弟と共に世界タイトルを目指す日本王者
11月17日、元アマチュア5冠の重岡優大(25)が3回1分20秒KO勝ちで日本ミニマム級タイトルを手に入れた。日本ライトフライ級ユース、WBOアジアパシフィックに続き、自身3本目のベルトである。
現在WBCミニマム級4位の優大は、「いかにぶっ倒すかを見ていてください」と話してリングに上がった。
日本ミニマム級新チャンピオンとなった優大は、数日前のファイトを振り返りながら語った。
「控え室で小口忠寛トレーナーが『円陣を組もう!』って言ってくれたんです。それで皆で声を出し、気合たっぷりの状態で花道を歩きました。試合開始前からアドレナリンが出て、メラメラしていました。
1ラウンド目の左ストレートで奪ったダウンも、狙っていたわけではなく、流れでです。感触はそれほど無かったんですよ。ただ、あまり力まずに出せて、クリーンヒットしましたね。目の前の相手に集中できたからかな。とにかく、アグレッシブに行こうと考えました。1~3回は荒くなってもいいから、スタミナを考えずにガンガン攻めまくろうと。
7月の熊本での試合は左膝を痛めていて、あまり走り込めなかったんです。実は、減量にも影響してしまいました。でも、今回は毎日10km走り込んでいましたから、やってきたことに自信がありましたね。スタミナも10ラウンドなら余裕だな、中盤にKO出来ると思っていました。
4ラウンド以降は、相手の戦いぶりに自分の体が反応するだろうと、一瞬一瞬の閃きを大事にするつもりでした。昨年11月の後楽園ホールでの一戦は、相手のセコンドの声が気になって集中力を欠いたのですが、今回は精神的に落ち着いて動けましたね。
試合の序盤は、相手との距離が若干遠いと感じたんです。まぁ、それも予想通りだったんですけれど…。その後、直ぐに自分の強打が当たる距離感で戦えました。
ハートが本当に燃えていましたから、あまり試合を長引せたくないな、とは思っていましたが1ラウンドで仕留めようとも考えませんでした。自分のパンチで倒せると分かったので、気が楽でしたよ。そのうち終わらせられるな、と。
2回はもっと細かく散らして、パンチに強弱をつければ良かったかなという反省もありますね。でも、手数は出ていたし、エンジンが掛かっていたので。今後、もっとレベルの高い、駆け引きをしてくる相手には、1回の攻防を忘れて新しいラウンドは再スタートと考えなきゃいけませんね(笑)。
第3ラウンドも特に何も考えていませんでした。ただ、何度もフルスイングして、お客さんの反応を感じながらやりました。右フックで試合を決めましたが、1~2回に当ててなかったので、『右フックも気持ち良く、もっと握った拳でバチンと当てたいな』という感じでした。最後の一発は思い通りでしたね。
今回の試合は楽しかったです。しっかり走り込んだ分、下半身の強化が出来、それがリングで生きました。僕はあまり考え過ぎずに、体が勝手に反応する。リアクションで戦えるボクシングを目指しています。それに楽しさを感じますから。
敢えて言うなら、ジャーボンテイ・デービスみたいなスタイルを極めたいです。ああいう多彩な攻撃に憧れますし、ファンも湧きますよね。デービスのボクシングは、練習でも取り入れたいです」
優大は戦績を6戦全勝4KOとした。一足先にプロ入りした2つ年下の弟、銀次朗は来年1月6日にIBF同級タイトルに挑む。実際に兄弟で殴り合うことはないが、ライバルとして切磋琢磨する関係だ。
「僕も弟も、お互いを頼りにしています。ピンチとまではいかなくても、リング上で自分以外の意見が欲しい時に、的確な声を掛け合えるんですよ。1月6日も弟にそういう局面があったら、僕もコーナーから言葉を掛けたいですね」
リングサイドで優大を見詰めた渡辺均・ワタナベジム会長も言った。
「十分、能力の高さを見せてくれました。課題と言えば、1ラウンドのダウン後に力み過ぎた点でしょうか。これからより強い選手と対戦するわけですから、もっとコンパクトにまとめる術、理詰めのボクシングも必要になるでしょう。交渉次第ですが、2023年中に優大にも世界タイトル挑戦のチャンスを作ってやりたいです」
重岡優大と銀次朗。兄弟で世界チャンプを目指す彼らに注目だ。