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【日光】行列必至の老舗 元祖ゆばそば『魚要』が閉店!悲しいけれど美味しい思い出をありがとう!

フルリーナYocライター/音楽講師/作詞家(日光市・鹿沼市・益子町・那須町)

行列ができる日光の名店「魚要」が11月12日の営業をもって閉店となりました。突然の閉店に驚いている方も多いのでは。元祖ゆばそばの店として、地元の人々にも旅人にも長年愛されてきた「魚要」。閉店の理由を女将さんに伺い、残念ではあるけれど、長年のお働きに拍手と感謝を送ります。旅人の美味しい思い出を紡いでくれた「魚要」の歴史と魅力、思い出のメニューを辿ります。

大正7年創業、105年の歴史を持つ魚要

開店から行列の絶えない名店
開店から行列の絶えない名店

そば処日光の中でも105年という長い歴史を持つ魚要は、元祖ゆばそばの店として知られています。日光産の玄そばを自家製粉・手打ちする喉越しの良い香り高い蕎麦と、独自性あふれるメニューは、多くの人を虜にし、行列の絶えない店としても有名です。

魚要が閉店する理由

その人気の老舗「魚要」が、なぜ、突然に閉店・・・? と思いますよね。実は店主さんは今年の春に事故に遭い、しばらくお店を休んだそうです。その時にいろいろ考えて、いつかはお店をたたむ時が来る・・・それならば元気なうちに楽しんだり旅行をしたりする時間も欲しいよね、という話になり、このタイミングで閉店ということになったそうです。

日光産の玄そばを自家製粉する石臼
日光産の玄そばを自家製粉する石臼

製粉・蕎麦打ち・うどん打ち・お店の準備・料理・かたずけ・経理・・・と、長年働き続けてきた二代目と三代目ご夫妻。しかも、開店から閉店まで行列ができる忙しさ、ご苦労もたくさんおありだったと思います。まだまだ続けてほしいけれど、まだまだ魚要の蕎麦やうどんを食べたいけれど、閉店の理由を伺って、心から「ありがとう!」と言いたくなりました。

樹齢350年・杉並木の杉を使ったテーブル
樹齢350年・杉並木の杉を使ったテーブル

そしてまずはのんびり休んで、それから好きな事・やりたいことを、たくさん楽しんでほしいなと思います。今までたくさんの旅人に喜びを届けてくれたけど、今度は旅人になって、たくさん楽しんでほしいなと思います。

「魚要」蕎麦屋なのに魚要?その秘密は創業に!

ここからは、日光の名店・魚要のこと、そのメニューをご紹介しながら、美味しい思い出を辿りたいと思います。

冷たい湯波そば
冷たい湯波そば

魚要の看板を見て「蕎麦屋なのに、なぜ魚要?」と思った方もあるのでは? 実は魚要は、魚屋として創業したのです。魚屋を始めたばかりは天秤棒を担いで魚を売っていたそうですが、店舗を構え、昭和の初めごろには食堂も始めたそうです。

笑顔がすてきな二代目
笑顔がすてきな二代目

こちらは現在95歳の「魚要二代目」。おいしそうに蕎麦を食べてる笑顔がたまりません!
「二十歳(はたち)の時から、ソバ打ってたからなあ! 」と、嬉しそうに話をしてくれました。現在の店主・3代目も、こちらの二代目から蕎麦の製粉から蕎麦打ちなどを習い、引継ぎ、発展させてきました。

魚要の美味しい思い出を巡ろう!

元祖ゆばそばは、「ふじや」の湯波が3種4個も!

ふじやの湯波が3種4個入っている「湯波そば」
ふじやの湯波が3種4個入っている「湯波そば」

「魚要」の看板メニューは何と言っても「湯波そば」!
温と冷があり、どちらも美味しかったけれど、筆者のお気に入りは冷たい湯波そばでした。氷でぎゅっと締まった蕎麦の上にのっているのは「ふじや」の湯波が4個(揚巻湯波2個・長寿揚・ぜんまい巻)。まさに日光湯波を堪能できる唯一無二の「元祖ゆばそば」。

ふわふわに煮込まれた湯波
ふわふわに煮込まれた湯波

「湯波そば・うどん」の上にのっている湯波の煮物は単品でも頼めるので、他のメニューを食べる時には、蕎麦のおともに楽しみました。優しい甘さの煮汁がたまらない、ふわっとした口当たり!

魚要・思い出のメニュー

そばもうどんも手打ち
そばもうどんも手打ち

看板メニューの「湯波そば・うどん」の他にも、魚要には美味しいメニューが多数ありました。特に栃木県民が愛する「ちたけそば・うどん」、なかなかお目にかかれない「木の芽そば・うどん」、鴨の甘味とコクが美味しい「鴨南蛮そば・うどん」、まいたけがタップリのった「日光まいたけそば・うどん」は、筆者の大のお気に入りメニューでした。

栃木県の郷土食・ちたけそば・うどん

ちたけの出汁とトロトロの茄子が美味しい「ちたけうどん」
ちたけの出汁とトロトロの茄子が美味しい「ちたけうどん」

ちたけ(乳茸)は、栃木県や茨城県の一部で好んで食べられているきのこ。食べるとボソボソした感じなのですが、コクのある濃厚な出汁が出る希少なきのこです。栃木県では江戸時代からこの茸を食べていたという記録もある郷土食。蕎麦もおいしいですが、うどんとも良く合います。魚要は蕎麦が人気ですが、うどんも手打ち。コシのあるもっちりした食感の美味しいうどんでした。

女将さんが炊く“山椒の葉の佃煮”が堪らない「木の芽そば」

山椒の香りがたまらない「木の芽そば」
山椒の香りがたまらない「木の芽そば」

魚要には、他のお店ではなかなかお目にかかれない「木の芽そば・うどん」もありました。木の芽とは「山椒の葉」のこと。日光の気候は寒暖の差が大きいため、とても香りのよい辛味のある山椒が取れます。女将さんが炊く山椒は香よく、汁の上にタップリ散りばめると、汁に山椒の香りが移ります。最後の一滴まで飲み干してしまう香り豊かな絶品メニューでした。

冷たい「木の芽そば」
冷たい「木の芽そば」

つめたい木の芽そばは、冷たい汁をかけても美味しいのですが、汁をかけずに木の芽と蕎麦だけで味わっても美味しい!、石臼引きの蕎麦の香りと山椒の香りのハーモニーを楽しめるメニューでした。

鴨とネギの甘味が汁に溶け込む「鴨南蛮そば・うどん」

コクのある「鴨南蛮そば」
コクのある「鴨南蛮そば」

鴨南蛮そば・うどんは、鴨肉とネギの甘味が汁に溶け込み、食べていると思わずニマニマっとしてしまうクセになるメニューでした。

まだまだ、他にも食べたいメニューはいっぱいあったのですが、筆者はついつい、この大好きなメニューをローテンションしてしまい、カレーうどんとか、山菜そばとか、なめこそばとか、とりそばとか食べずに終わってしまいました。返す返すも残念です。

あたたかい蕎麦・うどんのナルトの謎

筆者は、女将さんかご主人に、聞いてみたいことがありました。それは「温かいそば・うどん」に乗っているナルトのこと。湯波、鴨南蛮、ちたけ、なめこなどの蕎麦・うどんには「ナルト」が乗っているのですが、日光まいたけ、木の芽のそば・うどんには「ナルト」が乗っていないのです。何か特別なこだわりがあるのかなあ、と食べるたびに気になっていたのです。

別媒体の取材でお店が閉店することを知った時、そのことを女将さんに聞いてみたところ、「特別なこだわりはないんだけれど、ナルトがあると明るい感じになるでしょ。 でも、木の芽そばは、『山椒!!!』っていう感じ・・・山椒を際立たせたかったからかしら」と笑いながら答えてくださいました。

美味しいお蕎麦はこの石臼で

日光山玄そばを石臼で自家製粉
日光山玄そばを石臼で自家製粉

魚要の美味しい蕎麦は、店内に置かれている石臼(写真左)で、日光産の玄そばを店内で挽いて手打ちしていました。冷たい蕎麦で味わうと、蕎麦の香りと喉越しを最大限に楽しめます。また、蕎麦のみならず、うどんも手打ちし、手間暇をかけて汁の出汁を取り、お客さんに提供してきました。

大正7年、現在の店主三代目・要さんのお祖父さん要三さんが天秤棒を担いで始まった魚屋さん「魚要」と食堂「魚要」。戦中戦後の大変な時代を生き抜き、店を守り、二十歳の時から蕎麦を打ち続け「手打ち生蕎麦 魚要」を築いた二代目・三郎さん。日光の老舗として、日本全国、また、海外のお客さんにも美味しい思い出をたくさん紡いでくれた、三代目・要さんと女将さん。その長年のお働きに、心から感謝と賛辞を送ります。

2023年11月13日閉店
2023年11月13日閉店

ひっそりお店を閉めたいという、三代目ご夫妻は、昨日の最終日までたくさんのお客さんにおいしいそばやうどんを提供し、本日、2023年11月13日、百五年の歴史に終止符をうちました。

寂しいけれど、悲しいけれど、二代目と、三代目ご夫妻の新しい日々が、幸せと喜びに満ちた日々となりますよう、1ファンとして、心より祈り願います。

魚要さん、長い間、ほんとうにありがとうございました!

手打ち生蕎麦 魚要
栃木県日光市御幸町593

ライター/音楽講師/作詞家(日光市・鹿沼市・益子町・那須町)

自然と美味しいものが大好き。92歳のばばちゃまをのせた車いすを押して、心に響く風景や美味しいものを求めて、あちこち出没しています。Yahooエキスパート、日光市観光協会公式WEB「日光旅ナビ」、トラベル.jp、その他多数の旅行・グルメ情報webサイトに寄稿しています。

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