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NBAで292試合プレーした守護神が語るチームとファンの関係

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
好調な千葉ジェッツを支える守護神、ヒルトン・アームストロング(三尾圭撮影)

Bリーグ最多となる試合平均4124人のファンを集客する千葉ジェッツ。年明けに開催された天皇杯では、決勝戦で強敵の川崎ブレイブサンダースを撃破。人気、実力ともに今、最も勢いのあるチームの1つである。

そんなジェッツの守護神として、ペイント内を守るのがNBAで通算292試合の経験を誇るヒルトン・アームストロング。2006年のNBAドラフトで1巡目全体12位指名を受けた身長211センチ、体重107キロのビッグマンだ。

NBAでも身体を張った守備でチームに貢献したアームストロング(三尾圭撮影)
NBAでも身体を張った守備でチームに貢献したアームストロング(三尾圭撮影)

名門のコネチカット大学出身のアームストロングは、大学2年生のときに全米優勝を経験している。とは言っても、エースとしてチームをNCAAトーナメントの頂点に導いたのではなく、ベンチから出場する脇役だったのだが。

アームスロングがバスケットボール選手として大きな成長を遂げたのは大学4年生のとき。3年生時には平均3.8得点、3.4リバウンド、1.2ブロックだった成績が、9.7得点、6.6リバウンド、3.1ブロックへと倍増した。彼は自らの得点でチームを引っ張るタイプではなく、学生時代から守備を第一に考える職人的な選手だった。NCAAの強豪チームには、得点力自慢の選手は多いので、アームストロングは守備で貢献することで自らの真価を示す道を選んだ。

ビッグイースト・カンファレンスの最優秀守備選手に選ばれた守備力は、NBAのスカウト陣から高評価を得た。

2006年のドラフトではコネチカット大学から4人もの1巡目指名選手が誕生したが、後にアメリカ代表チームの一員として世界選手権での2連覇に貢献したルディ・ゲイ(全体8位指名)に次ぐ高順位で名前を呼ばれた。この年のドラフトで12位指名を受けたアームストロングは、レイジョン・ロンド(21位)、カイル・ロウリー(24位)、ポール・ミルサップ(47位)といったオールスターに選ばれる選手よりも評価が高かったのだ。

アームストロングにとって不運だったのは、ドラフト直後にホーネッツがトレードでタイソン・チャンドラーを獲得したこと。ブルズで燻っていたチャンドラーは、ホーネッツ移籍後にクリス・ポールとのホットラインを結成して、リーグ屈指のビッグマンに成長。守備力を買われてアメリカ代表チーム入りして、ロンドン五輪で金メダルを獲得したチャンドラーとタイプが被ったアームストロングは、ホーネッツであまり出番を与えられなかった。

NBA入り4年目にはホーネッツからキングスにトレードで放出されると、そこからロケッツ、ウィザーズ、ホークスとチームを渡り歩き、ジャーニーマン人生が始まった。

2011年にはヨーロッパへ渡り、フランスとギリシャのプロリーグでプレー。その後はNBAで傘下のマイナー組織であるNBADリーグ、中国、トルコと世界中を渡り歩いてきた。

NBA1年目にホーネッツでプレーするヒルトン・アームストロング(三尾圭撮影)
NBA1年目にホーネッツでプレーするヒルトン・アームストロング(三尾圭撮影)

世界中のバスケットボール・リーグで職人技を披露してきたアームストロングが新天地として選んだのが、今季誕生したばかりのBリーグ。

「代理人の下に、世界各国のプロチームから多数のラブコールが届いていたんだけど、その中の一つにジェッツがあった。これまでに中国でのプレー経験はあったけど、日本には来たことがなかった。日本を訪れた友人たちからは素晴らしい話しか聞かなかったので、僕も日本に行きたいとずっと思っていた。新しいリーグ誕生のタイミングも良かったし、このチャンスを生かしたいと数多くあるオファーの中からジェッツを選んだんだ」とアームストロングはジェッツ入団を決意した理由を説明する。

「日本に来て良かったと思っている。日本のバスケットボールのスタイルやレフリーに慣れるのは多少の時間がかかったけど、今はかなり慣れて、自分の持ち味を発揮しながらプレーできるようになってきた。レフリーの笛の吹き方は国によって大きな違いがあるんだ。僕はこれまでにフィジカルなプレーをしてきたけど、日本でこれまで通りにプレーするとすぐに笛を吹かれてしまう。積極性やフィジカルな面はできるだけ失わないようにしながら、Bリーグのスタイルに対応できるようにしている。外国人ルールでプレー時間が制限されてしまうのも、最初の頃は戸惑ったけど今は問題ないよ」

世界各国で戦ってきたアームストングは「他のリーグの方がフィジカルだけど、Bリーグには技術の高い選手がたくさんいる。Bリーグ上位のチームはNBADリーグのチームとも対等に戦えるんじゃないかな。夏のオフシーズンとかに、Dリーグのチームが日本に来て、Bリーグの優勝チームと戦えば、面白い試合になると思うよ。Bリーグの特徴としては、ボールが良く回っている。ボール回しが良いチームは、世界中のどこへ行っても通用する。逆に日本の選手に足りないのは、身体能力の高さとサイズだね。日本人は身体能力に頼るのではなく、頭で考えながらプレーしている。日本のバスケットボールはまだまだ発展途上ではあるけど、この短い期間でもリーグ全体のレベルが上がっているのは実感するし、今後が非常に楽しみだ」と今後のBリーグの発展に期待を寄せる。

リーグの発展にはチームを支えてくれるファンの後押しが必要不可欠だが、「千葉のファンは最高だ。会場内は熱気に溢れ、大声援でチームにエネルギーを与えてくれる。僕を含めたジェッツの選手全員がファンには心から感謝しているし、ファンと一緒に戦っている気持ちになれる。本当にジェッツのファンは素晴らしい」とリーグ・トップクラスの熱さを誇るジェッツ・ファンに感謝する。

「このチームのスタッフは、チームの存在を地元に知らせるために懸命なPR活動を行っている。マーケティングがうまいと感じるね。そして、会場を訪れてくれたファンに満足してもらうために、選手はもちろんのこと、チアリーダーやチームスタッフ全員が最善のパフォーマンスで試合を盛り上げる。ファンが試合を観て笑顔になり、次は友達を連れて試合を観に戻ってきてくれる。そんな向上効果がこのチームにはあるんだ。チーム、選手、ファンが理想的な関係を築いているんだ」

「ジェッツのファンはグレートだ」と語るヒルトン・アームストロング(三尾圭撮影)
「ジェッツのファンはグレートだ」と語るヒルトン・アームストロング(三尾圭撮影)
スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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