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これからどうなる?チャン・グンソクの兵役問題はなぜ「論争」に発展してしまうのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

「アジアのプリンス」と呼ばれ、“グンちゃん”の愛称で親しまれている俳優チャン・グンソク。この2週間は彼の「兵役問題」が “ホットイシュー”になった日々だった。

第一報は7月6日。兵役の義務を果たすことが所属事務所を通じて発表され、チャン・グンソクもファンクラブ・ホームページに兵役に就くことを報告。韓国はもちろん、日本でも一斉に報じられた。

芸能人の兵役問題は敏感

しかも、それと併せてチャン・グンソクが“躁うつ病”を患っていたことも告白。兵役判定検査で4級判定を受け、軍隊生活を送る代わりの代替え処置として社会服務要員として兵役を務めることが明らかなり、本来ならば受けるはずの4週間の基礎軍事訓練ではなく、4泊5日の社会服務基本素養教育を受けることになった。

一連のニュースを目の当たりにしながら改めて感じたのは、韓国において「兵役」がとてもナイーブな問題であるということだろう。

兵役は韓国の成人男子に課せられた“国民の義務”とされているだけにスターやアイドルといった芸能人も避けることはできず、不正に逃れたものなら非難を浴びることは必至。2000年代初期に絶大な人気を誇るも兵役回避でアメリカに渡ったアイドル歌手ユ・スンジュンは、今も入国禁止処分が解けないほどなのだ。

(参考記事:兵役逃れが発覚した韓国スター10人。精神科通院、抜歯、国籍放棄などその手口とは?

それだけに人気スターの兵役問題には多くの関心が集まり、チャン・グンソクに関してもさまざまな憶測記事も流れた。

無妹獨子で兵役免除!?

例えば兵役判定についてだ。チャン・グンソク側は2011年に初めて“躁うつ病”と診断され以降、再検査を繰り返した結果、4級判定を受けたと過程を説明したが、ネット上ではチャン・グンソクのプロフィール欄にある“ムドックチャメ”が影響したのではないかと憶測だ。

“ムドックチャメ”を漢字で書くと「無妹獨子」となる。「娘のいない家庭の一人息子」という意味で、かつて韓国には父を早くに亡くした一人息子や2代目以上の一人息子の場合は、兵役期間が短縮する規定があった。実際、過去にはその規定によって兵役免除となったスターもいる。

(参考記事:「えっ、そんな理由で?」兵役を免除された20人の韓国芸能人を一挙紹介!!

それでチャン・グンソクも4級判定ではないかという憶測だったわけだが、この規定は1994年に廃止になっている。兵務庁も事実無根だと否定せねばならなかった。

「芸能人は軍隊に行く時期になるとあちこち痛がる」

また、“躁うつ病”についても難癖がついた。前出した通り、チャン・グンソクは2011年に“躁うつ病”と診断されたことや再検査を繰り返したことなどを明らかにしたが、一部のネチズンたちの反応は厳しかった。

チャン・グンソクは2011年以降、『ラブレイン』(2012年)、『綺麗な男』(2013年)、『テバク』(2016年)などのドラマに主演し、今年も3月から5月まで放映されたドラマ『スイッチ』に主演するなど、活発な芸能生活を送ってきたが、「精神的な病を患っていたのに、よく演技ができたものだ」との意見が出たのだ。

「芸能人たちは軍隊に行く時期になるとあちこち痛がる」「チャン・グンソクの病気って、芸能生活はできるけど軍隊には行けない病気なのか」という皮肉たっぷりのコメントも、ネット上にはあふれたほどだ。

社会服務要員であっても世間の目は‥‥

この例だけ見てもチャン・グンソクの兵役問題には厳しい視線もあることがわかるが、世間の目は今後も監視の目を光らせるだろう。

というのも、チャン・グンソクが今後務めることになるのは社会服務要員である、ひらたく言うと公的機関の行政業務などに従事するもので、配属先に自宅から通勤することになる。土日は休日で、平日も勤務時間が終われば比較的自由なのだ。

(参考記事:チャン・グンソクの「兵役中の給料」はどのぐらい? 一日のスケジュールは?

ただ、だからといって夜中に出掛けたり、土日に余暇を楽しむなど一般人のように羽目を外しても構わないというわけではない。社会服務要員として兵役中であることは変わらないのだ。むしろ兵役中にふさわしくない行為が発覚されば批判の対象になることもある。

以前まで存在していた「芸能兵」撤廃のときもそうだったが、スターや芸能人が兵役中に起こす不祥事はゴシップ記事になりやすい。特にSNSが普及した昨今は、日常でのふとした失態がSNSを通じて瞬く間に拡散され、それがそのイメージに大きな損失を与えることもある。

昨年8月に社会服務要員としての務めを終えたJYJのパク・ユチョンが端的な例だろう。社会服務要員として兵役中だった2016年7月に不祥事が発覚して、一時は猛バッシングを浴びた。警察の捜査によって容疑は晴れたが、イメージダウンは免れなかった。日本では活動を再開したが、韓国ではまた本格復帰を果たせていない状況だ。

兵役問題に敏感な世間の視線があるからこそ、チャン・グンソクは社会服務要員として模範的な生活を送らねばならないわけだ。そのプレッシャーたるや、相当なものだろう。だからこそ、これから2年間は静かに見守ってあげるべきだと思うのだが、韓国メディアは黙って見守ってはくれないだろう。

きっと数ヵ月経てば、チャン・グンソクの社会服務要員としての日常をスクープ撮するメディアも登場するはずだ。それがスターの宿命であり、有名税と言えばそれまでだが……。

いずれにしても昨日で4泊5日の社会服務基本素養教育を終えたチャン・グンソク。今後は配属先での仕事に従事することで兵役と見なされる。

兵役期間が終わるとされているのは、2020年7月15日。それまでの間、 “うなぎちゃん”(チャン・グンソクの熱狂的ファンたちの総称)にとっては寂しい日が続くだろうが、兵役をしっかりと務めあげたときにチャン・グンソクが見せるであろう笑顔を励みにしながら、その日が来ることを静かに待ちたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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