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経団連VSママの会ー武器輸出に申し入れ、問われる説明責任

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
経団連に武器輸出反対の申し入れをしたママの会

「戦争の道具、つくらないで」―先週14日、母親たち約40人が、日本経済団体連合会(経団連)を訪れ、武器輸出を「国家戦略として推進すべきだ」などとする提言の撤回を求めた。これに対し、経団連側は母親達の要請文の受け取りすら拒否。国家の支援の下、武器ビジネスを展開していこうという一方で、有権者・納税者を軽んじる姿勢が露わとなった。

今回、経団連を訪れたのは、「安保関連法に反対するママの会」のメンバーたち。同会は、昨年7月、たった一人の母親が「安保法制に反対しようという」と声をあげたことに、各地の母親達がこれに賛同。現在では47都道府県に広がる全国的なネットワークに成長している。14日、同会の各都道府県の支部の集まりに合わせ、戦争の原因となる武器ビジネスに反対する、具体的な行動を起こしたのだという。

〇だれの子どもも、ころさせない

経団連は、昨年9月、「防衛産業政策の実行に向けた提言」をまとめている。同提言では、政府に「適正な予算確保」「装備品の調達や生産」「輸出の促進」を求める等、安保法制の成立や防衛装備庁の発足に伴い、武器輸出を「国家戦略として推進すべきだ」との方針を打ち出した。こうした経団連の方針に対し、ママの会は今回持参した要請文の中で、以下のように批判。撤回を求めている。

(経団連は日本のあり方として)ロシアやアメリカ、中国、フランスのような武器輸出大国を目指すのだと受け取りました。これらの武器輸出大国ではテロが相次いで発生しており、武器輸出が結果的に国を不安定化させています。儲けるために、労働者を不安定な雇用状態に置き、安い労働力とみなし、尊厳を奪う。儲けるために、殺人兵器を作り、輸出する。兵器の消費のため、あちこちに紛争を仕掛け、たくさんの国から恨みを買う。「だれの子どもも、ころさせない」、この合言葉を心に刻んだ私たちは、そういう発想を全く受け入れることはできません。

出典:「安保関連法に反対するママの会」の経団連への要請文より。()内は筆者注

〇傲慢な経団連

今回の申し入れについて、ママの会は事前に幾度も経団連に連絡していたにもかかわらず、経団連は要請文を受け取ることすら拒否した。後日、筆者は「なぜ受け取りすら拒否したのか」と経団連の広報部に電話取材したところ、受け取り拒否には触れず、「あらためて郵送してほしいとは伝えた」というだけ。「郵送するにしても、宛先は経団連。14日に受け取っても同じだったではないか?」と問いただしても、結局、具体的な説明もすることもなく、一方的に電話を切ってしまった。

〇税金使って武器輸出支援

安倍政権は、防衛装備庁を通じ、武器輸出する日本企業へ税金を使って支援するとしている。既に、米国の最新鋭戦闘機F-35の機体やエンジン、レーダーの国内組み立て拠点のため、三菱重工やIHI、三菱電機に約1480億円の設備投資費を支払うことが決まっている。また、市民団体「武器輸出反対ネットワーク」と防衛装備庁とのやり取りで判明したことによれば、このF-35組み立て拠点は、今後、日本が自衛隊の装備として購入する分にとどまらず、他国向けの部品製造にも使われる可能性があるのだという。経団連の対応について、ママの会発起人の西郷南海子さんは「問題の提言にも、産業界の取り組みとして”国民の理解を促進する”と書いてあります」と指摘。経団連も、税金を使って、武器ビジネスをしようというならば、有権者・納税者に対する説明はきちんとしていくべきだろう。

F-35戦闘機はパレスチナへの攻撃をくり返すイスラエル軍も導入予定

〇ママたちをバカすると手痛いしっぺ返しも?

申し入れと同日に行われた記者会見で、西郷さんは、「ママの会としてまた経団連に行きます」と決意をあらたにしていた。また、会見では、5月5日から8日を「だれの子どももころさせないWEEK」として、安保法制反対アクションを各地で行うと発表。5日には13時30分から新宿駅西口で「ママの会@新宿ジャック」としてアピールするという。

これから武器を売ろうとする日本の大企業の多くは、あつかう商品の割合としては、むしろ民生品の方がほとんどだ。だから、「死の商人」というイメージは、企業にとっても大きなマイナスだろう。特に家電製品を扱う企業は、ママたちを敵に回せば、手痛いしっぺ返しを食らうのかもしれない。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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