北西の季節風に直交するように、南西から北東に並んだ雲列がみえます。これはTモード(Transverse mode)型すじ状雲と呼ばれ、この雲列が発生したときは日本海側の広い範囲で大雪となることが知られています。今回の北陸の大雪でも、このTモード型すじ状雲がみられました。
【参考資料】
気象庁:令和2年12月中旬以降の大雪と低温の要因と今後の見通し、2021年1月15日
小倉義光,2015:第16章大雨と大雪 冬の日本海雪景色,日本の天気 その多様性とメカニズム,東京大学出版会,368-375.