レアル・マドリーのジダンとペレスの「思惑」とは?カンテラーノの価値と逃した中盤の選手。
この夏、レアル・マドリーの補強はゼロだった。
マルティン・ウーデゴール、アンドリュー・ルニン、アルバロ・オドリオソラのレンタルバックを決めたマドリーだが、新戦力の到着はなかった。
フロレンティーノ・ペレス会長は選手の放出と売却に専心していた。とりわけ、近年ジネディーヌ・ジダン監督の「頭痛の種」となっていたガレス・ベイルとハメス・ロドリゲスを移籍させたのは大きい。ベイルに関してはレンタルでトッテナムに、ハメスについてはエヴァートンが買い手となり、移籍金2500万ユーロ(約30億円)で取引が成立した。
■売却オペレーション
かくして、ペレス会長の「売却オペレーション」が推し進められていった。
ただ、失ったものがないかと言えば、そうではない。アクラフ・ハキミ(ボルシア・ドルトムント/移籍金4000万ユーロ)、セルヒオ・レギロン(トッテナム/移籍金3000万ユーロ)、オスカル・ロドリゲス(セビージャ/移籍金1350万ユーロ)といったカンテラーノをペレス会長は売ることになった。
移籍最終日にはボルハ・マジョラルがローマに移籍。完全移籍ではなく2年のレンタル契約となったが、ボルハ自身が「ジダンからは残ってほしいと言われていた。だからクラブは当初(ルカ・)ヨヴィッチの移籍先を探していた」と語ったように、最終的にはヨヴィッチを売れずにカンテラーノを放出せざるを得なかったのだ。
また、アクラフをインテルに売却した後、ダニ・カルバハルが負傷で長期離脱を強いられることになった。右サイドバックにアクラフがいれば、と考えるマドリディスタは少なくないだろう。現時点、カルバハルの代役がオドリオソラ、ナチョ・フェルナンデス、ルーカス・バスケスといった選手では心許ない。
■コロナ禍
それでもコロナ・ショックを受ける状況下で1億2350万ユーロ(約148億円)の収入を選手売却・レンタル料によって得たのは評価されるべきだろう。
ただ、中盤の補強が敢行されなかったのは懸念材料である。昨年夏から関心を寄せていた選手のひとりがドニー・ファン・デ・ベークだったが、「僕はレアル・マドリーと合意していた。アヤックスも彼らと合意に至っていたと思う。だけど何かの理由で移籍が実現しなかった」と本人が明かした通り、彼を射止めたのはマンチェスター・ユナイテッドであった。
ジダン監督が中盤を重視する指揮官であるのは間違いない。チャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げたチームでは、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチが盤石な中盤を形成した。メンバー固定が指摘される一方で、安定性がもたらされていたのも確かだった。
2019-20シーズンには、フェデリコ・バルベルデが台頭した。カゼミーロ、クロース、モドリッチ、イスコ、バルベルデが同時起用される【4-5-1】の採用を含め、ミドルゾーンを圧縮するジダンのスタイルには磨きがかかっている印象があった。
■カマヴィンガの獲得は見送りに
マドリーは昨年夏にマルコス・ジョレンテ(移籍金4000万ユーロ/アトレティコ・マドリー)、マテオ・コバチッチ(移籍金4500万ユーロ/チェルシー)の売却を決断した。加えてダニ・セバージョスをアーセナルにレンタルで貸し出した。
この夏には、ハメスとオスカルを放出している。一方でウーデゴールのレンタルバックが決まったのみ。噂になっていたエドゥアルド・カマヴィンガ(レンヌ)の獲得は見送られた。
バルベルデの台頭があったとはいえ、カゼミーロ、クロース、モドリッチに頼る現状は変わっていない。守備を重視するジダン監督が、次に着手するのは中盤の梃入れだ。しかし、その時にそれほど多くの駒が用意されていない気がするのである。