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残留か、昇格か、それとも降格か? J3⇔JFLおよびJFL⇔地域リーグの入れ替え戦を整理する

宇都宮徹壱写真家・ノンフィクションライター
JFL降格が決まったいわてグルージャ盛岡と入れ替え戦に回るY.S.C.C.横浜。

 2024年のJリーグもいよいよ最終盤。J1は今日(11月30日)と来週の2節を残すのみとなった。一方、J2とJ3はレギュラーシーズンが終了。それぞれ、3位から6位のクラブによる昇格プレーオフが行われる。

 これらに加えて、シーズン終盤で忘れてならないのが、入れ替え戦。今季はJ3とJFL、そしてJFLと地域リーグの間で、それぞれ入れ替え戦が行われる。

 J3とJFLとの入れ替え戦が行われるのは、今回が初めて。一方、JFLと地域リーグの入れ替え戦はたびたび行われているが、そのレギュレーションはあまり知られていない。

 今回の入れ替え戦のカードは、Y.S.C.C.横浜(J3・19位)vs高知ユナイテッドSC(JFL2位)、そしてミネベアミツミFC(JFL16位)vsVONDS市原FC(地域CL2位)となっている。おそらくサッカーファンでも、あまり馴染みのない名前ではないだろうか。

 そこで本稿では、入れ替え戦のレギュレーションを整理しつつ、出場する4クラブ(チーム)の履歴も併せて紹介することにしたい。

■Y.S.C.C.横浜(J3・19位)vs高知ユナイテッドSC(JFL2位)

今季JFL2位となり、Y.S.C.C.横浜との入れ替え戦に挑む高知ユナイテッドSC。高知初のJクラブとなるか?
今季JFL2位となり、Y.S.C.C.横浜との入れ替え戦に挑む高知ユナイテッドSC。高知初のJクラブとなるか?

 今季のJ3は、いわてグルージャ盛岡が第13節以降、一度も浮上することなく20位(最下位)のままJFLへの自動降格が決定。YS横浜は第2節以降、2桁順位から脱することなく、3連敗が3回、4連敗が1回と苦しい試合が続く。そして第37節で19位が確定。J3から初めて入れ替え戦に臨むクラブとなった。

 J3とJFLの入れ替え戦は、昨シーズンから導入されていたが、この時はJFLの1位と2位に昇格の権利がなかったため実施されず。しかし今季は、1位の栃木シティFCと2位の高知が、いずれもJ3ライセンスを保持しており、なおかつ「平均入場者数2000人」などの条件もクリア。そのため、栃木Cの自動昇格と高知の入れ替え戦出場が決まった。

 JFL5年目となる高知は、開幕7連勝で首位を独走。地元では、J3昇格の期待が一気に高まってゆく。これに対し、今季JFLに昇格したばかりの栃木Cは、第13節から負け無しという追い上げを見せ、第24節で首位が入れ替わる。一方の高知は第22節から4連敗を喫し、不本意な足踏みを続けていたものの、第29節で2位が確定。入れ替え戦に昇格の望みを託すこととなった。

 YS横浜と高知の入れ替え戦は、第1戦が12月1日に香川県丸亀市のPikaraスタジアム(ピカスタ)にて13時から、第2戦が7日にニッパツ三ツ沢球技場にて15時から開催される。高知で試合が行われないのは、県立春野総合運動公園陸上競技場がその日、リレーマラソンが開催されるためだ(ナイトゲームも模索したが、照明の照度が足りないため断念)。

 地元開催とはならなかったものの、高知から丸亀は車で1時間半程度だし、本州在住の高知出身者もアクセスしやすいだろう。対するYS横浜は、今季のピカスタでのカマタマーレ讃岐戦に勝利しているので、こちらも悪いイメージはない。がっちり噛み合った試合が期待できそうだ。

■ミネベアミツミFC(JFL16位)vsVONDS市原FC(地域CL2位)

今年の地域CLで劇的な勝利で2位に滑り込んだVONDS市原FC。昨年の入れ替え戦の悔しさを晴らしたい。
今年の地域CLで劇的な勝利で2位に滑り込んだVONDS市原FC。昨年の入れ替え戦の悔しさを晴らしたい。

 今季のJFLは、ソニー仙台FCの退会により、16位(最下位)のチームは自動降格ではなく、入れ替え戦に回ることとなった。最終節の段階で、3チーム(クリアソン新宿、横河武蔵野FC、ミネベアミツミFC)にその可能性があったが、唯一勝ち点を得られなかったミネベアミツミの16位が確定した。

 ミネベアミツミは、2年前まで「ホンダロックSC」として活動。この名称のほうに、馴染みがあるサッカーファンは多いだろう。ホンダロックは、2007年に一度九州リーグに降格したものの、2年後にJFLに復帰後は16シーズンにわたって全国リーグを戦ってきた。ただし、その間に1桁順位だったのは、わずか5シーズン。残留争いに巻き込まれるのが常のチームであった。

 そんなミネベアミツミに挑むのが、VONDS市原FC。所属する関東リーグ1部では強豪として知られ、11シーズンで4回優勝、JFL昇格を決める地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)では決勝ラウンドに3回出場している。今大会では2試合を終えて勝ち点1にとどまったものの、3試合目で6−3という派手な打ち合いを制し、地域CL2位に滑り込むことに成功した。

 実は両者とも、過去に入れ替え戦を経験済み。市原は昨年も地域CLで2位となり、JFL15位の沖縄SVとの1発勝負に延長戦の末に敗れて昇格はならなかった。一方のミネベアミツミは、ホンダロック時代の2006年に16位となり、FC岐阜との入れ替え戦に敗れて九州リーグに降格している。

 JFLと地域リーグとの入れ替え戦は、かつてはホーム&アウェイだったが、現在はJFL側のホームでの1発勝負となっている。今回は12月1日、宮崎県総合運動公園ひなた陸上競技場にて13時にキックオフ。90分で引き分けの場合は、15分ハーフの延長戦+PK戦で決着を付けることとなる。2度目の入れ替え戦で笑うのは、果たしてどちらか? こちらも要注目だ。

<この稿、了>

写真家・ノンフィクションライター

東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。『フットボールの犬』(同)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)で2016サッカー本大賞を受賞。2016年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)を配信中。このほど新著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)を上梓。お仕事の依頼はこちら。http://www.targma.jp/tetsumaga/work/

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