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週刊誌が大きく取り上げた秋篠宮家の佳子さまの「独立」劇の真相を考える

篠田博之月刊『創』編集長
(写真:Motoo Naka/アフロ)

愛子さまの「逢瀬」報道への疑問

 週刊誌は毎号、皇室の話題を大きく掲載しているが、派手な見出しの割に中身は曖昧というケースも少なくない。

 例えば最近でいえば『週刊女性』3月7日号「愛子さま 旧宮家ご子息と御所で逢瀬」だ。表紙にもデカデカとうたっているその見出しだけを見れば、愛子さまに意中の男性がいて、2人で会っていたという記事だと多くの人が思うだろう。しかし、記事を読んでみると、これが極めて曖昧だ。匿名の皇宮警察関係者が声をひそめてこう言ったという。

「感染対策の観点から、御所におこもりになっている間、とある旧宮家の子孫にあたるご子息と束の間の逢瀬を楽しまれていたようです」

「逢瀬を楽しむ」という表現も、2人が特別の関係であることを匂わせているのだが、本当にこの関係者はそうコメントしているのだろうか。単に愛子さまが誰か男性と会っていたのがこういう話になっているのか。そもそもその男性についての情報を記者はきちんと把握したうえでこの記事を書いているのか。記事を読むと疑問符はたくさんつくのだが、その曖昧な情報を派手な見出しで表紙に掲げるというのはどうなのだろうか。

春からの宮内庁広報室新設で皇室報道はどうなる!?

 皇室ネタは週刊誌、特に女性週刊誌では読者の引きがよいのだろう。何かがあってもなくても毎号、入れるということになっているらしい。羊頭狗肉とまではいわないが、それに近い記事が多い。記事が曖昧なのを、見出しの強さで強引に持っていってしまうというケースが目立つのだ。

 ここではたまたま目についた『週刊女性』の例をあげたが、別に同誌だけでなく、毎週、派手な見出しをつけて「書いた者勝ち」ふうの記事が目につく。もう少し考えないと、週刊誌そのものに対する信頼性を失わせるのではないだろうか。

 この4月から宮内庁に正式に広報室が作られ、SNSを含めた情報発信を考えていくと言われるが、対策すべき対象として週刊誌が想定されているのは確かだろう。逆に言えば、新聞やテレビは、今のところ、会見で発表されたことをそのまま報じているだけで、宮内庁にコントロールされている印象が強い。宮内記者会非加盟のメディア対応をどうするかというのが、広報室の課題なのだろう。

 週刊誌がバッシング一色となった眞子さん結婚報道を含めて、皇室報道にあらわれる異様さは、象徴天皇制という特異な制度のもとでの報道のいびつさを示すものだ。公式発表しか報道しない記者クラブ体質の新聞・テレビと、それゆえそこからこぼれた情報が裏もとれないものも含めて誇張して報じられるという、皇室報道のあり方を、この機会に考えてみてはどうだろうか。

そんな中で興味深い佳子さまの「独立」劇

 さてそういう前置きをしたうえで、週刊誌の皇室報道で最近気になったのは、佳子さまについての記事だ。例えば『週刊新潮』3月2日号「『天皇誕生日』に水を差す『佳子さま』秋篠宮家からの“独立”劇」。秋篠宮家の改修工事が昨年9月に終わり、約4年間、家族が仮住まいしてきた「分室」と呼ばれる「御仮寓所」からの引っ越しが進められているが、佳子さまだけは「分室」に残るというのだ。

 この話は『女性セブン』3月2・9日号も「佳子さま、ひとり暮らし10億円豪邸に眞子さん『秘密の帰国部屋』」と報じている。また『女性自身』2月28日号も「30億円豪邸への引っ越し拒絶で“両親も出禁”氷の孤城」と報道。匿名の皇室担当記者がこう証言していた。「特別な理由がないのに、未婚の女性皇族が一人暮らしをされるのは非常に珍しいことです」

佳子さまの「独立」劇を週刊誌が大きく報道(筆者撮影)
佳子さまの「独立」劇を週刊誌が大きく報道(筆者撮影)

 なぜ佳子さまがそういう異例の対応に踏み切ったのか。姉の眞子さんの結婚騒動で、佳子さまが示した意向、つまり皇籍離脱により自由になるための道として結婚を考えているといった見方を考えると、佳子さまの行動が取りざたされるのは無理からぬことと言えるかもしれない。

 さてそのうえで前述した週刊誌3誌がどう分析しているかだが、とりあえず一つ指摘されているのは、その「分室」には眞子さんの荷物が今も置かれており、姉が一時帰国した時に対応できるように、という意図ではないかというものだ。『女性セブン』の見出し「秘密の帰国部屋」はそういう意味だ。

 そういえば昨年の秋篠宮の会見発言で、ニューヨークの娘の眞子さんの意向をどうも父親は下の妹の佳子さま経由で得ているらしいと話題になった。姉妹の間で比較的頻繁に情報共有がなされ、佳子さまはどうも姉の情報を父親に伝える役目を担っているのではないかというわけだ。

 それゆえ姉の荷物がいまだに置かれたままの「分室」に、佳子さまが残ろうとする意図もわからぬではない。

姉の結婚騒動を経て佳子さまの生き方はどうなる!?

 ただ週刊誌ではもうひとつ、佳子さまのこれまでの発言などを踏まえて、踏み込んだ見方もしているようだ。前出『週刊新潮』の記事で「秋篠宮家の事情を知る関係者」がこう証言している。

「佳子さまが“お一人暮らし”を選ばれたのは、決して『公務に邁進し、女性宮家創設に備えて独立したい』といったご意思からではありません。むしろお気持ちは正反対で、『いずれは出ていくのだから、それまで公務以外は好きにさせてほしい』とのお考えでいらっしゃるのです」

「公務以外は好きにさせてほしい」という言い方自体にネガティブなニュアンスが込められていて、この「事情を知る関係者」はどういうスタンスの人なのかと思ってしまうが、関係者の間で佳子さまの行動が憶測を呼んでいるらしいことはわかる。

『女性自身』の記事には、ジェンダー平等の理念から「“なぜ男性皇族だけ一人暮らしが許されてきたのか”という問題を提起されているようにも思います」という宮内庁関係者の証言も載っている。これもこの宮内庁関係者がそんなふうにも見えると言っているだけなのだが、いずれにせよ今回の佳子さまの決断が、皇室の中で女性が不自由に生きている現実に対する否定的見方とつながっているのではないか、と関係者に受け止められているのは確かなようだ。

 市民社会においても、一定の年代に達した子どもが親と離れて一人住まいしたいと考えるのは通常あることだから、佳子さまがそう考えたとしても不思議はない。今までは女性皇族がそうするのは異例だったようだが、眞子さんや佳子さまがそういう皇室のあり方から逃れたいと考えているのは確かなのだろう。

 それにしても週刊誌でこれだけ話題になってしまったから、今後、佳子さまが秋篠宮家のなかでどうふるまっていくのか、ジェンダー平等の理念に基づくとみられるような生き方を強めていくのかどうか、何かと注目されることになるのは間違いなさそうだ。

 異例の一人暮らしを望んだという佳子さまの真意は果たして何なのだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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