二重の意味で感慨深い神戸の優勝と決勝の日程に思うこと(天皇杯決勝:ガンバ大阪0-1ヴィッセル神戸)
プロ・アマ問わず、日本サッカー界のナンバーワンを決めるトーナメント大会、天皇杯 JFA 第104回全国日本サッカー選手権大会(以下、天皇杯)。5月25日から半年かけて行われた大会は、11月23日に決勝を迎えた。
決勝の舞台となる国立競技場のピッチに立ったのは、ガンバ大阪とヴィッセル神戸。関西勢同士のファイナルは、1953年(第33回)大会の大阪クラブvs全関学以来、実に71年ぶりである。まずは試合の模様から振り返ってみたい。
神戸の天皇杯優勝は、2019年(第99回)大会以来、2回目である。鹿島アントラーズに2−0に勝利し、初タイトルを獲得。また、この試合は、国立競技場のこけら落としでもあった。当時を知る者として、今回の神戸の優勝は二重の意味で、感慨深いものであった。
まず、この日の神戸が、実に王者然とした戦いぶりを見せていたこと。5年前の決勝では、相手が常勝軍団の鹿島だったこともあり、純然たるチャレンジャーであった。それが昨年のJ1初制覇、さらにはアジアでの戦いを経て、タイトルに見合った風格あるクラブに進化していた。
そしてもうひとつが、神戸の初戴冠のタイミングが、パンデミック直前であったこと。続く2020年(第100回)大会は、中断期間の影響でJクラブ勢は、準々決勝から4クラブ(J1の1位・2位、J2とJ3の1位)のみの出場となった。当然ながら入場制限があり、声出し応援も禁止されていた。
わずか5年の間に、神戸というクラブがこれだけ急成長し、天皇杯という大会もコロナ禍以前の盛況を取り戻した。今回の神戸の優勝が、二重の意味で感慨深い理由は、ご理解いただけたと思う。
最後に、天皇杯決勝の日程に関して、個人的に思うところを指摘しておきたい。
今大会の決勝は11月23日。J1が残り2節、J3が1節、J2がプレーオフを控えていた。当該クラブ以外のサッカーファンには、そちらのほうに気もそぞろだったはずだ。加えて同月の2日には、YBCルヴァンカップ決勝が、同じ国立競技場にて開催されている。結果、天皇杯が埋没してしまった感は否めない。
リーグカップと天皇杯の違いなど、サッカーファン以外にはなかなか伝わらないだろう。実際、天皇杯決勝のニュースバリューも低く、NHKの夜のニュースでは大相撲に次ぐ扱いであった。あれだけ試合会場が盛り上がっていただけに、非常にもったいない話である。
過密日程の解消が喫緊の課題となっている今、元日開催が現実的でないことは認める。ならばせめて、Jリーグのすべての試合が終わった週末(今年であれば12月14日)での開催は、考えられなかっただろうか。シーズン移行後のことも含めて、主催者側にはぜひとも検討をお願いしたい。
<この稿、了。写真はすべて筆者撮影>