20年ぶりの代表戦を広島の新スタで開催する意義(ワールドカップ・アジア2次予選 日本5-0シリア)
6月11日にエディオンピースウイング広島(Eピース)で行われた、FIFIAワールドカップ・アジア2次予選の日本代表vsシリア代表。試合は日本がオウンゴールを含む5得点でシリアを圧倒した。さっそく、写真とともに振り返ることにしたい。
すでに最終予選進出は決まっており、シリアとの実力差も明白。この試合の一番の見どころが、Eピースだったことに異論を挟む人はいないと思う。
広島市の中心近くに今年オープンした、このサッカー専用スタジアムについては、すでに各方面で報じられているので多くを語る必要はあるまい。ここで注目したいのが、この日の公式入場者数が2万6650人だったことだ。
地方都市で代表戦が行われる場合、まず重視されるのがキャパシティ。その上で、最近は球技専用スタジアムが優先されるようになった。その代表格はパナソニックスタジアム吹田で、キャパシティは3万9694人。それに対して、Eピースは2万8500人である。
ドル箱イベントである代表戦を開催する場合、3万人がひとつの目安となっている。Eピースの建設に携わった担当者は、昨年にインタビューした際に「もちろん日本代表の試合も開催したいと考えています」とした上で、「けれども、その前に『常時満員にしていきたい』という目標が私たちにはあります」と続けた。
「常時満員」の具体的なイメージは、広島カープである。2023年の1試合平均入場者数は2万8540人。まさにEピースのキャパシティとぴったり重なる。「カープのほうがサンフレッチェよりも集客力がある」というのが、広島での常識であり、当地の人口とサッカー人気を考慮するなら、3万人以上という選択肢はあり得なかった。
かくして、年に一度あるかないかのイベントよりも「普段づかい」を優先して設計されたEピース。それだけに、今回の代表戦開催は予期せぬ朗報だったに違いない。どういう経緯で決まったのかは不明だが、目先のチケット収入ではなく「広島の新スタで開催する意義」を優先させたJFAの決断は、高く評価されてしかるべきだろう。
この日は首都圏をはじめ、県外からも多くのファンがEピースに訪れていた。また地上波で放映されたことで、街中のサッカー専用スタジアムのインパクトが全国レベルで伝わったことだろう。Eピースでの代表戦開催は、国内のスポーツインフラ建設に、今後さまざまな影響を及ぼすように思えてならない。
<この稿、了。写真はすべて筆者撮影>