なぜシティの”231億円”の補強は実らなかったのか?グアルディオラの「次なる思考」とケインへの関心
ビッグイヤー獲得は、目前だった。
今季のチャンピオンズリーグで、マンチェスター・シティは決勝に勝ち進んだ。ファイナルの相手はチェルシーで、3年ぶりのイングランド勢対決になった。結果は1-0でチェルシーに軍配が上がった。試合後、ボランチにイルカイ・ギュンドアンを、左ウィングにラヒーム・スターリングを配置したジョゼップ・グアルディオラ監督の采配に非難が集中した。
「チャンピオンズリーグで優勝するのは難しい。60年にわたり、この大会に参加しているチームがある。彼らでさえ、4回、5回しか優勝できていないんだ」
これはグアルディオラ監督の言葉だ。グアルディオラ監督としては、2010-11シーズン以来のCL決勝の舞台だった。バルセロナ以外のチームでのビッグイヤー獲得。その偉業がなされると、多くの者が期待していた。
■グアルディオラの長期政権
グアルディオラ監督は今季、シティと2023年までの契約延長を行っている。バルセロナ時代(2008年ー2012年)を超える長期政権が、シティ(2016年ー2023年)で実現する可能性がある。
バルセロナでは、リオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスを主軸にポゼッション・フットボールを展開した。セルヒオ・ブスケッツ、ペドロ・ロドリゲスが台頭し、カンテラーノを重宝しながら申し分ない内容と結果を示した。
ただ、グアルディオラ監督のシティでのアプローチは異なる。
ケヴィン・デ・ブライネ(移籍金7600万ユーロ/約98億円)、ルベン・ディアス(移籍金6800万ユーロ/約88億円)、リャド・マフレズ(移籍金6780万ユーロ/約87億円)、ジョアン・カンセロ(移籍金6500万ユーロ/約84億円)、アイメリク・ラポルテ(契約解除金6500万ユーロ/約84億円)と近年のシティは大金をはたいて選手を獲得してきた。
グアルディオラ監督は、バルセロナ時代に「レアル・マドリーとタイトルを争っているが、我々の功績は計り知れない。マドリーは多くの得点を記録しており、素晴らしい選手を揃えている。そのために、多くの資金を投じてきた」と語っていた。
「マドリーには莫大な予算がある。だから優秀な選手たちを集められる」
当時のリーガエスパニョーラはマドリーとバルセロナの”2強時代”だった。フロレンティーノ・ペレス会長という敏腕なビジネスマンをトップに据えるクラブに、豊潤な戦術と緻密な分析で対抗していたのがペップ・チームだった。
■守備陣を固めて
昨年夏、シティは1億7780万ユーロ(約231億円)を補強に投じている。なかでも、守備陣の強化に力を入れていた。
シティは移籍金6800万ユーロでルベン・ディアスを獲得。それだけではなく、移籍金4530万ユーロでナタン・アケを獲得して、二段構えで守備陣を補強した。
「こんにち、人々はセンターバックに注目している。グアルディオラはそのポジションに多くのお金を使ってきた。彼のフットボールには、それが重要だからだ。彼はディフェンスの選手のエクセレントなパスで、チームのプレーが始まると考えている。彼が獲得したのはレベルの高い選手たちばかりだ。それでも、グアルディオラは満足していない」
そう語るのはドミトロ・チグリンスキである。チグリンスキは2009-10シーズン、バルセロナでグアルディオラ監督の指導を受けた。彼自身はバルセロナで成功を収められなかったが、ビルドアップ能力の高いセンターバックの先駆け的存在だった。
そして、いま、シティはハリー・ケイン(トッテナム)とジャック・グリーリッシュ(アストン・ヴィラ)に関心を寄せている。アタッカーの補強に動こうとしている。
2020-21シーズン、グアルディオラ監督は「ゼロトップ」の戦術の練度を高めていた。デ・ブライネやベルナルド・シウバを最前線に据えた。ただ、ケインの獲得は、それに逆行しているように見える。
だがグアルディオラ監督の中では、新たな戦術とバリエーションが用意されているのだろう。グアルディオラ監督の頭の中を覗くのは不可能だ。ゆえに、我々は補強の行方と新戦力の適応を見守るのみである。次こそ、ビッグイヤーの獲得をーー。ペップ・シティのハードルは上がり続けている。