ラニーニャ現象発生か 日米で異なる予想
気象庁は9日(金)、「ラニーニャ現象が発生しているとみられる」と発表しました。ラニーニャの発生は5年ぶりのことで、同庁によると、「今年の秋は、残暑が厳しい状態が続く可能性がある」としています。
ラニーニャとは何か
ラニーニャとは、南米・ペルー沖の赤道付近の海水温が、平年よりも低くなる現象のことです。具体的には「海面水温が基準値よりも0.5度以上低い状態が6か月以上持続した場合」と定義されています。
今回の場合、まだ水温が低い状態が半年に達していませんが、今後もその傾向が続く見込みであることや、速報性を重視して公表したようです。
ラニーニャのメカニズム
なぜ海面水温が下がるのか、その原因は、風の変化が一因だと考えられています。
何らかの原因で風が強くなって、海の表面の水が流されてしまうと、海の下から冷たい水が沸き上がってきます。そして海面水温が低くなった状態が、ラニーニャ現象です。
海中には、プランクトンをたっぷり含んだ水が含まれているので、この部分の水が上に沸き上がると、栄養分も表層に上昇してくるわけです。そのおかげで、ラニーニャが起こると、アンチョビなどの魚が増え、そしてそれを狙う海鳥も集まってきます。
余談ですが、こうして集まってきた鳥が落とした糞などが、「グアノ」という名で高級飼料としてもてはやされた時代がありましたが、その昔、それを巡って沿岸諸国で戦争が起きたことがあります。
ラニーニャが起こす世界の天候変化
こうした海水温の変化が大気に影響して、世界的に極端な天気をもたらすことがあります。
ラニーニャが起こると、日本の場合は、暑い夏・寒い冬になりやすいといわれています。また、台風が例年よりも、日本に近い海域で発生する傾向もあるようです。
一方世界では、東南アジアで多雨、インドで冷夏、ペルーやチリで干ばつ、大西洋のハリケーン増加、一方、東太平洋で減少…などといった天候になりやすいことも知られています。
ただ、こうした天候の変化は、ラニーニャの規模にもよりますし、また毎回起きるわけではなく、近年その対応関係が崩れてきていると指摘する研究もあります。
日米で異なるラニーニャ予想
ところで、今回起きているラニーニャ現象に関して、世界では違った予想がされているようです。
気象庁は「今冬までラニーニャ現象が続く」と予想していますが、アメリカ海洋大気庁は8日(木)、「ラニーニャの起こる可能性は低くなった」と発表しています。現在は海水温が低い状態が続いているものの、今後は上昇に転じると予想しているのです。
今後ラニーニャ現象は続くのか…。世界の海洋・気象関係者らが注意深く監視を続けています。