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勝利の末の敗北 手倉森ジャパンの終焉に思うサポーターの存在意義

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
青いゴミ袋でスタンドをジャパンブルーに染めて応援するサポーターたち

後半20分の矢島のゴールでスウェーデン相手に先制した日本代表は、危なげない試合運びで1-0のまま終了のホイッスルを迎えた。日本代表の今大会初勝利に、スタジアム全体が祝福の拍手に包まれた。

「裏の試合はどうなった――」

他会場の経過は敢えて把握せず、90分間応援に集中していた日本人サポーターが陣取るエリアは、選手とベンチの様子を固唾を飲んで見守っていた。

同時刻にキックオフされたコロンビア対ナイジェリアの試合で、コロンビアが引分け以下の結果に終われば日本の決勝トーナメント進出が決まり、逆にコロンビアが勝てば日本のグループステージ敗退が決まる状況だった。

その後、スマホで速報をチェックした仲間から「コロンビア2-0ナイジェリア」という情報がもたらされ、勝利の余韻がかき消される。

選手たちもグループステージ敗退という結果を知り、日本人が多くいるスタンドにうつむきながら最後の挨拶に来た。

ほとんどのサポーターが茫然自失の状態で言葉を失いつつも、気持ちを切り替えて「よくやった!」「胸を張れ!」と戦いぶりを称える声が飛び、最後は「ニッポンコール」で選手たちを見送った。

いまだに消化し切れない結果

試合後に最後の挨拶に来た日本代表を迎えるサポーター
試合後に最後の挨拶に来た日本代表を迎えるサポーター

試合から24時間以上経った今でも僕は、この「勝利の末の敗北」という結果を消化し切れずにいる。

ほとんどの場合、試合に負けて大会から敗れ去る。試合に勝利したのに、勝ち上がれずに大会から去るというのは、僕の長年の日本代表サポーター歴で初の経験だ。

仮にB組2位通過で勝ち上がっていた場合、準々決勝でA組1位通過のホスト国ブラジルと対戦できた。

サッカー王国ブラジルと、親善試合ではなくタイトルがかかった国際大会で、完全アウェイの中真剣勝負ができるなんて、一生に一度の経験だったはずだ。サッカーに「たられば」は禁物だが、失ったものの大きさを考えると、本当にやり切れない。

しかし、手倉森ジャパンの最後の試合を勝利で飾れたのは、サポーターとして誇っていいと思う。

スウェーデン相手にリードして迎えた後半ロスタイム、「バモニッポン」コールの手拍子をゆっくり行う応援では、スタジアム全体が呼応して手拍子が巻き起こり、日本の勝利のカウントダウンの様相を呈していた。まさに会場にいる全てのブラジル人を日本の応援に巻き込んだ瞬間だった。

共にブラジルで戦えたことを誇りに思う

サルヴァドールのスタジアムに向かう道に掲げられたブラジル国旗
サルヴァドールのスタジアムに向かう道に掲げられたブラジル国旗

出国前に知り合いから「そんな期待できない世代なのに、よくまあ現地に行くよね」と皮肉交じりに言われたことがある。

当然、勝利を願って現地入りしているが、僕らサポーターは何も勝利至上主義者ではない。

逆に結果が出なかった時こそ、うつむいた選手たちをスタンドから鼓舞することにサポーターの存在意義があるのだと僕は思う。

そういう意味で、手倉森ジャパンの最後となった試合を、90分間声を枯らして選手たちと共に現地で戦えたことを僕は誇りに思う。

ブラジルまで僕らサポーターを連れてきてくれてありがとう。次はフル代表の戦いの場で会えることを願って――。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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