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最速記録更新のNumber_i新曲「BON」は、ファンの力で世界に拡がるか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:Number_i公式SNS)

Number_iの新曲「BON」がリリースされ、YouTubeのMVが公開からなんと1日半で1000万再生を突破し、日本人の男性アーティストの最速記録を更新するなど、大きな注目を集めています。

「BON」のMVはタイトルの言葉に絡め、盆栽に盆踊りなど、日本の風物詩をベースにしつつ、激しいラップやダンスとお笑い、シュールなパートを複雑に組み合わせた意欲作になっています。

この記事執筆時点で、MVの再生数は1400万回を突破しており、5月27日のYouTubeの日本の1位はもちろん、グローバルでも2位を獲得するなど、さまざまなチャートに入ってきているようです。

もちろん、Number_iといえばデビュー曲の「GOAT」がいきなりYouTubeのグローバルの1位を獲得するなど、デビュー前からたくさんのファンがいることでもお馴染みのグループですので、そういう意味では今回の記録更新もある意味では既定路線ということはできるかもしれません。

参考:デビュー曲がいきなりYouTubeで世界1位。「Number_i」と「TOBE」の無限の可能性。

ただ、今回の新曲「BON」がデビュー曲の「GOAT」と違うのは、Number_iのファンコミュニティの活動が、明らかに世界を意識したものにシフトしている印象がある点です。

公式の発信も英語優先

Number_iといえば、元々メンバーの3人が海外志向の高さから前の事務所を退所した経緯もあり、SNSのアカウントも基本的に日本語ではなく英語表記を優先するなど明確に海外進出を意識した活動をしていることでも有名です。

今回の新曲「BON」においても、MVの翻訳字幕はなんと10カ国語に対応するという念の入れようという点も、大きく話題になりました。

参考:Number_i、平野紫耀プロデュース曲「BON」MV公開 10ヶ国語の翻訳字幕に対応

また、Number_iが所属する事務所であるTOBEが、Number_iがデビューする前の昨年9月の段階で、ファンがSNSを活用した応援がしやすいようにSNSガイドラインを策定したことも、アーティストの活動をSNSを通じて海外のファンに広げやすくする取り組みの一つとして象徴的だったと言えます。

参考:TOBE SNSガイドライン

さらにSpotifyと連携して海外の屋外広告も積極的に展開しているのも、Number_iならではの取り組みと言えるでしょう。

そうしたNumber_iやTOBE側の姿勢を受けて、Number_iのファンの活動は明らかにこの半年間の間にも、Number_iの海外展開を後押しするスタイルに進化しているのです。

チャートへの貢献を意識するアプリ活用

ファンによる海外進出支援を意識した象徴的な活動の一つと言えるのが、Stationheadというアプリを使った「推し活」でしょう。

Stationheadはいわゆる音楽配信アプリなのですが、SpotifyやApple Musicなどの有料プランを契約していないと音楽を聴くことができないという制限がある一方で、その音楽配信に参加している人たちの音楽視聴が、それぞれの音楽配信サービスでの再生数としてカウントされるという特徴を持っています。

(出典:Stationhead公式サイト)
(出典:Stationhead公式サイト)

通常のライブ配信サービスで音楽を配信すると、そこに1000人集まっても1万人集まっても、ビルボードのチャートなどへの影響はありません。

しかし、Stationheadであれば、1000人集まって同時に一つの曲を聴けば、1000人分の再生数がカウントされ、チャートへの好影響も期待できるという仕組みになっているわけです。

日本ではSpotifyやApple Musicの有料ユーザーが世界的に見るとまだ少ないこともあり、それほど大きな流行にはなっていません。

ただNumber_iのファンコミュニティでは、海外のファンを増やすためにSpotifyなどの配信サービスでのランキングが重要であることをファン側が理解し、早期からこのアプリを活用したリスニングパーティーを開催しはじめているのです。

特に、Number_iのコーチェラ出演後には共演したJackson wangさんのファンコミュニティと共同でリスニングパーティーを開催する流れも生まれているのが非常に印象的でした。

(出典:Jackson wang Global公式X)
(出典:Jackson wang Global公式X)

参考:Number_iとAwichのコーチェラ出演に学ぶ、日本の音楽の世界への広げ方

この企画は、有志の企画にもかかわらず4000人を超える参加者が集まっていたようです。

こうしたファン側のStationhead活用の動きにNumber_i公式側も刺激を受けたようで、5月28日にはNumber_iのメンバーが参加する公式のリスニングパーティーを開催する流れまで生まれているのです。

参考:Mini Album「No.O -ring-」リスニングパーティー開催決定!

海外のYouTuberなどにも積極的にコメント

また、日本のアーティストの楽曲が海外に聞いてもらうきっかけの一つとなると考えられている、いわゆるリアクション系YouTuberの動画も積極的に見て回り、お礼のコメントやNumber_iの詳細を説明するコメントなどをつけているファンも増えているようです。

もちろん、リアクション動画が増えるのは、元々の楽曲のMVが素晴らしいことが最低条件ですが、YouTuber側からすれば、多くのコメントや反応がある方がまた次の紹介をするモチベーションにつながるのは当然です。

これまでのファンのこうした地道な活動が、今回のBON公開後の多数のリアクション動画の発生に貢献しているようです。

当然、Number_iのファンのこうした一連の活動は、間違いなく海外にNumber_iを応援するファンを増やすことに貢献しています。

前述のJackson wangさんのファンコミュニティも、今回のNumber_iの新曲のリリースを受けて、Number_iの「BON」もJackson wangさんの楽曲と一緒に聞こうと呼びかけているのが印象的です。

BTSの韓国外での人気が、BTSのファンであるARMYの様々な応援や支援によって拡がったのは有名な話ですが、Number_iのファンもARMY同様に、Number_iの海外進出を支えるエネルギーになっているのは間違いないでしょう。

デビューから半年足らずでの快挙

現在のYouTubeチャートのランキングを見る限り、「BON」のMVの1400万を超える再生数の中心は日本のようですが、すでに海外のiTunes HIPHOP アルバムランキングに多数ランクインするなど、着実に海外のファンの拡がりは生まれているようです。

なにしろ「BON」はまだリリースされてからたったの3日目ですし、Number_iの活動も驚くことにまだデビューから半年も経っていません。

これからNumber_iとファンの方々の活動が、どこまで海外に拡がりを見せていくのか、楽しみに注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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