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リード奪ったか藤井聡太挑戦者(17)離されずついていく渡辺明棋聖(36)棋聖戦第1局は中盤の佳境

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月8日。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局▲藤井聡太七段(17歳)-△渡辺明棋聖(36歳)戦がおこなわれています。

 藤井七段は史上最年少のタイトル挑戦者です。一方で渡辺棋聖も2003年の五段当時、19歳4か月で王座戦五番勝負に登場。両対局者ともに早熟の天才です。

 藤井七段が先手で戦型は矢倉脇システム。先後同型から角交換の後、藤井七段は棒銀に出ました。対して渡辺棋聖は動きに乗じて藤井陣に角を打ち込み、成り返って馬を作ります。

 藤井七段は端、渡辺棋聖は玉頭から攻めていきます。昼食休憩の段階では、62手目まで進みました。

 将棋会館での対局ということで、昼食もいつも通り、近隣の飲食店からの出前。渡辺棋聖はふじもとのうな重。藤井七段のほそ島やのカツカレーでした。

 食事に注目する将棋ファンにとっては見慣れたメニューでしょう。

 再開後、藤井七段は銀を出て、相手の歩を取り払います。ここまでの展開は、先手の藤井七段がうまくリードを奪ったようです。

 藤井七段の駒台には7枚の歩が乗りました。損得を勘定すると、5歩得しています。歩の枚数は最初は9枚-9枚。それが5歩得となると14枚-4枚で、出入り10枚の差がつきます。歩の数だけを見れば、藤井七段が大きく差をつけました。

 渡辺棋聖は自陣に馬を引きつけてバランスを保ちます。

 藤井七段は慎重に時間を使いながら指し進めていきます。73手目、自陣四段目に角を上がった時点で、持ち時間4時間のうち、残り時間は藤井七段39分。渡辺棋聖1時間56分。

 時間では大差がつきました。観戦している藤井ファンにとっては毎度ハラハラするところでしょう。しかしこれもまた、藤井七段のいつも通りのスタイルです。

 時刻は16時半を過ぎました。形勢は藤井七段ややリードか、あるいは互角に近いか、というところ。勝負はもちろん、これからです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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