フランスにて産声を上げた、水族館の歴史
水族館の歴史を紐解くと、まるで人間の好奇心の奇妙な航海を目にするようです。
始まりは1830年、フランスのボルドーにて博物学者ド・モリンズが魚介類を水槽に収め、静かに展示した出来事に遡ります。
これを「世界初の水族館」と呼ぶ学説もあるが、その規模や壮麗さから、ロンドン動物園が1853年に開設した「フィッシュ・ハウス」を水族館の元祖とする声も根強いです。
この施設は温室を模した構造であり、来訪者たちは水槽の中で優雅に泳ぐ魚たちに見惚れたに違いありません。
さらに時は流れ、1856年にはアメリカ初の水族館がP.T.バーナムの博物館内に誕生するも、1868年の火災で儚く消失します。
その後、ヨーロッパ各地では華やかな水族館が相次いで登場しました。
例えば1860年のパリ、1869年にはベルリンが水族館史に名を刻みました。
ベルリン水族館の創設者アルフレート・ブレームは、天然石を使った洞窟風の展示やアザラシのプールを組み合わせ、単なる観賞を超えた教育施設を目指したのです。
この波は日本にも押し寄せます。
1882年、上野動物園に設置された「観魚室」は、日本初の水族館として誕生しました。
その後1897年、神戸の和田岬で「水族館」という名称が初めて使われた施設が登場し、これは後に移築され1910年まで営業したといいます。
興味深いことに、日本最古の現存する水族館は1913年開館の魚津水族館であるのです。
だが、時代の波は決して穏やかではありません。
海水を扱う設備の特性上、施設の寿命は30年と短命であり、日本の水族館はバブル期に建設された多くが老朽化の波に呑まれています。
それでも、水槽の中の小さな世界は、私たちに海の広大さと生命の美しさを伝え続けるでしょう。
参考文献
堀由紀子(1998)『水族館のはなし』岩波書店〈岩波新書〉