【向い風と追い風がランニングのペースに与える影響は?】新しいサイトの「風の計算機」で検証してみた
レースの中で目標を達成するためにペースを計算しても、その通りにいくとは限りません。混雑やアップダウンや風の影響で、その都度設定ペースを再考することが必要になります。とくに風は、スタートからゴールまでペースに大きく影響してきます。ではその風は、どの程度ペースに影響するのでしょうか。「RunningWriting」という海外のサイトに「Wind-Calculator(風の計算機)」という風の影響を調べるページができたので、調べてみましょう。
Wind-Calculatorの使い方
ここではいくつかの文献や計算を元に、無風の中走るランニング強度と同じランニング強度で、指定の風の中で走ったらどんな速さになるかを計算できます。詳細は同サイト内の作者John Davisさんの記事を参照ください。海外のサイトなので、紛らわしい単位もあるので注意が必要ですが、ありがたい事に我々がよく使う走行速度のキロ何分「/km」、風速何メートル「m/s」、体重何キロ「kg」という単位もあります。これを含めた「走行速度」「風速」「風の方角」「走行環境」「体重」の5項目を入れると、風の中での速度が算出されます。
上の写真はキロ4分で走る体重60kgのランナーが、田舎や公園といった環境で向い風5mの中走行したら?を計算しています。結果、キロ4分20秒となると算出されています。
風の計算機で様々なスピードのランナーが、風向きや風速によってどう速度が変わるのかを算出すると・・・
実験的に、強風注意報が発動される風速10m以下の環境でランニングした時の速度の変化をみてみましょう。体重は60kgで、環境は田舎や公園と設定しています。すると、風の影響とランニング速度は直線状ではなく、ゆるやかにS字状になることが分かります。要は風速0mと1mはそんなに影響ないけど、9mと10mはメチャメチャ大きいということです。そしてゆっくりのランナーの方が影響を受けやすいことも分かります。
実際のレースで多い風速0-4mで調べると
とはいえ実際のレースでは、風速2-3m程度が多いと思います。ここではキロ6分のランナーで体重は60kg、環境は田舎や公園と設定して、向い風4mから追い風4mの速度の変化をみてみます。もちろん無風の時に比べ、向い風の方がタイムが遅くなり、追い風の方がタイムが速くなります。ですが向い風4mでは27秒遅いキロ6分27秒で、追い風4mでは9秒速いキロ5分51秒でした。
同じ強さの風のとき、追い風の恩恵よりも、向い風の損害の方が大きいわけです。
実際のタイムで調べてみると
では先ほど調べた体重60kgのキロ6分のランナーが、無風のキロ6分と同じランニング強度で風速0~4mの環境のもと、風上に向かって1km+風下に向かって1km走ったタイムを調べてみます。計算の結果は風速0mでは12分、風速1mでは12分1秒、風速2mでは12分4秒、風速3mでは12分11秒、風速4mでは12分18秒となりました。
このように強い風の中でのレースは、向い風のタイムロスを追い風で取り戻す!というのはなかなか困難なのです。もともと余裕をもったペース設定というのでなければ、無理せず下方修正するのが妥当ということになります。
では実際に、風はここまで影響が強いのか?
とはいえ今まで書いてきたのは、計算上の数字です。実際のレースでは向い風のときは前傾を強めたり、上体を斜めにツイストしたり、他のランナーの背後についたりランナーも工夫をします。また追い風のときは上体を起こしたり、ストライドを伸ばしたり効果的に風を使います。
自分の場合は実際のレースで、向い風の損害は、追い風の恩恵の1.5倍程度とペースの計算をしています。またMarathonHandbookの中でMia Kercherさんは、向い風の損害は追い風の恩恵の2倍程度と書いています。いずれにしても風の中を走るときは、計算上の損益ほどは被ることがないように体はある程度は順応するし、技術も磨くことが大事なのです。