マスク氏による買収後、Xの米国広告収入が毎月減少
2022年10月のイーロン・マスク氏による買収以降、米X(旧ツイッター)の米国広告収入が毎月少なくとも、前年同月比55%減少していると、ロイター通信が報じた。
12月広告収入78%減
マスク氏がオーナーのXでは、新機能の導入や既存機能の廃止、有料モデル化、人員削減など、方針が次々と変わり、こうした急激な変化を懸念する企業のX離れが広がっている。Xは広告主のつなぎ留めに苦労しているという。
広告分析会社ガイドライン(Guideline)によれば、Xの22年12月の米国広告収入は、前年同月比で78%減少し、買収後最大の落ち込みとなった。また、23年8月の広告収入は同60%減少した。
マスク氏はこれまで、Xの広告事業が打撃を受けていることを明らかにし、活動家が広告主に圧力をかけたからだと非難していた。同氏は23年9月、広告収入が6割減少した主な原因は、ユダヤ人の権利保護団体、名誉毀損防止同盟(ADL)にあると述べていた。
米CNBCによると、ADLは22年11月、広告主に対してX上での広告を中止するよう呼びかけていた。マスク氏はこうした非難が続くならば、法的措置も選択肢の1つだと述べ、対立姿勢を強めていた。
Xでの広告再開の動きも
しかし、ADLは23年10月4日の声明で、Xでの広告を再開する準備ができている、と述べた。
その理由を「ヘイトとの闘いに関する重要なメッセージをXとそのユーザーに伝えるため」とした。ADLは「Xが過去数週間にわたってプラットフォーム上で反ユダヤ主義や憎悪に対処する意向を表明していることを評価する」とも述べ、「さらに多くの対策が必要である」と付け加えた。
ロイターによると、Xのリンダ・ヤッカリーノCEO(最高経営責任者)は前週に開催されたカンファレンスでのインタビューで、過去12週間に1500の企業ブランドがXに戻ってきたと述べた。上位100の広告主のうち90%がXでの広告を再開したという。同氏はXが24年初めに黒字化できる可能性があると付け加えた。
今度は「記事の見出し」非表示に
一方、Xが最近、外部のウェブサイトに誘導するリンクの表示方式を変更したことが先ごろ話題になった。記事などの見出しを自動表示せず、画像とリンク先のドメイン名のみを表示するようにした。ドメイン名は画像に重なる形で表示される。
従来は、画像の下に記事の見出しとドメイン名を自動表示していた。つまり、現在は投稿者が自ら本文に見出しなどを書き込まない限り、どのような記事なのか分からない。電子商取引(EC)サイトの商品詳細ページの場合も、商品名を自動表示しない。こちらも投稿者が自ら本文に商品名を書き込む必要がある。
米エンガジェットやCNBCによれば、マスク氏は23年8月に仕様変更の計画を明らかにしていた。同氏は10月初め、この変更を検討しているとの報道を認め、これを「美的感覚を大きく向上させるための方法だ」と説明した。
同氏の狙いは、画像上部により多くの文章を収めて、投稿をよりコンパクトに見せるためだとみられている。過激な見出しで関心を集めてクリックを誘導する「クリックベイト」を抑止する狙いもあるという。
ただ、この仕様変更は広告主に不人気だとエンガジェットは報じている。前述した通り、広告主は商品名などを本文に書き込む必要がある。この変更は、今後のXの広告収入に何らかの影響を及ぼす可能性があると指摘されている。
筆者からの補足コメント:
マスク氏は22年10月にツイッターを440億ドル(当時の為替レートで約6兆4000億円)で買収し、上場廃止した後、「最も尊敬される広告プラットフォーム」を構築すると述べていました。しかし、その直後から主要営業幹部を解雇したり、一部利用者のアカウント凍結を解除したりしました。23年6月には、コンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)担当の安全管理責任者アーウィン氏が辞任し、ブランド安全性・広告品質担当責任者のブラウン氏も退職を決めたと報じられました。NY Times紙によれば、米GMや独VWなどの大手メーカーが、広告支出を一時停止。マスク氏は23年のXの売上高について、30億ドルを達成できるペースで順調に進んでいると述べました。ですがこれは、21年の51億ドルから大幅減収になることを意味しています。
- (本コラム記事は「JBpress」2023年10月13日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)