特別警報が解除されても安全ではない
九州北部の大雨
九州北部を中心に西日本では、活発な梅雨前線により大雨となっています。
福岡県朝倉では1時間降水量が129.5ミリ、24時間降水量が545.5ミリと、アメダスが観測を始めた昭和51年以降の記録であった74.5ミリ、293.0ミリをともに大幅に更新しました。
また、大分県日田でも24時間降水量が359.0ミリと、昭和51年以降の記録であった309.5ミリを更新しました。
このため、福岡県と大分県に大雨特別警報が発表されたわけですが、7月6日14時10分にともに解除となり、大雨警報となっています。
特別警報解除でも危険
特別警報導入時からの懸念は、特別警報解除で住民に安心感を与えてしまうのではないかということでした。
警報は、重大な災害がおきるときに発表されます。
特別警報という非常事態が終わったあとに発表される警報についても同じです。
しかし、特別警報解除と聞くと安心感を持ってしまうのではないかという懸念です。
今回の大雨も、7月6日14時10分に大雨特別警報解除といっても、大雨警報が発表されており、重大な災害がおきるという危険な状態が続いていることには変わりがありせん(図1)。
大雨が降った時の災害リスク
大雨が降ると、浸水害、土砂災害、洪水害という、3つの災害リスクが高まります。
このため、気象庁では、雨が地中に浸みこまず、地表面に貯まる量である「表面雨量指数」を用いて、「大雨警報(浸水害)」で警戒を呼びかけています。
また、雨が地中に浸み込み、地中に貯まる量である「土壌雨量指数」を用いて、「大雨警報(土砂災害)」で警戒を呼びかけています。
さらに、河川を流れ下る量である「流域雨量指数」を用いて「洪水警報」で警戒を呼びかけています。
強い雨が降らなくなれば、浸水害のリスク、洪水害のリスクはしばらくしてなくなります。
しかし、土砂災害のリスクは、強い雨が降らなくなっても、しばらく続きます。
大雨特別警報が解除となった7月6日14時10分の大雨警報等でも、土砂災害のリスクは、少なくとも、明日の15時までは警報級が継続します。これに対し、浸水害、洪水害については18時まで、しかも注意報級です(図1)。
強い雨が止んだが
九州北部の大雨は止み、大雨特別解除されたからといっても、「大雨警報(土砂災害)」が発生するリスクが高い状態は続いています。
現在、対馬海峡付近に活発な雨雲の塊があり、それが東進してきますので、九州北部は今夜から再び大雨が降る可能性があります(図2)。このため、再び、浸水害と洪水害のリスクも高まる懸念があります。
また、九州南部でも浸水害、土砂災害、洪水害という、3つの災害リスクが高まることが懸念されます。
加えて、台湾の東海上に熱帯低気圧があり、北上しています(図3)。この熱帯低気圧は消滅する予報ですが、熱帯から暖湿気流を持ち込んでいますので、明日以降も、梅雨前線を刺激して広い範囲で大雨となる可能性もあります。
大雨特別警報が解除されたといっても、重大な災害のおそれがあるときに発表される大雨警報が発表中です。今夜以降も、最大級の警戒が必要です。避難指示や避難勧告が発表されたら速やかに避難ですが、その避難は、安全な場所に安全にゆくことです(表)。移動自体が危険な場合は、家の中で、少しでも安全な場所に移動することも含みます。
図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。
表の出典:饒村曜(2015年)、特別警報と自然災害がわかる本、オーム社。