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ハグするメーガン・マークルさんに英王室伝統の壁 早くも心配 いつまで続く?ヘンリー王子との結婚生活

木村正人在英国際ジャーナリスト
ジャーナリストにハグするメーガン・マークルさん(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

10歳の女の子に突然、ハグ

[ロンドン発]国際女性デーの3月8日、米女優メーガン・マークルさん(36)は婚約者のヘンリー王子(33)と英中部バーミンガムに公務に出掛けました。多目的会議場ミレニアム・ポイントで科学やテクノロジー、数学のような分野でキャリアを目指す女子生徒を激励するためでした。

雨が降る寒い日でした。将来、メーガンさんと同じように女優になりたいとメーガンさんに打ち明けた10歳の女の子、ソフィア・リチャーズが突然、ハグされた(抱きしめられた)のです。ソフィアちゃんは英メディアにこう話しました。

「メーガンさんは私に『成し遂げたいと思うことは何でも実現するのよ』と声をかけてくれました。そして『あなたが女優になったらTVであなたのことを見たいわ』と言ってくれたのです。夢がかないました。私はこの日を絶対に忘れないでしょう」

アフリカ系の母親と、白人の撮影技師を父親に持つメーガンさんは女優になるのが幼い頃からの夢でした。

生まれついてのアクティビスト

社会問題への目覚めも早く、10歳の時に第1次湾岸戦争に反対する抗議活動に参加しています。その後、熱心にチャリティーに関わるようになりました。

2015年の国際女性デーには国連の主唱者として「私が11歳になった時、気づかないうちに偶然、女性のための主唱者になりました」とスピーチ。食器用洗剤が「すべてのアメリカ女性に」とうたっているのを疑問に思い、当時弁護士だったヒラリー・クリントン氏に手紙を書いて「すべてのアメリカ人に」と改めさせたエピソードを披露しました。

メーガンさんはヘンリー王子の亡き母、ダイアナ元皇太子妃の人道活動に強い感銘を受け、「ダイアナ2.0」を目指しています。しかし英名門貴族スペンサー伯爵家のご令嬢で、19歳の時にチャールズ皇太子と婚約したダイアナ元妃とは随分、異なるバックグラウンドを持っています。

アフリカ系の母親を持つアメリカ人で、しかも元配偶者がまだ生きている離婚経験者。自分の力で女優、アクティビストとしてのキャリアを確立した自立した女性です。

メーガンさんが英王室伝統の堅苦しいロイヤルエチケットになじめるのか、懸念する声が早くも上がっています。

「私はアメリカ人だから ハグする」

2009年、アメリカのバラク・オバマ大統領(当時)とミシェル夫人がエリザベス女王を訪問した際、ミシェル夫人が女王の背中に手を回し、英メディアから「王室の儀礼(ロイヤルプロトコル)に反している」と批判されたことがあります。

第二次大戦以来の「英米の特別な関係」を重視するエリザベス女王は親近感の表現として受け止めました。しかし王族の体に触れてはいけないのが基本的なロイヤルプロトコルです。

メーガンさんを人気TV番組「Suits(スーツ)」に抜擢し、一躍スターダムに押し上げたボニー・ハマーさんは米NBCのドキュメンタリー番組でこんな秘話を披露しました。

「メーガンがケンジントン宮殿を訪問した時、衛兵が彼女にあいさつしたの。しばらくするとメーガンは衛兵にハグで返した」

「ある時、誰かがメーガンに『あのぉ、ここでは普通そういうことはしないのです』と注意したのです。するとメーガンは言ったそうよ。『私はアメリカ人だから、ハグする』」

難しいハグ

イギリス社会であいさつ代わりにハグするのは家族か友人に限られています。お別れする時はもっと気軽に行われているようです。

日本人男性には、このハグはなかなか難しいもので、筆者の場合、緊張してなかなか上手くできません。友人のイタリア人女性からいつも「ほっぺをくっつけるだけじゃなくて、軽くチュッとするのよ」と注意されています。

国によってもハグの度合いは微妙に違うような気がします。

メーガンさんとヘンリー王子の結婚式がいよいよ5月19日に迫ってきました。お互い心の中に寂しさを持っているし、チャリティー活動という方向性が同じなので愛が永遠に続くことを願っています。

銀の匙をくわえて生まれてきた王子さま

しかし、銀の匙をくわえて生まれてきたヘンリー王子とキャリアを自分で築き上げてきたメーガンさんとでは生まれ育ってきた環境が違い過ぎるのも事実です。母親ドリア・ラグランドさんとの絆が強いメーガンさんがホームシックにならないかも心配です。

イギリスの天気は、夏は良いのですが、冬は暗くて寒くて冷たいので、メーガンさんが憂鬱になる恐れもあります。

昨年末のクリスマスにはエリザベス女王に対してキャサリン妃と一緒に膝を曲げて軽く会釈をするロイヤル・カーツィーを初披露する愛らしい姿を披露してみせたメーガンさん。結婚前からロイヤルエチケットをマスターしようと健気な努力をしているようです。

昨年12月、初公務でノッティンガムの学校を訪れたメーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)
昨年12月、初公務でノッティンガムの学校を訪れたメーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)

フランクなメーガンさんが英王室に爽やかな新風を吹き込んでいるのは間違いありません。メーガンさんとヘンリー王子の結婚には、欧州連合(EU)から出ていくイギリスにとってはアメリカとのつながりを象徴する願いも込められています。

ヘンリー王子も相当、努力しないとメーガンさんの愛を永遠には繋ぎ止められないでしょう。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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