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大商大との交流試合は4安打1得点での辛勝《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
試合終了でベンチに戻る選手たち。この日はキャッチャー以外、みんなフル出場でした。

 きのう15日、2019年のウエスタン・リーグが開幕しました。ナゴヤ球場の中日-オリックス戦では、開門前から長蛇の列ができ入場制限も検討される盛況だったとか。ドラフト1位ルーキーの根尾昂選手が先発出場とあって1616人のお客様が来られたそうです。中日の次カードは鳴尾浜での阪神戦。ほどほどの賑わい程度であるよう祈ります。

 その中日3連戦が、阪神ファームにとって今季初の公式戦です。19日は秋山拓巳投手が先発して、ここで1軍の開幕ローテを確実に!という記事も出ていましたね。オープン戦がまだ続いているので、投手は1軍とファームのどちらかで投げて開幕を目指します。野手陣もしかり。とはいえ、そろそろ振り分けがぼんやりと見えてくる時期ですよねえ。アピール合戦のゆくえは?

 さてファーム公式戦の始まる前に、きのう15日は大阪商業大学を鳴尾浜に迎えて交流試合が行われました。メッセンジャー投手が梅野隆太郎選手と組んで先発し、6回2安打無失点と上々の仕上がりを披露。ついで高橋聡文投手、高橋遥人投手が抑え、4安打の完封リレーでした。

試合が終わってスタンドに一礼する大商大の選手たち。
試合が終わってスタンドに一礼する大商大の選手たち。

 しかし打線は、今秋のドラフト候補である大商大・大西広樹投手(右)の前に島田海吏選手が内野安打2本を放っただけ。5回1死から板山祐太郎選手が右飛を打ち上げるまで、外野へ飛んだ打球は1つもありません。2人目の橋本侑樹投手(左)から8回に江越大賀選手がソロホームランを打って、これで1対0の勝利。こちらも4安打です。ただし阪神は計9四球を選びながら、2度の満塁機を生かせなかったのが悔やまれますね。

《交流試合》3月15日

 阪神- 大阪商業大学 (鳴尾浜) 

 大商 000 000 000 = 0

 阪神 000 000 01X = 1

  

◆バッテリー

【阪神】メッセンジャー-高橋聡-高橋遥 / 梅野-長坂(7回~)

【大商】大西(5回)-橋本(3回) / 岡澤

◆本塁打 神:江越ソロ(橋本)

◆盗塁 神:江越、伊藤隼、島田

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]指:江越  (3-1-1 / 1-1 / 1 / 0)

2]遊:北條  (2-0-0 / 1-2 / 0 / 0)

3]右:伊藤隼 (2-1-0 / 0-2 / 1 / 0)

4]三:陽川  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

5]中:中谷  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

6]一:板山  (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]左:島田  (2-2-0 / 0-1 / 1 / 0)

8]捕:梅野  (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃捕:長坂  (0-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

9]二:植田  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

先発のメッセンジャー投手。6回を無失点で投げ終え、笑顔で戻ってきます。
先発のメッセンジャー投手。6回を無失点で投げ終え、笑顔で戻ってきます。

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

メッセ 6回 66球 (2-5-0 / 0-0) 143

高橋聡 1回 30球 (1-2-1 / 0-0) 144

高橋遥 2回 25球 (1-1-0 / 0-0) 148

 ※最速はチームのスピードガンで計測したもの。

<試合経過>※敬称略

島田選手は内野安打2本と四球で全部出塁。果敢に盗塁も試みました。
島田選手は内野安打2本と四球で全部出塁。果敢に盗塁も試みました。

 まず攻撃。大商大・大西に対して1回は連続三振のあと伊藤隼が四球を選んで盗塁しますが、陽川は投ゴロで0点。2回も2死から島田がセカンド内野安打、ここは二盗を阻止され3人で終了。3回は1死から植田が四球、江越の三ゴロで走者が入れ代わり、江越は盗塁成功。しかし直後に牽制で刺されて、また3人で終わっています。

5回、板山選手の右飛が初めて外野に飛んだ打球でした。
5回、板山選手の右飛が初めて外野に飛んだ打球でした。
6回にようやく内野安打ではないヒットが。伊藤隼選手の右前打です。
6回にようやく内野安打ではないヒットが。伊藤隼選手の右前打です。

 4回は三者凡退。5回は2死後にまたしても島田が、今度はサードへの内野安打で出て二盗成功!送球が逸れる間に三塁へ進みましたが、梅野は二飛で得点ならず。6回に登板した橋本から、江越と北條が連続四球を選び、伊藤隼が右前打(ようやく内野安打以外のヒット!)して1死満塁のチャンス。ところが陽川の三ゴロで本塁封殺、中谷は右飛で3者残塁。

 7回は島田が四球を選び、暴投で二塁へ。長坂も四球で1死一、二塁となったのですが、植田の打席で島田がピッチャーからの送球により三塁で刺され、その間に二塁を狙った長坂もタッチアウト…。3人で片づけられてしまいました。

 しかし8回1死、江越がボールスリーからの4球目(137キロ)をレフトへ!打球を追うレフトの動きではよくわからず、どうやらネットに当たったらしいと気づいた時、江越はもうホームベース手前。これでようやく先制し、そこから北條と伊藤隼が四球、2死後に中谷も四球で満塁と攻めますが、板山は二ゴロ。また3者残塁で1点止まりです。

高橋聡投手は7回に登板。1死一、三塁としますが後続を断ちました。
高橋聡投手は7回に登板。1死一、三塁としますが後続を断ちました。

 次に投手陣。先発のメッセンジャーは3回まで4奪三振のパーフェクトピッチング。4回は先頭の1番・湯口にバントヒット(サード内野安打)を許したものの、後続を断って無失点。ただし4番の小野寺には11球粘られた末の遊ゴロ。ベンチへ戻るメッセンジャーは苦笑いでした。5回は三者凡退、6回は1死から9番・中林に中前打されますが、最後は初球で遊ゴロ併殺打。

8回と9回は高橋遥投手が1安打無失点で試合終了です。
8回と9回は高橋遥投手が1安打無失点で試合終了です。

 7回は高橋聡と長坂のバッテリーに代わり、先頭から見逃し三振を奪ったあと3番・川中に四球、小野寺に右前打されて一、三塁とするも、三振と中飛でピンチ脱出。8回からは高橋遥が登板して、8回は三者凡退。1点先制してもらった直後の9回は先頭の湯口に左前打(ショート、レフト、センターの間にポトリ)を許しましたが、続く工のバントで5-6-3の併殺打!そして最後は見逃し三振、1点を守り切って試合終了です。

「復帰後で一番悪かった」と高橋遥投手

 試合後の話をご紹介しましょう。最初は高橋遥投手です。登板を振り返って「きょうはバラバラだった。復帰してから一番悪かったかなと思っています。ボール先行だったんでリズムが悪かったし、ムダ球も多かった。しっかり反省して、次また投げられれば」とコメント。

「きょうは悪かった」と高橋遥投手。三者凡退に切って取った8回も、この表情です。
「きょうは悪かった」と高橋遥投手。三者凡退に切って取った8回も、この表情です。

 今季初の2イニングには「何球投げました?25球ですか。そうですねえ。ほんと悪かったので…」と苦い表情で言い、それから「イニングを投げられたことはよかったんですけど、ムダ球が多かったし、変化球でストライクが入らなかったし。2イニングを投げたことだけよかったです、きょうは」と続けています。

試合終了で長坂捕手(右)と握手する時も、こんな感じでしたね。
試合終了で長坂捕手(右)と握手する時も、こんな感じでしたね。

 真っすぐは?「コースも全部、甘かった。ヒットになってもおかしくないボールだったので、運がよかったなと思います」。次に向けての取り組みは?「とにかく真っすぐもそうですし、1つ1つの変化球でしっかりカウントが取れなきゃピッチングにならない。1つ1つの変化球の精度を上げていけるように。もう一回フォームとか見直してというか、安定できるようにやっていきたいです。キャッチボールから」

 平田勝男監督は「きょうは悪い方だと思う。スライダーのコントロールもよくなかった。久しぶりに“よくない遥人”を見たけど、イニングを増やして暖かくなれば球のキレも出てくる。キャンプから計画通りに来ている。これからはスタミナと、実戦での駆け引きをどんどんやっていく」とのことでした。

試合を決めた江越選手の2戦連続弾

 0対0のまま進んだ試合で、終盤の8回にソロホームランを放った江越選手。13日のファーム教育リーグ・広島戦(由宇)でも打っており、2戦連発ということになりますね。この時は3回に初球を左中間へ放り込んだとか。昨年、8本も放った先頭打者ホームランのうち2本が初球打ちだったことを思い出しました。

ホームランの江越選手はベンチでハイタッチ。
ホームランの江越選手はベンチでハイタッチ。
締めはやっぱりゴリラポーズです。
締めはやっぱりゴリラポーズです。

 平田監督が「スリーボールから、ホームランにできるボールを一発で仕留めるのは大したもんや」と評価した今回の決勝アーチ。本人は「今、タイミングを意識しているので、力まずに打てたと思う。一発というよりは、とにかく出塁しようという気持ちで。力を入れずにタイミングだけ意識し、無駄なことを考えず打席に入るようにしている」と振り返っています。

 キャンプからやってきたことは?「変えていません。試合をしていく中で力みだったり、ちょっとした感覚が変わってきているところを修正しながらできているかな。その、ちょっとした修正が、調子が悪くなった時の“引き出し”になる。それができるのも今だけなので」。そう話しています。とにかくエグい、江越選手のホームラン打球を1軍の試合で数多く見たいですね。

島田選手、根拠を見つけて走れた収穫

 最後は島田選手で、2本の内野安打ではなく、7回の盗塁死について聞きました。「タイミングを計っていて、自分の中で“根拠”を見つけてスタートを切ったんですけど、その球だけ長く持たれて失敗した。場面と点差(この時点では0対0)を考えたら、100%成功しないといけないところだった。そこは反省しないといけないと思います」

5回に内野安打で出て、二盗成功&相手エラーで三塁へ進んだ島田選手(左)。
5回に内野安打で出て、二盗成功&相手エラーで三塁へ進んだ島田選手(左)。
これは7回。三盗失敗でベンチへ戻る島田選手と、右奥は二塁でアウトになった長坂選手。
これは7回。三盗失敗でベンチへ戻る島田選手と、右奥は二塁でアウトになった長坂選手。

 根拠とは「成功するのに必要な理由です。たとえば首を振るタイミングなどでピッチャーの癖がわかるとか、変化球のサインがわかるとか」だと島田選手は説明してくれました。「反省するところは反省するとして、きょうは自分でしっかり2つの根拠を見つけて走れたので、そこはよかったと思う。収穫です」

 そして「二盗を2つ試みて1つアウトになりましたが、スタートは悪くない。精度は上がってきています。でも1軍でやるとなれば、もっとシビアに考えていかないと」と言っていました。そのためにも「今はどんどんチャレンジすること。ただ走るのではなく、根拠を見つけていきたい」と。

 昨年、阪神のファームがウエスタン・リーグ新となる163盗塁を記録したのは前半に熊谷敬宥選手が、後半に島田選手がチームを引っ張ったおかげと言ってもいいでしょう。年々、走れる選手が増えてきました。1軍もファームも“超積極的”な走塁を楽しみにしたいですね。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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