Yahoo!ニュース

エルメスがマッシュルーム製レザーを使用したバッグを発売 米新興企業と素材革新

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
エルメスがサステナブルレザーバッグを発売 MycoWorksのHPより

 ラグジュアリーブランドの代表であり、“バーキン”や“ケリー”などの上質なレザーバッグがアイコン商品として知られる「エルメス」が、Mushroom-Based ‘Leather’(マッシュルームレザー、キノコレザー)を使用したバッグを発売することがわかった。自然とバイオテクノロジーの融合で生まれた新素材シルバニアを、まずは旅行用のボストンバッグとして活用されることが多い“ヴィクトリア”で、カーフスキンの代替として使用。第一弾はキャンバスとのコンビのもので、年末までに発売される見通しだ。

 これは、カリフォルニアを拠点とするスタートアップ企業のMycoWorks(マイコワークス)と提携して実現したもの。彼らの特許技術FineMyceliumで作られた最初の製品となる。MycoWorksには女優のNatalie Portman(ナタリー・ポートマン)とミュージシャンのJohn Legend(ジョン・レジェンド)も出資している。石油由来製品や動物由来製品に比べてCO2など温暖化物質の排出量が少なく環境負荷が低いことが特徴で、未来を担うサステナブルな技術・素材として注目されている。

 エルメスのアーティスティック・ディレクターであるPierre-Alexis Dumas(ピエール・アレクシス・デュマ)氏は「MycoWorksのビジョンと価値観は、エルメスとも共鳴するものだ。製品の寿命を最大限に延ばして活用してもらうことを目的に、天然素材へ転換し、強い魅力として卓越性を追求していく。そして、シルバニアと共に、エルメスの中心に常にある思い“innovation in the making”を追求していきたい」とコメント。

 MycoWorksのMatt Scullin(マット・スカリン)CEOは「FineMyceliumの製品を作るのに、『エルメス』よりも優れたパートナーを想像することはできなかった。両者は職人技、品質、革新性、忍耐力という共通の価値観を共有している。新素材シルバニアは、素材の未来を成長させるという共通のビジョンと、新しいデザインの可能性を解き放つ探求の結果だ。私は2017年にMycoWorksを紹介された。これは、エルメスが初めてFineMyceliumを体験したのと同時期だった。当時、MycoWorksは小さなアーティストのスタジオを拠点としていたが、信じられないほど素材の可能性を感じた。

 ストーリーテリングの力は、新しいテクノロジーやアートの鍵だ。エルメスは私たちの物語に関連している。そのFineMyceliumは芸術的実践と職人技に根ざしている。同時に、エルメスは、天然素材を強化するためのMycoWorksのユニークなバイオテクノロジーアプローチやFineMyceliumが世界で最高品質の菌糸体になる可能性があると認識している。シルバニアは、自然とバイオテクノロジーがどのように連携して、最高水準の品質の素材を作成できるかを表している」と述べている。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

松下久美の最近の記事