新規感染者が日本の100分の1でも容赦ない中国の水際対策 帰国した五輪選手団が送る隔離生活
中国も感染が再拡大
8月10日、日本全国の新たな新規感染者は1万574人確認された。1万人を超えたのは8日連続だ。一方、日本とは桁違いで感染者人数が少ないが、同日の中国の新規感染者は143人が確認され、今年2月以降で最多となった。
7月下旬に江蘇省南京の空港でデルタ株が確認されて以降、中国では少しずつ感染が再拡大しており、現在は江蘇省を中心に河南省、湖北省、湖南省などにも感染が広がっている。再拡大のきっかけとなったのが海外からの渡航者だったことから、政府はとくに水際対策に力を入れている。
それは入国者が東京五輪で華々しい活躍した選手たちであっても、変わらない。
21日間の厳しい隔離
中国の五輪代表団は777人だったが、閉会式前にすでに大半が帰国。最終組は閉会式後の8月9日に帰国したが、それ以前に帰国した選手や関係者たちも含め、彼らは21日間という長い隔離生活に突入している。
中国政府は自国民、外国人を問わず、入国後には14日間の隔離施設での集中隔離+7日間の自宅隔離(都市によって条件は多少異なり、さらにあと7日間の隔離や健康観察などを設ける場合もある)を要求しており、基本的に例外は認められていない。
隔離中は宿泊施設の部屋から廊下に出ることも許されず、部屋のドアを開けるときは、食事を受け取ったり、係員が検査のために中に入ってきたりするときだけという厳しさだ。
1日中、狭い部屋の中に閉じこもっていなければならず、経験者の中には「もう二度とやりたくない」という人もいるほど苦痛だ。隔離のために、暇つぶしのゲームや分厚い本、パソコン、運動器具などさまざまなものを持ち込んで、なんとか持ちこたえた、という人が多い。
東京五輪に参加し、帰国した選手たちも同様だ。彼らはSNSを使って、自分たちがどんな隔離生活を送っているかを日々発信しているのだが、これが「選手の思わぬ一面や素の表情が見られてうれしい!」などと好評を博している。
隔離の様子を実況中継
最初に話題になったのはフェンシング女子エペ個人の金メダリスト、孫一文選手だ。
隔離されている部屋の中を動画で紹介したあと、画面に向かって「無事に帰国しました。これから21日間の隔離です。辛いわ……。でも、この期間は練習しなくていいからね(笑)」と笑顔で投稿。これがウケて、隔離の様子を発表する選手が続々とあらわれた。
競泳男子200m個人メドレーで金メダルを獲得した汪順選手も中国の空港に降り立ったところから自身で撮影。毎日配られるお弁当の中身なども見せた。その後、マットなどを使って運動している様子を公開。「この運動なら、1日中やっていても苦痛じゃないよ」といって明るい表情を見せた。
開会式直後に金メダルを獲得した射撃女子エアライフルの楊倩選手は浙江省寧波市の農村出身だが、彼女が隔離施設から故郷の農村に住む両親や親戚とオンラインで会話したときの動画は100万回以上も再生されて大人気となった。
ほかにも、女子バスケットボールの李夢選手、女子トランポリンの朱雪瑩選手、女子重量挙げ87キロ級の李雯雯選手などが次々と自身の隔離中の動画をSNSで公表している。
中国メディアはそれらを「運動系、ライブ中継系、食事系、リラックス系」などといくつかに分類し、「各選手がそれぞれ、自分のスタイルに合った方法で隔離時間を過ごしています」と紹介した。
SNSで視聴している人々も「ふだん、こういうふうに柔軟体操をしているのか、参考になった」「どんなふうに過ごしているのか、もっと紹介してほしい」「五輪から帰ってきて、一刻も早く家族や友だちに会いたいだろうにね。本当に大変だね。がんばって」などと声援を送っている。
日本の場合、感染者が急増し、医療崩壊の危機も迫っている中だが、入国者に対しては、あくまでも自主隔離という体制を取っており、本人の自主性に任されている。水際対策がゆるすぎる、という批判も多い。
しかし、中国では3週間という長く厳しい隔離措置を行っており、水際対策の手は、まったくといっていいほど緩めていない。